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皇和戦記  作者: 悟
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第3話 山中演習in2泊3日前編

 ついに山中演習in2泊3日が始まる。カナタとツムギは一緒に行動することになりました。山は玄哲師匠のもつ土地の中で行います。


 途中離脱しても何も咎めませんが、最後まで過ごせたならその後の特別演習が待っています。今日参加する門下生たちの殆どは特別演習が目的で参加しています。


 最初に玄哲師匠のお言葉から始まります。


 玄哲視点

 これより、2泊3日の山中演習を始める。山はお前たちを弟子とも客とも思わない、油断した者から呑み込まれる。最後まで己の知恵と仲間を信じ、生き抜いてみせよ!


 

 いよいよ山中演習in2泊3日が始まる。始まりの狼煙がモクモクと空へ駆け上がるのを見ながら山へ登っていく2人。演習中どうやって3日間を過ごすかは、その組によって違う。3日間常に警戒しながら隠れて過ごすのか、一工夫入れて過ごすのか。


 カナタとツムギは山の頂上に登る為、足を動かしていた。途中、枝や石を集める。燃えそうな草を拾っては袋に詰める。


 山には井戸がない為、道中で川を見つけないといけない。もちろん川の近くで暮らすのもいいが、それだと敵側(玄哲達)に見つけられやすくなるので全員が避けて進む。


 カナタとツムギは竹を切って竹筒を製作する。カナタは初めて竹筒を作るため、手こずっていたが、ツムギがカバーすることで2人分をすぐに作り出す。


ツムギ:罠工作より楽だからね。


 山はそれほど高くないので、お昼頃にはたどり着く。山頂に来たのには理由がある。1つ目は敵がいないか安全な位置から見下ろせること。山は斜面がほとんどの為、見下ろす事で位置が分かる。


 2つ目は地形把握する。先ほど斜面ばかりだと説明したばかりだが、山の形は複雑なため、凸凹になっている。山頂に登ったのは拠点を何処にするか決めるためでもあった。


カナタ:でも安直だと玄哲師匠達にバレるよね。


ツムギ:バレてもいいけど近づけないようにしたらいいんだよ。


カナタ:どうするの?


ツムギ:私に任せて!


 

 ツムギの指示に従うカナタ。2人は拠点を山頂から少し降りた木々の茂みにすることにした。


 ツムギは日が照ってる内に罠の準備をする。途中で集めた木々や石をここで使うのだ。


 今回の罠の主軸になるのは「ツタ」だ。ツタを網目状にして石をくっつけていく。石はツタをぐるぐる巻きつけていく。それを片方に、もう片方にも石をつけていく。ツタを触ることによって石同士がぶつかり合って音を発生させる。


 だがこれには弱点があり、見た目と場所が限定されるので分かりやすいこと。これもツムギの作戦のうちだ。


 罠には2通りある。隠す罠と見せる罠だ。周囲にあるツタの罠は見せる罠に該当する。見せる罠は敵側からもバレバレだが、相手に進行を変更させる選択を与えることができる。


 隠す罠は敵が見せる罠を見て、安心した時に初めて作動する罠だ。ツタの罠を見た敵側は他にも罠があるだろうと警戒はするものの、どこか安心感があり気持ちが緩んでくる。


 一番引っかかりやすいのが、ツタの罠の近くに隠す罠を設置することだ。その為にツムギはカナタにツタの罠の外側を掘るようお願いする。


ツムギ:玄哲師匠達は夜来るから、光が照らしてなければ堀は見えない。


カナタ:ツタの罠の外側を全部掘ればいいの?


ツムギ:高さは人が半分埋まる程度でお願い。


 カナタは外側を一周するように掘り始める。その間カナタは地面に集中させないように、地面に落ちている石や枝をわざと取りはらう。


 けど全部は取らない。取ってしまうと敵側からは妙に見えてしまう。となれば逆に地面に集中される。所々石や枝、落ち葉を残しつつ敵側が地面を見なくとも歩けるくらいにする。


 

カナタ:とりあえず終わったよ、後は?


ツムギ:食材調達に行こうかな。この山は川に魚がいるんだよ。


カナタ:魚…


 稽古場でもあまり出ない魚、豊富なビタミンが摂れるので山中演習では必須級の食材となっている。他にもイノシシや鹿も生息しているが、難易度が高い。


 罠で仕掛ける事も可能だが、余計な体力を消耗するよりも魚の方がいいだろう。それに玄哲師匠達が来るのは夜。まだ日は照ってるので、今のうちだ。



 ツムギは水を補給する際に、川の上流で先に仕掛けをしていた。川の流れに逆らうように魚は移動するのを利用して、川の流れを一部せき止めておいたのだ。


 浅い方に石を積み上げて一つだけ間を開けて円のように囲んでおく。円と言っても「漏斗」の様に、入り口が広く奥が狭い形になっている。


ツムギ:魚は入りやすい道は進むけど、戻るのは苦手なんだ。

 

 ツムギの仕掛けた罠の魚を回収して、そこで食べる。夜に食べようとすると火の明かりで場所がバレるかもしれないので、昼にお腹いっぱい食べる作戦だ。


 カナタが木の破片と枝を擦り合わせて火を起こす。ツムギは燃えそうな物を持ってきて、石で囲んで簡単な焚き火の場所を作る。


ツムギ:力担当はカナタがぴったりだね、私だとすぐ疲れちゃうし。


カナタ:それを言うと、自然を生かした罠や生存方法を考える頭脳はツムギが合ってる。


 カナタとツムギの相性が良くなった気がした。


 山中演習in2泊3日は山という過酷な環境で生き残るのも大切だが、人間一人では生きていけないように、仲間の力を知り、己の力を知る。いわば仲間を「信頼」する事を学ぶと言っていいだろう。


 

 焼き魚を食べ終えたら、やることがある。そのやることをしないと玄哲師匠達に居場所がバレるからだ。


 夜であっても人の痕跡をたどる。こういった川という誰もが見つけやすい場所からの痕跡なら素人でも足跡を見て探すことができるからだ。


ツムギ:玄哲師匠は小さな変化でもすぐ気づいちゃう目を持ってるから、どう騙すかが鬼門だよ。

 

カナタ:けど足跡を残さないって無理だよ。


ツムギ:残さないんじゃない、目的地を読ませないんだ。


 帰る際、足跡をつけずに帰るなんて誰もできない。履物の形状を変えたとしても、ゆっくり歩いたとしても少しは残る。かといってそれを修整しても違和感があるだけだ。


 要は一本道にしないってこと。途中で方向を変えたり、岩場を通って足跡を探られないようにする。


カナタ:忍みたいだね。


ツムギ:えへへ、私の憧れの人の真似事なんだけどね…


 

 夜…


 玄哲は6人ほど門下生を引き連れて山に入る。先ずは風向きを確認する。山は正直だ、異物があれば風や鳥が知らせてくれる。


 分かりやすいので言えば、拠点を作っていることだろう。風はある程度一定に流れるのに対し、拠点を作ってしまえばその分の壁だけ風が揺らぐ。


 門下生を2人向かわせ、先へと足を進める。今のところ地面の土に細工は無さそうに思えるが、妙に綺麗だ。


 近くで聞こえるのは川の音、それと…焼け焦げた匂い。この焦げ具合からして昼ごろに火をつけたのだろう。


 玄哲にとってこの山は家族、命同然。家族の変化に気付けないと思ったのだろう、仕掛けておいた石が少し傾いていた。


 これは風でどうにかなる傾きではない、この上を歩いた傾きをしている。これをするのはツムギ以外にいない。


 あの子は入門した頃からイタズラをする子だった。あの子の両親は玄哲と同じ主君に仕えていたから知ってる。


 あの子の両親はどちらも忍で諜報や工作員を2人だけで任されるほど腕が立っていた。彼らのおかげで勝てた戦など数しれない。だが、数年前に大戦であの子は両親を失った。


 あの子はまだ両親が生きてると思いながら生きている、哀れで悲しい…。玄哲は自分が現役であの大戦に出向いていたなら助けられたと今でも思っている。


 いつか伝えようと思っているが、伝えた時にあの子の心が折れないかが心配でならない。憧れの存在があるからこそ、今の彼女があるわけだ。


玄哲:のう、アサヒにサチヨ…見ているか。お前たちの子は私の想像を超える強さになりそうだよ。


 戦友の子だからと助けたわけでもない、稽古を特別に教えていたわけでもない。幼い頃から身につけたであろう両親の技を玄哲の型にはめ込んで自分の物にしようとしていたのだ。


 稽古場に来る前のツムギのステータスはどれも子供と呼べるくらいだった。それから数年でここまで成長できたのだから褒めたい…と思う。


門下生A:師匠はツムギには昔から甘いですからね。


門下生B:ちびっ子なのに、人を惹きつけるような才能がある。


玄哲:今回の山中演習が終わったら、私の代わりに褒めてやってくれ。


門下生達:はい。


 一日目は夜を越えて、日が昇ってくる。玄哲は昔の思い出に浸っていて探すのを忘れていた。一日目は10人のうち1組である2人が脱落する。


 朝になるので玄哲達は稽古場に帰っていく。



 ツムギとカナタは1日目を終えると起き上がる。ツタの壁の内側に人が入れるくらいの穴を掘った所に潜んでいた。


 ただの穴では見つかってしまうので、木の棒で穴を塞ぎその上に落ち葉を被せていた。


ツムギ:1日目は乗り越えれたね、最初の関門は突破って感じ。


カナタ:この調子だと行けそうだけど…、そうもいかないんだよね?


 それもそのはず

 2日目は脱落した門下生達も探す側に加わるのだ。そのため、他の隠れている側の居場所を知られている可能性が高い。


カナタ:拠点を変えるの?


ツムギ:ゆくゆくはそうして行くつもり。


カナタ:今はしないってことでいいんだね。


 2日目は1日目よりも体力が多いわけではない。水分や食材も底を尽きている。だからといって補給に行きたいが、おおよその部分は玄哲師匠が制限しているだろう。


 バツマークの看板が置いてあれば、その場所は使えないという証だ。なんでそんなことするのかと言うと、戦場で補給の隊がもしも拠点に来れなかったら、耐えしのぐ必要があるし、その場でお腹を満たす物を自分達で作らなければならない。


 だから最初の川は禁じられていた。ツムギもそれを分かっていて、他にも注目をしていた。


 なぜここまでツムギが用意周到なのかと言うと、山中演習は1年に1回あります。前回もそのまた前回も参加していたツムギは、山中演習の大体のルールを把握しています。


 ですが最終日まで生き残ったことがまだ1回もないのが、そこだけが不安ではあります。


カナタ:2日目は水と食材補充に加えて何をするの?


ツムギ:2日目は本格的に、玄哲師匠達は竹刀を持ってくると思うから、私達もそれなりの武器を作るつもりだよ。


 玄哲の歳は57歳。稽古場の師匠をしていて、元武士である為ステータスは高い。全盛期は「侍大将」にまで上り詰め、多大なる戦果を挙げてきたとされている。


 現役から退いてステータスが少し劣ったとはいえ、現役の武士や足軽に負けないほどの実力者だ。


 玄哲

 武力55 知略57

 統率52 俊敏42

 耐久58 魅力60


 

カナタ:侍大将って1,000人位の軍勢を率いるすごい位なんじゃないの?


ツムギ:そうだよ、玄哲師匠は本当にすごい人なんだ。


 

 カナタとツムギは拠点を離れて竹刀に対抗する為の素材探しに出る。といっても玄哲師匠は竹刀で叩くわけではなく、軽く突くだけ。木札を取られなくても突かれたら脱落とみなされる。


 だから対抗するだけで勝つ必要はない。となれば棒状の武器があればいいだろう。罠があるとはいえ、あるに越したことはない。


カナタ:それなら…、そこら辺の木の破片でもいいんじゃないの?


ツムギ:カナタ、そんな物で玄哲師匠が納得すると思う?


カナタ:………、しない。


ツムギ:こういうのはね、ロマンなんだよ。


カナタ:ロマン?


ツムギ:極限状態の中で、いかに相手に立ち向かえるかが重要なんだ。


カナタ:そういうもんなのかなぁ


ツムギ:そういうもんだよ!


 



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