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皇和戦記  作者: 悟
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第4話 山中演習in2泊3日中編

 2日目の朝、2人は竹刀に対抗するための武器素材集めをしていた。


 武器素材で必要な物は木で、ツムギは俊敏さを活かしながら筋力をあまり使わない機動力が高い武器にするべく、クナイを作る。


 カナタは体格都筋力を活かして自分より背の高い棒を見つけて、振り回そうと考えていた。


 ツムギはクナイを作ろうと木をいい感じの形に掘っていたが中々上手くいかない。水分を多く含んだ木だと作る段階で壊れるし、水分が全く無い木だとカサカサしていて壊れやすい。


 だから先ずはいい感じの水分を保ち、硬さを持つ木を探さないといけない。



 カナタの方は落ちてる木の棒をとりあえず集める。ツムギもそうだが、基本土から生えている木を折ることはしない。


 ツムギと違ってあまりこだわらなくていい反面、自分より背丈が大きい棒は中々見つからない。


 カナタが棒を探していると、奥の方から声が聞こえた。何人かが話しているようでゆっくり近づく。カナタがゆっくり歩くのを見たツムギも後をつけていくと、4組の内2組がそこにいた。



 山中演習はなにも全員が敵同士というわけではない。戦場でも敵同士で協力し合う場面など多々ある。それと同じように彼らは2日目を協力し合おうとしていた。


 カナタは草むらに忍び込み、その様子を見ていると横にツムギが追いついてきた。


ツムギ:情報共有だと思うよ。制限されてない場所の確認とか。けど…


カナタ:けど?


ツムギ:裏切りって手もあるよ。


 味方だと思っていた軍が敵の賄賂や圧で敵軍に寝返ることはある。ここでは友好的な関係を装って囮にするのだろうとツムギは考えていた。


 ツムギとカナタはその様子を後にして、素材をある程度集めて拠点に帰る。


 ツムギは4つ程クナイを作る。投げる用の2つと竹刀を受ける用の2つ、どちらとも先の方は丸くしてある。


 カナタは長い棒をツタで巻きつけて一本の棒にする。一本一本は弱いけど束になれば、そこらの木々よりも硬くなる。



 夜になる

 玄哲達は山に登る。1日目の夜に仕掛けていた罠があり、その確認をする。この罠は粘着性と匂いのある罠で、誰かが踏むと匂いが踏んだ人の所まで続いていく。


 2日目から警戒をしないといけないが、地面にまで警戒はしてなかったのだろう。匂いの跡を辿ると寝ている門下生がいた。玄哲は優しく竹刀で突く。突かれた門下生2人は寝ぼけている状態で脱落する。


 山中演習in2泊3日は2日目の夜が鬼門だ。ここを乗り越えればいいのだが、毎年皆がここで脱落する。あと3組…どこに隠れているかな。


 玄哲は脱落した門下生達を含め11人で行動する。徹底的に見つけ出すため玄哲を入れない10人を別々に移動させる。進む方向もランダム、それでいて移動速度や足音も一人一人変えるよう指示を出す。


 これにより耳で音を聞いている参加者を騙すことができる。耳で聞くのには限界がある、複数の音を同時に、ましてや10人の音を聞き分けるなんてできるわけがない。


 玄哲は門下生達がぞろぞろ移動しているのとは逆に、静かに行動する。いつものように風の動きを感じ取りながら移動する。玄哲は目を閉じて完全に静止する。


玄哲:中腰の奴が一人…、武器を構えている奴がその奥に。


門下生N:えっ…俺たちバレた?


門下生G:静かに!


 玄哲は門下生2人いるのに気づくと竹刀をいる方向に向ける。そのまま歩き一歩づつ近づいていくと、門下生Gが堂々と前に出てくる。


 敵軍役側は背中の木札を叩かれて割られたら死んだ扱いになるため、門下生Gに注意を引かせて門下生Nは気づかれないように遠回りして、後ろを狙う作戦に変更する。


 門下生Gは竹刀に触れない程度の位置に立ち、突かれそうになるとギリギリで避けていく。


玄哲:万策尽きたか?


門下生G:玄哲先生、すいません!


 門下生Gは地面の土を少量玄哲の顔にぶつける。玄哲は反応を少し遅らせるが、これで十分な時間ができた。木札を持つ門下生Gはそのまま逃げて門下生Nが玄哲の背後を取る。


 門下生Nが玄哲の木札を割ろうとした瞬間、竹刀で胸元を突かれる門下生N。


玄哲:私に目を瞑らせるのは…悪手だぞ。


 門下生Nはその場で動けず門下生Gだけ逃げ切ることができたが、玄哲が何もしていないわけではない。逃げる先を予想して動かせていた別の敵軍役の門下生が門下生Gを待っていたのだ。


 これで残り参加者は2組。玄哲はこの夜ですべての参加者を見つけるつもりだ。その頃カナタとツムギは…


ツムギ:奥の方で誰かの木札が割られた音がした。


カナタ:私達も準備しないといけないのか。


ツムギ:そんなに身構えなくても大丈夫!時間稼ぎは私に任せてカナタは明日の朝まで逃げ切ること。

 

 山中演習in2泊3日は終わりは3日目の早朝の4時。現在の時刻は1時、終わりまで残り6時間。他の門下生達も敵軍役側に加わり人数が増える。


 カナタとツムギの他の1組はどういう状況かというと、敵軍役側の門下生6人くらいに追いかけられながら走っている。


 参加者の門下生Aこと明菜(アキナ)と門下生Yこと悠理央(ユウリオ)は今の稽古場において一番古参にあたる人たちである。


 玄哲の稽古場は12歳から15歳くらいの門下生がいるのに対して、アキナとユウリオは18歳である。なので経験や実力は他の門下生を圧倒する。


 たとえ6人に追いかけられていたとしても後ろを振り返ったり、木々にぶら下がったりする余裕すらある。


アキナ:この山は私たちのホームグラウンドだから年下ちゃん達に負けるわけにはいかないよユウリオ。


ユウリオ:そう言ってアキナはわざと負ける癖あるから、今日は甘え無しだよ。


アキナ:堅いこと言うなよユウリオ…。だから女子にモテないんだぞ。


ユウリオ:アキナも漢気ありすぎて男が寄らないじゃん。


アキナ:うるせぇ、いいんだよ私は。ユウリオがいれば他なんて。


 他の門下生はアキナとユウリオを目で追うのがやっとなほどで、近づく事もできない。完全に遊ばれている。


 するとそこに玄哲が飛び入り参加してくる。アキナとユウリオが稽古場でNo.1とNo.2の実力者だからとはいえ、玄哲相手では緊張と恐怖が背中を走る。


 俊敏さはアキナとユウリオの方が早いのだが、統率と武力で、その差を捻じ曲げる。門下生達は玄哲が来たことで、先ほどまでの動きとは違い、マニュアルがあるかの如く動き出す。


 「参加者側を無理に追いかけない」これが肝になる。追いかけようとすると体力の消耗も激しいし、他のことに集中できなくなる。そうなれば6人いるのに2人を永遠に捕まえられない、先程の動きと一緒だ。


 息を合わせて統率の取れた動きに加えて、目線をわざと参加者から外したり、一瞬違う方向に行くフェイントをかける。 


 玄哲を中心としたことで逃げの幅が狭くなったところを、門下生達が更に狭くする。


 

 その頃、カナタとツムギは…


ツムギ:近くで足音がするけど、私達じゃないっぽい。


カナタ:このまま隠れてるだけじゃバレるかな。


ツムギ:玄哲師匠が「アレ」を使っていたなら勝ち目は薄そう…


カナタ:アレってなに?


 アレとは、この世界は身体能力と武器が進化した世界で魔法が一切ない。いわば戦国ファンタジー。


 その中で修行や戦場での経験が積み重なることにより、ステータスとは別に手に入れることができる力が存在する。


 人はそれを「戦術(スキル)」という。先ほども言った通り、誰にでも身につけることができるわけではなく、経験や知識による力である。


 玄哲は長年の戦場を経験して突然身につけた戦術が先ほど見せた「静海(せいかい)」という探索戦術である。


 清海とは、その名の通り静かな海と書いて静海(せいかい)。目を閉じて完全に静止した時、半径5m以内の存在する人間・物体・動きなどを把握する。


 完全静止は本人の玄哲もどの程度静止なのか分からないから「なんとなくやってる」と言っている。

 

 先ほど目眩ましを受けた後、後ろから来た門下生に対抗できたのはこれがあるからである。


 もちろん戦術はステータス依存になる事が多いので、「最強戦術で無双してやるぜ!」・「でもステータスは足軽くらいです」なんてことは無いが、あったとしても無双も出来ず犬死するだろう。


 玄哲は静止を長年の感で一瞬だけ止めて発動でこる所まで成長している。追いかける途中であっても、目を閉じた瞬間に動きを0.000何秒止めるだけで把握する事ができる。


 玄哲は追いかける途中、不審に思ったのかアキナとユウリオを追いかける門下生達の数を減らして3人ほど東の方へ向かわせる。


 偵察していたツムギはいち早くこれに気づき、カナタの元へ向かう。


アキナ:いくら先生であっても私たち2人を追うなんて酷な話だよ。


ユウリオ:先生には悪いけど今回の山中演習は突破します。


 玄哲はニヤリッ…とする。確かにこのまま追いかけても埒が明かない、ましてや戦力を減らした玄哲側は不利である。


アキナ:もしかしてツムギのとこに向かわせました?


玄哲:………。


アキナ:無視ですか、それとも…


ユウリオ:アキナ、前!



 先ほど東に向かわせていた3人をアキナとユウリオの進行方向に待ち伏せさせていた。アキナとユウリオが真っ直ぐ逃げないのをいいことに、うしろから目的の場所まで誘導していたのだ。


ユウリオ:まんまと玄哲先生の策にハマったわけか。


アキナ:解説はいいから!


 アキナがすぐさま門下生達に囲まれると持っていた木札をユウリオに託す。ユウリオはすぐさま方向を変えて、逃げ回る。


 残り時間…あと、1時間。


 

 ツムギとカナタは静かに罠のある拠点に向かい万全な体勢で構える。木々や地面から鳴る足の音は近くまで来ていることが分かった。複数…いや、1人?


 アキナが捕まった後、ユウリオはひたすら逃げていた。ユウリオは自分でも思っているが、アキナがいつも指示を出してくれるから自分だけでは不安でしょうがなかった。


 なのでルートを一切考えず足元を見ず、進み続けていたら運悪くツムギ達の方向に行っていた。


 元々玄哲にかける罠だったのに、ユウリオが見せる罠であるツタの罠にぶつかり、石が揺れて音が出て、地面にある落とし穴に落ちる。


 落とし穴に落ちた時、木札が割れてユウリオは脱落してしまう。そして、その運の悪さはツムギたちにも繋がってしまうのだ。


玄哲:左の方で木の割れる音…、割れる音が鈍いことを考えるに落とし穴。ツムギ達はそこか…


 木札が割れた音で玄哲たちが近づいてくるのだった。



ツムギ:今ので玄哲師匠にバレた可能性が高いから、ここは頂上に向かうよ。


 脱落したユウリオには悪いけど、ツムギとカナタの位置が玄哲にバレないように見せる罠のツタ石で音をジャラジャラ出してもらうことにした。


 暗闇の中、玄哲が音を頼りにしていることは知っている。静海を使うことも知っている。その一瞬の時間を別の方向に意識させれば玄哲でも見分けがつかないだろう。


玄哲:足を止めろ、アキナ。


アキナ:ん、このままユウリオを追うんじゃないの?


玄哲:正面の音とは別に駆け上がる音が聞こえる。


 僅かに風が揺らぐのを感じる。その風は上に向かっている。玄哲は他の門下生達をユウリオに向かわせて、玄哲とアキナでカナタ達のいる方に進む。

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