第6話 所持金15万円生活、そろそろ本気でやばい気がする
「……やばいかもしれない」
スマホの画面を見ながら、私はつぶやいた。
残高。
見慣れてきたはずの数字が、今日はやけに現実味を帯びている。
「……いや、まだ大丈夫」
そう言って、画面を閉じる。
見なければ、減っていないのと同じだ。
たぶん。
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テーブルの上には、レシートが数枚。
その横には、空になったペットボトル。
そして、もやし。
「……食費、か」
私は冷蔵庫を開ける。
中は、だいぶシンプルになっていた。
もやし。
卵。
あと、よくわからない調味料。
「……いける」
何がとは言わない。
でも、たぶんいける。
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数分後。
私は外に出ていた。
「……ちょっとだけなら」
節約には、メリハリも大事だ。
全部を我慢すると、反動が来る。
たぶん。
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コンビニ。
自動ドアが開く。
明るい店内。
整然と並んだ商品。
「……強いな」
何がとは言わない。
でも、誘惑が強い。
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私は棚の前に立つ。
おにぎり。
サンドイッチ。
お弁当。
どれも、それなりの値段がする。
「……いや、今日は」
私は視線をずらした。
ドリンクコーナー。
安めのペットボトル。
「……これでいいか」
これ“で”いいのかはわからない。
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レジに向かう。
店員が顔を上げる。
「いらっしゃいませ」
私は商品を差し出した。
ピッ、と音がする。
「温めますか?」
「……あ」
少し考える。
温めるほどのものではない。
でも、聞かれると迷う。
「……大丈夫です」
「かしこまりました」
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「袋はご利用になりますか?」
「……いらないです」
答える。
商品を受け取る。
手がふさがる。
歩きにくい。
「……」
私は少しだけ考えて、
「……やっぱり、ください」
と言った。
店員は、無言で袋を差し出した。
有料だった。
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外に出る。
少しだけ冷たい空気。
私は袋の中を見た。
ペットボトルが一本。
「……これでよかったのか」
わからない。
でも、もう買った。
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家に戻る。
ドアを開ける。
静かな部屋。
ダンボール。
レシート。
もやし。
全部そのままだった。
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私はテーブルに座って、スマホを取り出した。
もう一度、残高を見る。
「……」
さっきより減っている。
当然だ。
さっき使ったから。
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「……まあ」
私は小さく息を吐いた。
「まだ、なんとかなる」
根拠はない。
でも今までも、そうだった。
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キッチンに向かう。
フライパンを出す。
もやしを入れる。
ジュウウウ、と音がする。
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「……節約って、こういうことだよな」
何が正解かはわからない。
でも、間違ってはいない気がする。
たぶん。
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食べながら、私は思った。
「……明日は、もう少しちゃんと考えよう」
今日は、とりあえず乗り切った。
それで十分だ。
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スマホの画面が、静かに光る。
残高は、相変わらずそこにある。
「……いける」
私はそうつぶやいた。
根拠はない。
でも、たぶんなんとかなる。




