第7話 売れたので、少しだけいいものを買うことにした
「……売れた」
スマホの通知を見て、私はつぶやいた。
一度、目を閉じる。
もう一度開く。
画面は変わっていない。
「……ほんとに?」
消えていなかった。
テーブルの上には、いつものレシート。
その横に、もやしの袋。
変わらない風景の中で、スマホだけが少しだけ特別に見えた。
「……まあ」
私は小さく息を吐いた。
「いい日、かもしれない」
金額は、大したことない。
でも、今の私にとっては十分だった。
「……どうしよう」
使うか、取っておくか。
少しだけ考える。
「……いや」
私は立ち上がった。
「たまには、いいか」
理由は特にない。
でも、こういう日は、そういうことにしていい気がした。
外に出る。
空気はいつもと同じ。
でも、少しだけ軽く感じる。
気のせいかもしれない。
コンビニに入る。
明るい店内。
並んだ商品。
「……今日は」
私はゆっくりと棚を見て回る。
おにぎり。
お弁当。
スイーツ。
どれも、いつもより魅力的に見える。
甘いもののコーナーで、足が止まる。
プリン。
少しだけ、いいやつ。
「……」
値段を見る。
ちょっと高い。
でも、手が伸びる。
「……これくらい、いいよな」
誰にともなくつぶやいて、カゴに入れた。
レジ。
「いらっしゃいませ」
私は商品を差し出す。
ピッ、と音がする。
「温めますか?」
「……大丈夫です」
今回は迷わなかった。
「袋はご利用になりますか?」
「……お願いします」
さっきとは違う。
今日は、いい日だから。
外に出る。
袋の中には、小さなご褒美。
「……なんか」
私は少しだけ笑った。
「ちゃんとしてる感じがする」
何がとは言わない。
家に帰る。
ドアを開ける。
いつもの部屋。
ダンボール。
レシート。
もやし。
全部そのまま。
私はテーブルに座って、袋を開けた。
プリンを取り出す。
スプーンもちゃんとついている。
「……いいな」
それだけで、少し満足する。
一口食べる。
甘い。
ちゃんと甘い。
「……おいしい」
思わず声が出た。
ゆっくりと食べる。
急がなくていい。
今日は、そういう日だ。
食べ終わって、少しだけぼんやりする。
スマホを手に取る。
残高を見る。
「……まあ」
減ってはいる。
でも、さっきより少しだけ増えている。
「……いけるな」
私は小さくつぶやいた。
根拠はない。
でも、今日はそう思える。
私は立ち上がって、キッチンに向かった。
フライパンを出す。
もやしを入れる。
ジュウウウ、と音がする。
「……明日から、またちゃんとやろう」
今日は、いい。
そういう日にしていい。
私はもやしを炒めながら、少しだけうなずいた。
根拠はない。
でも、たぶんなんとかなる。




