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所持金15万円で一人暮らししてるけど、たぶんなんとかなる ―もやしとフリマで続いていく、ゆるい生活―  作者: 春凪とおる


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第5話 フリマで売れたので、知らない人に会いに行くことになった

「……売れた?」


スマホの画面を見て、私は小さくつぶやいた。


出品していた雑貨の一つに、購入希望の通知。

しかも、メッセージ付き。


『実物を見てから決めてもよろしいでしょうか』

「……どういうことだろう」


フリマアプリは、だいたいそのまま買うものだと思っていた。


でも、断る理由も特にない。

むしろ、売れるならありがたい。


「……まあ、いいか」


私はそう判断して、返信した。


『大丈夫です』

送信。


その数分後、場所と時間が決まった。

思ったより早かった。

________________________________________

当日。


私は家を出た。

外に出るのは、買い出し以来かもしれない。


「……こんな感じだったっけ」


空気が、少しだけ違う気がする。

気のせいかもしれない。

________________________________________

待ち合わせ場所は、駅前のベンチ。

少し早めに着いて、私は腰を下ろした。


隣には、持ってきた紙袋。

中には、例の雑貨。


「……これ、本当に必要なものだったのかな」


今さら少しだけ考える。

でももう遅い。

________________________________________


「すみません」


声をかけられて、顔を上げた。

そこにいたのは、想像よりも普通の人だった。


「……あ、はい」


私は立ち上がる。

お互い、少しだけ距離を測る。

________________________________________


「こちら、出品されていたものですよね」

「はい」


私は紙袋から品物を取り出した。


相手はそれを受け取って、じっと見つめる。

思っていたより、じっくりだ。

________________________________________


「……思っていたより、普通ですね」

「どういう意味ですか」


思わず聞き返してしまった。


相手は少しだけ考えてから、


「写真だと、もう少しこう……特別感があるというか」

「なるほど」


よくわからないが、そういうことらしい。

________________________________________

しばらく沈黙。


相手は品物をひっくり返したり、角度を変えたりしている。

私はそれを見守る。


「……」

「……」


駅前のざわざわした音だけが、間を埋めていた。

________________________________________


「……買います」

「ありがとうございます」


あっさり決まった。

少し拍子抜けする。

________________________________________

お金を受け取って、品物を渡す。


それだけのやり取り。

でもなぜか、少しだけ達成感があった。



「こういうの、よくやるんですか?」


帰り際、相手が聞いてきた。


「いえ、最近ちょっとだけ」


私は答える。

相手は小さくうなずいた。


「いいと思います」

「……何がですか?」

「なんとなくです」


そう言って、相手は去っていった。

________________________________________

私はその場に少しだけ立ち尽くした。


「……なんだったんだろう」


よくわからない。

でも、嫌な感じではなかった。

________________________________________

帰り道。


私は紙袋のなくなった手を見て、少しだけ軽くなった気がした。


スマホを取り出して、残高を確認する。

少しだけ、増えている。


「……まあ」


私は小さく息を吐いた。


「いけるかもしれない」


根拠はない。


でも、今日は少しだけ外に出た。

それだけで、なんとなくそんな気がした。

________________________________________

家に戻る。


ドアを開ける。

見慣れた部屋。


ダンボール。

レシート。

もやし。


全部そのままだった。

________________________________________

私はキッチンに向かった。


フライパンを出す。

もやしを入れる。


ジュウウウ、と音がする。

________________________________________


「……まあ、いっか」


何がとは言わない。

でも、たぶんなんとかなる。


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