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所持金15万円で一人暮らししてるけど、たぶんなんとかなる ―もやしとフリマで続いていく、ゆるい生活―  作者: 春凪とおる


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第4話 売れると思って増やしたら、なぜか売れなくなった

「売れた……!」


スマホの通知を見て、私は小さくガッツポーズをした。


テーブルの上には、開きかけのダンボールと、丸まったガムテープ。

その横で、充電ケーブルに繋がれたスマホが、やけに誇らしげに光っている。


「やっぱり、いける」


根拠はない。

でも一度うまくいくと、人はそう思うものだ。

________________________________________

きっかけは、何気なく出した服だった。


もう着ていない、でも捨てるには惜しいやつ。

それが、売れた。


「需要、あるんだ……」


世界は広い。

そう思った。

________________________________________


「じゃあ、もうちょっと出してみるか」


私は立ち上がり、クローゼットを開けた。


出てくる。


服。

雑貨。

なんとなく買って、なんとなく使わなくなったものたち。


「……宝の山では?」


そう思った時点で、だいたい違う。

________________________________________

三日後。


部屋の隅に、ダンボールが増えていた。


一箱。

二箱。

三箱。


中身はすべて、「出品予定」のもの。


「……こんなはずじゃなかった」


最初の一個は、すぐに売れた。

だから、いけると思った。


「これは流れ来てるなって」


来ていなかった。

________________________________________

スマホを見る。


出品一覧。

静かだった。


「……まあ、こういう時もある」


私は自分に言い聞かせた。

需要と供給には波がある。


たぶん。

________________________________________

通知音が鳴る。


「!」


私は勢いよくスマホを手に取った。


コメント。


『こちらまだありますか?』

「ある!」


私はすぐに返信した。


『あります!』


送信。


既読。

そして、沈黙。

________________________________________


「……まあ、忙しいのかもしれないし」


私はスマホをそっと置いた。


テーブルの上で、レシートが一枚、ひらりと落ちる。

なぜかそれだけが、やけに目についた。

________________________________________

その日の夜。


私はダンボールを一つ開けた。

中には、出品予定だった雑貨。


「……これ、いる?」


手に取って、少し考える。


買ったときは、必要だと思った。

でも今見ると、別にいらない気がする。


「……まあ、誰かには必要かもしれないし」


そういうことにした。

________________________________________

翌日。


もう一度アプリを開く。

相変わらず、静かだった。


「……長期戦でいこう」


私はうなずいた。


焦りはよくない。

これはビジネスだ。


たぶん。

________________________________________

ふと視線を上げると、部屋の隅。


ダンボールが並んでいる。

その横に、もやしの袋が一つ転がっていた。


「……増えてるな」


何がとは言わない。

________________________________________

私はスマホを置いた。

深く考えるのはやめる。


「まあ、とりあえず」


キッチンに向かう。


フライパンを出す。

もやしを入れる。


ジュウウウ、と音がする。

________________________________________


「……いける」


何が、とは言わない。


でもたぶん、なんとかなる。

根拠はない。


でも今までだいたい、そうだった。


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