第4話 売れると思って増やしたら、なぜか売れなくなった
「売れた……!」
スマホの通知を見て、私は小さくガッツポーズをした。
テーブルの上には、開きかけのダンボールと、丸まったガムテープ。
その横で、充電ケーブルに繋がれたスマホが、やけに誇らしげに光っている。
「やっぱり、いける」
根拠はない。
でも一度うまくいくと、人はそう思うものだ。
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きっかけは、何気なく出した服だった。
もう着ていない、でも捨てるには惜しいやつ。
それが、売れた。
「需要、あるんだ……」
世界は広い。
そう思った。
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「じゃあ、もうちょっと出してみるか」
私は立ち上がり、クローゼットを開けた。
出てくる。
服。
雑貨。
なんとなく買って、なんとなく使わなくなったものたち。
「……宝の山では?」
そう思った時点で、だいたい違う。
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三日後。
部屋の隅に、ダンボールが増えていた。
一箱。
二箱。
三箱。
中身はすべて、「出品予定」のもの。
「……こんなはずじゃなかった」
最初の一個は、すぐに売れた。
だから、いけると思った。
「これは流れ来てるなって」
来ていなかった。
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スマホを見る。
出品一覧。
静かだった。
「……まあ、こういう時もある」
私は自分に言い聞かせた。
需要と供給には波がある。
たぶん。
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通知音が鳴る。
「!」
私は勢いよくスマホを手に取った。
コメント。
『こちらまだありますか?』
「ある!」
私はすぐに返信した。
『あります!』
送信。
既読。
そして、沈黙。
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「……まあ、忙しいのかもしれないし」
私はスマホをそっと置いた。
テーブルの上で、レシートが一枚、ひらりと落ちる。
なぜかそれだけが、やけに目についた。
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その日の夜。
私はダンボールを一つ開けた。
中には、出品予定だった雑貨。
「……これ、いる?」
手に取って、少し考える。
買ったときは、必要だと思った。
でも今見ると、別にいらない気がする。
「……まあ、誰かには必要かもしれないし」
そういうことにした。
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翌日。
もう一度アプリを開く。
相変わらず、静かだった。
「……長期戦でいこう」
私はうなずいた。
焦りはよくない。
これはビジネスだ。
たぶん。
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ふと視線を上げると、部屋の隅。
ダンボールが並んでいる。
その横に、もやしの袋が一つ転がっていた。
「……増えてるな」
何がとは言わない。
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私はスマホを置いた。
深く考えるのはやめる。
「まあ、とりあえず」
キッチンに向かう。
フライパンを出す。
もやしを入れる。
ジュウウウ、と音がする。
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「……いける」
何が、とは言わない。
でもたぶん、なんとかなる。
根拠はない。
でも今までだいたい、そうだった。




