第3話 低気圧のせいにしているけど、たぶんもやしのせい
「……なんか、調子が悪い」
朝、目が覚めた瞬間にそう思った。
体が重い。
というか、起き上がる気力が、いつもより少ない。
私はしばらく天井を見つめた。
うっすらとしたシミが、今日はなんだかやけにくっきり見える。
「……あれか」
ゆっくりとスマホに手を伸ばす。
天気予報。
画面には、曇りマーク。
「低気圧」
私は納得した。
たしか、そういうのがある。
天気が悪いと体調も悪くなるやつ。
名前はよく知らないけど、たぶんそれだ。
「……じゃあ仕方ないか」
原因がわかると、人は安心する。
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なんとか起き上がって、キッチンに向かう。
冷蔵庫を開ける。
中には、もやしがあった。
一袋。
二袋。
三袋。
「……安かったし」
言い訳ではない。事実だ。
私はもやしを一袋取り出して、フライパンに入れる。
ジュウウウ、と音がする。
ぼんやりとそれを眺めながら、ふと思った。
……そういえば、ここ数日。
ほぼ、もやししか食べていない気がする。
「いや」
私は首を振った。
「関係ないな」
即座に否定する。
根拠はない。
でも、たぶん違う。
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食べ終わって、少しだけ横になる。
少しだけのつもりだった。
気がついたら、二時間経っていた。
「……寝すぎた」
体は、さっきより少しだけ軽い。
「ほら、やっぱり天気のやつだ」
ちゃんと休めば回復する。
つまりこれは、そういうことだ。
たぶん。
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昼過ぎ。
私はもう一度スマホを手に取った。
「……病院、行くべきかな」
検索画面を開く。
“体がだるい 原因”
いくつかの候補が出てくる。
睡眠不足。
ストレス。
栄養不足。
「……」
私はそっとスマホを閉じた。
「まあ、大丈夫でしょ」
全部に心当たりがある気がしたが、気のせいということにした。
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夕方。
外はまだ曇っている。
私は窓の外を見ながら、小さく息を吐いた。
「……今日は無理しない日」
そう決めることにした。
無理をしないのは大事だ。
昨日もたしか、無理をしていない。
一昨日も、していない気がする。
「……継続って大事だな」
何の継続かはよくわからない。
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夜。
もう一度、もやしを炒める。
味付けを少し変えてみた。
気持ちの問題だ。
食べながら、私は思った。
「……なんか、ちょっと元気かも」
朝よりは、明らかにマシだ。
これは回復している。
間違いない。
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寝る前。
私はもう一度、天気予報を確認した。
明日は、晴れ。
「ほら」
私は小さくうなずいた。
「やっぱり天気だった」
安心して、布団に入る。
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翌朝。
目が覚める。
カーテンの隙間から、光が差し込んでいる。
「……晴れてる」
私はゆっくりと起き上がった。
体は——
「……あれ?」
少し、だるい。昨日よりはいい。
でも、万全ではない。
私はしばらく考えた。
そして、結論を出す。
「……まあ、まだちょっと、低気圧の余韻か」
外は晴れている。
でも、そういうこともある。
たぶん。
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キッチンに向かう。
冷蔵庫を開ける。
もやしが、まだ二袋あった。
「……今日もいける」
私はフライパンを手に取った。
根拠はない。
でも、たぶんなんとかなる。




