第29話 広げすぎると、少し落ち着かなくなる
「……」
部屋を見る。
「……」
少しだけ、物が増えている。
ダンボール。
レシート。
小さな瓶。
コーヒーの機械。
「……」
私は少しだけ止まった。
「……増えたな」
悪くはない。
「……」
でも、
「……」
なんとなく、落ち着かない。
「……」
机の上を見る。
スペースが少し減っている。
「……」
物を少し動かす。
「……」
元に戻す。
「……」
「……まあ」
理由はない。
でも、
「……ちょっと、違うな」
私は立ち上がる。
ダンボールに近づく。
「……」
ひとつ、開ける。
中を見る。
「……」
閉じる。
「……」
意味はない。
私は小さく息を吐いた。
「……」
キッチンに向かう。
もやしを見る。
「……」
変わらない。
「……」
少しだけ安心する。
「……」
フライパンを出す。
火をつける。
ジュウウウ、と音がする。
「……」
もやしを入れる。
「……」
卵を取る。
少しだけ迷う。
「……」
棚を見る。
小さな瓶。
「……」
しばらく見る。
「……」
「……いいか」
戻る。
卵を割る。
「……」
混ぜない。
そのまま。
「……」
いつもの形。
「……」
少しだけ、落ち着く。
火を止める。
皿に移す。
座る。
「……」
一口。
「……」
「……これだな」
私は小さくうなずいた。
「……」
もう一口。
「……」
さっきまでの感じが、少しだけ消える。
「……」
私は周りを見た。
物は増えている。
でも、
「……」
少しだけ、どうでもよくなる。
「……」
箸を置く。
「……広げすぎたか」
小さくつぶやく。
「……」
「……まあ」
少しだけ間を置く。
「……戻せるしな」
私はうなずいた。
「……」
スマホを見る。
残高。
「……」
変わっていない。
「……」
ポケットに戻す。
「……」
キッチンに立つ。
もやしを見る。
「……おまえは」
少しだけ笑う。
「……変わらないな」
もやしは、何も言わない。
「……」
「……ちょうどいいか」
まだ口の端が上がっている気がした。




