第28話 戻れる場所があると、少しだけ試せる
「……」
キッチンに立っている。
「……」
もやしを見る。
「……」
いつも通り。
「……」
少しだけ考える。
「……」
視線をずらす。棚を見る。
この前、買わなかった場所だ。
「……」
少しだけ止まる。
「……まあ」
手を伸ばす。
小さな瓶。
「……」
ラベルを見る。
「……」
よくわからない。
「……まあ、いいか」
戻す。
もやしを見る。
「……」
少しだけ、間を置く。
「……ちょっとくらい、いいか」
冷蔵庫を開ける。
卵を取る。
「……」
いつもと同じ。
「……」
少しだけ考える。
「……」
フライパンを出す。
火をつける。
ジュウウウ、と音がする。
「……」
もやしを入れる。
「……」
卵を割る。
「……」
少しだけ、混ぜる。
「……」
止まる。
「……」
そのままにする。
「……」
もう一度、混ぜる。
「……」
「……まあ」
火を止める。
皿に移す。
座る。
「……」
一口。
「……」
少しだけ考える。
「……」
「……あんまり変わらないな」
私は小さくうなずいた。
「……」
もう一口。
「……」
「……でも」
少しだけ間を置く。
「……まあ、いいか」
悪くはない。
でも、特別でもない。
「……」
私は箸を置いた。
「……」
少しだけ、部屋を見る。
ダンボール。
レシート。
もやし。
「……」
変わっていない。
「……」
私はうなずいた。
「……」
スマホを見る。
残高。
「……」
特に問題はない。
「……」
ポケットに戻す。
「……」
キッチンに立つ。
もやしを見る。
「……おまえは」
少しだけ、笑う。
「……戻れるな」
もやしは、何も言わない。
私はうなずいた。
「……」
フライパンを洗う。
水の音。
「……」
「……またでいいか」
何を、とは言わない。
でも、
「……いけるな」
――お前となら。




