第14話 節約と満足のバランスがわからなくなってきた
「……」
私はスーパーの中を歩いていた。
「......今日は、決めるつもりで来た」
カゴは持っている。
まだ、何も入っていない。
「……どうするか」
小さくつぶやく。
誰に聞くわけでもない。
野菜コーナー。
もやしが並んでいる。
いつも通りの値段。
いつも通りの見た目。
「……おまえは、変わらないな」
私はそう言って、ひとつ手に取った。
「......裏切らない」
軽い。
安心する重さだ。
カゴに入れる。
それは、もう決まっている。
「……で」
私は少しだけ考える。
ここから先が問題だ。
少し先に、別の棚。
カット野菜。
少しだけ高い。
でも、すぐ使える。
「……」
手に取る。
戻す。
もう一度見る。
「……どうなんだろうな」
安い方がいいのか。
楽な方がいいのか。
「……」
答えは出ない。
私はそのまま歩く。
肉コーナー。
魚。
惣菜。
どれも、きちんと並んでいる。
それなりの値段で。
「……ちゃんとしてるな」
何がとは言わない。
でも、全部がすまし顔だ。
「……」
私は少しだけ疲れた気がした。
「……節約って」
言いかけて、やめる。
「……満足って」
続きも、やめる。
言葉にすると、よくわからなくなる気がした。
私はカゴの中を見る。
もやしだけ。
「……軽いな」
物理的にも。
たぶん、それ以外も。
少し歩いて、卵売り場に来る。
この前の、少しだけいいやつもある。
「……」
手に取る。
少しだけ、考える。
「……今日は」
戻す。
「……いいか」
理由はない。
でも、そういう気分だった。
また歩く。
何かを探している気もするし、
別に探していない気もする。
「……」
ふと立ち止まる。
「……なんで来たんだっけ」
小さくつぶやく。
買い物だ。当たり前だ。
今日は決めるつもりで来た。
でも、何を買うかは決まっていない。
「……」
私は少しだけ笑った。
「……まあ」
レジに向かう。
カゴの中は、もやしだけ。
「……結局、おまえか」
小さく言う。
もやしは、何も言わない。
会計を済ませる。
いつも通りの金額。
いつも通りの軽さ。
外に出る。
少しだけ風がある。
「……」
私は袋の中を見た。
「……これでいいのか」
誰に聞くわけでもない。
少し考えて、
やめる。
「……まあ、いいか」
家に帰る。
ドアを開ける。
いつもの部屋。
ダンボール。
レシート。
もやし。
「……変わらないな」
それが、少しだけ安心だった。
キッチンに向かう。
フライパンを出す。
もやしを入れる。
ジュウウウ、と音がする。
「……な」
私は小さくつぶやく。
「どうするのが、正解なんだろうな」
もやしは、何も言わなかった。
私は少しだけうなずいた。
「……やっぱり、おまえだな」
私はもやしをもう一度見つめた。
「……安定は、裏切らない」
「……たぶん、何も解決してないな」




