第10話【怪人口裂け女】2
と、いうことで小学生への聞き取りは私と橘くんで行く事になった。傷心の所長は、本日別の依頼と重なり欠席である。私は所長から言われた手筈通りに校門の前で学校に連絡をいれる。
「もしもし、小早川セキュリティサービスです。今、校門の前にいるのですが、先日お話した被害児童への聞き取りにまいりました」
今回の私たちは警備保障会社ということになっている。探偵事務所と名乗るよりは不信感は少ないような気がする。
「はい。お話は伺っております。今担当の者に迎えに行かせますね」
「お手数おかけいたします」
それから数分後、私たちの元にパンツスーツで眼鏡をかけた若い女性が早足で近づいて来る。
「す、すいません。お待たせしました。私は四年二組の副担任をしています金川です」
「いえいえ、ほとんど待っていませんよ。私は小早川セキュリティサービスの木花です」
「同じく橘です」
「本日は私どもが担当させていただいている商業施設のお客様から“口裂け女”を見たという児童がいるので調査をして欲しいと依頼されて訪問させていただきました」
「そうですか。やはりこういった噂は商業施設の売上に影響するのですね」
「現状は売り上げが落ちているわけではないので、あくまで懸念されるというレベルですね。ご商売をされている方は心配性な方が多いですから」
そう私が今回の訪問の意図(嘘ではあるが)を話すと「なるほど」と被害児童が待っている空き教室へ案内してくれた。道中で橘くんが、
「前の中学校の時もそうだったけどペラペラと良く嘘が出てくるよな。お前、祓い師より詐欺師の方が向いているんじゃないか?」
と失礼な事を言っていきたので無視をした。
「着きました。この教室に柴崎 豊くんという児童を待たせてあります。防犯上私も同席しますがよろしいですか?」
私が「はい。大丈夫です」と返事をすると金川先生は教室の引き戸を開ける。
教室の中には腕と足を組んだ少年が不満そうな顔で座っていた。
「柴崎くん、こちら小早川セキュリティサービスの木花さんと橘さん。あなたに声を掛けた不審者について聞きたいということでお連れしたの」
「こんにちは柴崎くん。私は木花咲耶。隣の彼は橘……」
「せんしゅうだ」
私の会話に間髪入れずに橘くんが割り込む。やはりここでも本名は名乗らないのだなと少し可笑しくて吹き出しそうになる。
私たちが挨拶をすると柴崎くんは私の頭の先から足の先までを目で追って話し出す。
「今日、警備保障の人が僕に話を聞きに来ることは数日前に先生から聞いて知っていました。『警備保障の人』と聞いて僕は『どうせ、くたびれたおじさんが来るのだろう』と何の期待もせずこの教室で待っていたぼくに同じクラスの男子が扉を開き『若い女の人が来たぞ。それも結構可愛い』と言ったのです。それを聞いた僕の胸は高鳴りました。僕好みのセクシーなお姉さんだったらどうしようと……。でも来たのはあなたです。木花さん。僕はボンキュッボンのセクシーなお姉さんを所望していたのですよ。それが何です。少女のような可憐さはあるけれどセクシーのセの字もない女性が来た。本当にガッカリです。僕の期待を返してください」
「こら!! 柴崎くん!! 失礼でしょ!! すいません木花さん。どうにもクセの強い子で……」
金川先生はぺこぺこと何度も頭を下げる。この子を“クセが強い”の一言で片づけるは無理があるのではないだろうか。小学四年生の今のうちにどこかの更生施設に入れなければ“口裂け女”以上に危険な大人になる気がする。
「失礼な物言いになったことは謝罪します。すいません。ですが先生。僕の衝動はどうすれば良いのですか? この際、若く無くても熟女でもかまいません。百歩譲ってセクシーなおばさんでなければ僕の衝動は収まりません」
柴崎くんは立ち上がり金川先生に抗議する。
「ぐだぐだとうるせぇなマセガキ。こっちは、お前の衝動なんて知ったこっちゃねぇんだよ。自分から喋らねぇならふん縛って無理やり吐かせるぞ」
おやおや、橘くんはすごくご機嫌斜めなようだ。
「ごめんね。柴崎くん。橘くん機嫌が悪いみたいで……でも私もキミの《《クソ》》みたいな女性の趣味の話なんてどうでもいいし、聞きたくもないから早く話を進めてくれると助かるかな」
私がそう冷たく言い放つと、柴崎くんは目を見開き私を見て徐々に顔が赤くなりモジモジしだした。
「はい。木花お姉様。お姉様のご期待に応えられるように頑張ります」
柴崎くんはモジモジしながら言う。なんだかよくわからないが話してくれるならそれで良い。




