幕間【小早川 樹の考察】3 長谷川 舞について2
そうして私は目標通りに大学を卒業して資格を取得して探偵事務所を開設し、不本意ではあるが恩人である宗常の死によって清祓協会の認定事業所となる。
協会のデータベースを閲覧することを許可された私はすぐに兄の遺体消失事件について閲覧した。結果は宗常が言っていた通り、『不明』と書かれていた。しかし、過去に何人もの能力者や能力者の家族の遺体が消失した事件について知った。原因は全て『不明』。
協会員の中には消失事件を『神に愛された故の神隠し』と肯定的に捉える者も居るようだが、生きている人間ならともかく遺体が神隠しに遭うという伝承は聞いた事はない。
事務所が軌道に乗った頃、私が実家に帰った際に偶然舞が実家に居たので、私は探偵事務所の業務内容を説明して「お困りの事があれば、何でもご相談下さい」と少し格好つけて名刺を渡して言うと「不思議な仕事だね。困った事があれば相談するね」と貼り付けた笑顔で舞は言った。少し大人になった自分を舞に見せられて嬉しかった反面、舞が未だ過去に囚われている現実に少し悲しくなった。
そして『呪いのビデオ』の一件で私を頼って彼女から連絡が来た際には全ての仕事を後回しにして駆けつけた。千宗の活躍もあり無事解決できた際は頼られた事が嬉しく高揚感を隠すのに必死だった。
解決後、舞の頼みで木花咲耶を雇用する。木花を雇用したのは彼女の為でもあるが打算もある。舞が可愛がっているアルバイト仲間である木花やその友人の石永瞳を通じて舞の動向を見守る事ができるかも知れないとも思ったからだ。
その思惑はすぐに思惑以上の功を奏す。木花が石永から『旦那の転勤で引越しをする』さらに、『体調を崩しているようだから連絡しても繋がらず心配だ』と聞いたと言った。舞の事情を知らない木花や石永には舞の話の違和感には気づけなかっただろう。とても悪い予感がした。どうしようか焦っている私に木花が「所長、落ち着いて下さい。取り敢えず長谷川さんの自宅に行きましょう」と冷静に私に声を掛けてくれた。いつも冷静ぶっている自分がこんなに取り乱すのが情けなかった。
私は車で実家に向かい保管してある舞の家のスペアキーを入手し、舞の家に木花と向かう。呼び鈴を鳴らしても反応がないので無断で家に入る。室内は真っ暗で声を掛けても舞の返事は無い。各部屋を開けて寝室で舞を発見する。脈と呼吸はある。私は木花に呼び掛けと肩を叩く事を指示して救急車を呼ぶ。
私が携帯電話で消防署に電話している間、暗闇の中で木花の胸元が桜色に光っているのが見えた。その光は木花の腕を通って舞の腕から胸元に広がっていく。暫くすると舞の意識が戻ると光は徐々に木花の胸元に戻り消えていく。
おそらく木花が無意識に何らかの加護で舞を助けたのだろう。その後の舞の話にも『桜』と『炎』が出てきていたので間違い無いだろう。
しかし、分からないのは夢に出てきたという『蛾』だ。特徴から《《メンガタスズメ》》(学名:Acherontia styx)通称ドクロ蛾だろう、冥府を取り巻いて流れる川が学名の由来になっている蛾で海外では不吉を象徴するそうだが、札幌には居ないはずだ。そして、《《外国人の髭の老夫》》、話の流れとしてギリシャ神話のカローンだろう。なぜギリシャ神話に由来する怪異が舞に取り憑いていたのだろうか。こう考えるのは早計かも知れないが何者かの意図を感じる。
病院で舞は今までのことを私と私の母、そして木花に吐露する。彼女は兄の死後、初めて剥き出しの感情を人前にさらけ出したせいだろうか、少しだけ以前の彼女に戻った気がして嬉しかった。でも、木花に対するあの反応はどうなのだろうか・・・木花も嫌がっている様子はないが困惑はしているようだ。
やはり心の傷を今以上に癒すには兄の遺体を探す他に無いのかも知れない。これからも手がかりになりそうな事は可能な限り調べていこう。
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「惚れた女性のために一途に頑張る。素敵じゃない。流石は私のご主人様ね」
私が鏡に目を向けると鏡花は腕を組み頷いている。
「えっ?何のことですか・・・まさか僕の心が読めるのですか」
「そんなこと出来ないわよ。あなた、考えていることが口に出る癖があるみたいね。全部聞こえていたわよ」
それは恥ずかしい、今まで知らなかった。
「主人と付喪神は一蓮托生。私もお兄さんの遺体捜索を手伝ってあげる。まぁ、動けない私に出来ることなんて相談に乗る事しかできないのだけれどね」
「それでも助かりますよ。一人で行き詰まりを感じていた所だったので」
「樹、あなたに言っておく事があるの・・・甘い物が好きな大人の男性も沢山いるわよ。むしろ、好きなものを隠す方が子供っぽいわね」
「えっ!?」




