39 石橋工事3
「あーあ、せっかく積んだのに壊しちゃって」
「すまない! あんな凄いことになるとは思ってもみなかったんだ」
天気の崩れもあり、水抜きと休息も兼ねて連休とし三日後、みんなに謝りながら、作業を再開する。
川の水位は見事に下がり、氷が底の水を押し出したようで、橋から下、三メートルの位置にひび割れだらけになった氷原が広がっていた。たぶん、氷に堰き止められた小さなダム湖がそこら中に出来ているのだろう。
中央部分の橋土手の欠損部を埋める工事からだが、氷が詰まっている。柿沼さんに融かしてもらったが、水位は低いが水が結構な勢いで流れている。落とす土砂を固めながら流した。砂利のようになって上流側に溜まり上手く固まった。
石の土手の上で百五十キロもある鋼鉄製の溝を数人で担いで器用に取り廻している。氷の上なら滑らせて出来るが、石の上では重労働だが手慣れたものだ。
ほんと、みんな頑張ってくれてたんだなぁ~
この溝の接合には、マカロン君達が作ったボルトナットが沢山使われている。この世界にも、ネジは一応あるが、統一規格などないから、みんな一品一葉でしかない。これを金型を作って量産に成功したことは素晴らしい。
二メートルほど高く設置されている槽から、傾斜をつけて溝をパイプラインのように持ってくるため、各節には二か所づつ折りたたみ式のサポートを取り付ける。亜湖さんのアイデアだと思うが、これもボルトナットで、高さの調整まで出来るように考えられている。
耳付きのタルボガンの頭を被った、髭面のおっさんが、腰にスパナを刺して歩いているのを見ると、異世界の工事現場だなと笑ってしまう。
橋の水のない下流を柿沼さんが十五メートル幅で焼いて乾燥させて橋の全長の作業現場を作っていく。
予想されていた通り、底は砂地だった。俺は後について歩き、ロープに付けた目印で橋脚の間の寸法を測り、アーチをくり貫く場所を橋の面合わせフラットに、ついでに二メートル掘り下げる。この溝の底が本来のこの川底のハズだからだ。
その溝にミステイクで一番大きな、シュトルデールさんと小さなスフレ君が入って、俺の作った鉄パイプの先に付いたクリップに挟んだ炭とロープのコンパスで、土手にアーチの絵を描いて行く。これが俺がくり貫く範囲だ。二メートル橋げたを挟んでまた掘って描く。
こうして、柿沼さんと一行は二日がかりで、底を焼き、溝と底を固め、アーチを描いて橋の端まで進んだ。中央の最初のはけ口部分は、水流で既に底砂が流されて、二メートル掘り下げた溝の深さよりも深くなっていた。溝に水が入ってもここに抜けて行く。
翌朝、くり貫く前に、ここまでに積んだ縁石を固めておかないと、また崩したら今度こそ袋叩きに合う。二時間ほどで、その作業は終わった。早めの昼食を取り、くり貫き作業にかかる。
池宮さんに風を送ってもらいながら、慎重にアールに沿って昇華させる。
水と砕けた氷が流れてきたが、溝から溢れることもなく止まった。俺は濡れる心配もなく、ついでに橋脚の基礎に当たる部分を思いっきり深くまで固化した。
こうして、全部のアーチを抜くのに、五日かかった。同時に縁石のブロック積みも終わり固化する。三月に入った。また天気が崩れて連休。春先の天候は不安定だ。
橋の橋脚の上流側の土手勾配を鉛直に削る。こうしておかないと、水流が橋の上まで駆け上がってくる可能性があるからだ。一日もあれば歩きながら出来る。
残りは、トンネル工事と橋のとっかかりの傾斜の工事だ。トンネル入り口と橋の天面までは二メートルの落差がある。みんなの意見で、土砂を貯める槽にした場所は退避場所として残したいので、橋の上に勾配を作りたいそうだ。また縁石を並べないといけないぞ、と言ったがかまわないと言う。もう工事の終わりが見えてるからみんなが、名残惜しそうにこだわる。
俺はまだトンネル掘りが、かなり残っているんだけどね。
トンネルから槽に満杯に土砂を流し込み、砂に変える。槽の壁を橋幅だけ取り除くと、それぞれが槽から砂を掻き出し水魔法で固めて勾配を作り始めた。傾斜だけで三十メートルあるそうだ。
十日を要したが、勾配を作り終わり、槽の壁を一メートル下げて安全柵がわりにした槽跡広場も完成した。
縁石も積み終わって、橋は完成だ!開通式をしたいところだが、まだトンネル工事が残っている。
池宮さんと二人で五日もあれば、残り七百メートルづつを開通出来ると聞いて、みんなは、待っているとダンジョン兵舎で五日続きの宴会を始めた。気楽なもんだよ。
フレーブ側から取り掛かる。ダンジョン兵舎の通路を作った時と同じ要領で、パイロット洞を掘り、ネズミに偵察してもらう。ただ、こちらは草が邪魔で良く見えないらしい。ネズミじゃ、背が低かったそうだ。鳥に視点を変えて、そのネズミを発見し、トンネル出口が分かった。
予定より少し西だったそうだが、特に問題はないそうだ。人気もないとのこと。
風をパイロット洞に送ってもらいながら、数十メートルづつ昇華させてトンネルを拡張する。
残り一メートルほどのところで、ストップして、パイロット洞を閉じた。
ベイグル側も同じ要領で、掘り進み、こっちは明り取りと換気の為に、二十五センチくらいの穴を、数十メートル置きに真上に地上まで貫通させた。ベイグル側のトンネルも開通した。
兵舎に戻ると拍手喝采だ。
「みんな、三か月の大工事、ご苦労様でした。特に裕介くん!」
海野さんが、全員をねぎらい、握手を交わす。
「ユースケ中佐ぁ~!」
座っていた俺にベラトリックスが後ろから抱き付いてきた。薄い布一枚のブラを通して、おっぱいに耳が挟まれる。うーん、うれしいかも。でも酒臭っ!
「だめですよ! ベラさん!」
アリサが血相を変えて引き離す。いや、ダメじゃないんだけどな。
準備や先行工事から入れると半年だもんな。良く働いたよ。
もう間もなく四月だ。日本では桜が咲く季節だ。




