16 シエロが天才すぎる
「あんた、すごいんだな……!」
「そうか?」
キラッキラの目でシエロを見るアーサー王子。
あっ、これ二次創作で見た事ある。
「面と向かって兄さんを挑発する平民なんて初めて見た。」
「クリスベル学園に入学する平民自体珍しいからな。」
ちなみに今は、お題をチームごとに配っている最中である。
こうなったら難易度の低いお題が来てくれる事を祈るしかない。
簡単なお題ですように。
「だが……勝算はあるのか? ブランカ。」
アーサーに言われて、私はシエロを指差す。
シエロはやれやれ、と肩をすくめた。
「これは……暗号文か?」
スタートの合図と共に、生徒達は一斉にお題を確認した。
このお題……問題を解き、次のヒントがある場所の情報を得る、そしてまた次の問題を解く……を繰り返してお宝まで辿り着くのだ。
「解ける……と思うが、時間がかかりそうだな。シェロはどうだ?」
「うん……。」
シエロは少し考えて、私を見た。
「ゴールまでのお題、何問あるのか知っているか?」
「3つのはずですわ。先輩たちがそう仰っていらしたもの。」
「3つか……。」
ぱっと、杖を取り出す。
何をするつもりなのかなと見ていると、
「友よ、秘密を守護する部屋をここに。」
……これ、音を遮断する魔法か!
ぱっと見では分からないが、音以外も秘密にしたい事はここにいる者以外には伝わらない、という事なのだろう。
多分読唇術もガードする。
上位互換では?
「わざわざ問題を解かなくても、直接お宝のある場所に行ってお宝を得ればいいんじゃないか?」
「いや、その場所が分からないから……。」
「教師は知っていると思わないか?」
こ、こいつ……!
正々堂々やろう、って話をした後にその手で勝とうとするのか……!
いいね、その考えは嫌いじゃない。
「いいのか、それ?」
「駄目とは言われてないだろ?」
「魅力的だけど、それは無理ですわ。」
そう、残念ながら無理である。
「無理?」
「私も事前に調べてしまおう、と思って盗み見たのですけれど……。」
「なんで戸惑いなくやれるんだあんたら。」
だって得意分野だし、調べるよそりゃ。
「そうですわね……そこに先生が待機してるのが分かって?」
「ああ。」
レクリエーションで先に進めない事がないように、各地に教師がいて、躓いている生徒にヒントを与える役目がある。
テント、机と椅子があり、先生は椅子に座って様子を見ている事がほとんどだ。
勿論スタート地点のここにもいるのだが……。
「あちらに置いてあるファイル、それに全問題とその答えがございますの。」
「よく調べたな。」
「うふふ、これも先輩が教えて下さったの。」
シエロって勘が鋭そうだから怖いんだよな。
情報源はバレないようにしないと。
「私、先生が席を外してらっしゃる隙に、見ようと思ったのですけど……。」
「閲覧権限か?」
「ええ、ちょっと……。相当な知識と技術がないと無理かと。」
球体になっている魔方陣12個を平面に直し、そこからそれを正しい配置に設置する仕様だった。
ちょっと初級編を習った私では無理だ。
「12個か……。」
「ん?」
いやーまさか無理だよね、いくら才能マンション持ってるシエロとはいえそんな……。
「やれると思う。」
「出来ちゃうの!!?」
流石全方向チート、出来ない事の方がない!
頼りになるけど逆に怖いなこの人!
絶対敵にしたくない! 味方で良かった!
「なら、あのファイルを狙うのか?」
「アーティとブランで先生にヒントを聞きに行けばいい。俺が開始早々姿を消したと言えば同情して親切にしてくれるだろう。」
「自分の評判をよく分かってらっしゃる……。」
「勝ちたいんだろう?」
シエロは自信たっぷりに笑う。
私とアーサーは頷いた。
……あれ、チームリーダーは私のはずなんだけどな。
「先生、あの……。」
「うん? お前たち、もう一人はどうした。」
スタート地点は目立つので、別の場所へ移動して作戦を決行した。
先生はちょうど席を立っていたので、テントはがら空きだ。
しめしめ。
「シエロくんは、開始早々いなくなってしまいまして……。」
「シエロが? ……あいつも困った奴だ。」
聖星祭も今回もサボろうとしていたし、多分すでにイベントサボってる前科があるんだろう。
そういえば説明会とかいなかった気がするし。
「その……2人でも大丈夫でしょうか?」
「ああ、俺から話しておくから、君たちは大丈夫だよ。」
安心なさい。
そう優しく接してくれている先生の後ろで、こっそりとシエロがファイルに近寄る。
もしや音を遮断する魔法は使えるのに意識をそらす魔法は使えない?
……いやどこにいても目立つか、うん。
「それで、その……アーサー様も、問題を解くのを手伝ってくださらなくって……。」
背後にいるアーサーが「俺は何の役にも立たない……」とどんよりしているのが分かる。
いや、これは先生の気を引くために言っているんだからね!
「そうか……。」
王子達の仲の悪さは先生達も知っている。
勿論昨日までアーサーが引きこもっていたことも。
「アーサー様、一緒に問題を解いてみませんか?」
「いや……いい。俺には荷が重い……。」
ガチで落ち込んでるじゃんか。
ところでシェロは?
おお、順調に解いて……、ん?
あれ後ろの木に……猫!?
シエロに近寄って……シエロ気付いてる?
な、何事も起きなければいいけども、
「……うわっ!?」
猫はぴょんと、木から飛び降り、シエロを踏み台にして地面に着地した。
ば、ばかーーーーー!
「うん?」
だ、駄目だ教師を今振り向かせるわけにはいかない!
「せ、先生!」
「ど、どうしたメークイン。」
「私、時間がないんです!」
ここだ、強引に一方的に話しまくるしかない!
「勝負を一方的に挑まれて、負けたらお嫁にいかなければならない……。そんなの、私、嫌なんです……!」
「なんだって、なんでそんな事に?」
「私、先生だけが頼りで……。くすん。」
「わ、分かった。一緒に急いで解こう。だから泣かないでくれ、な?」
よ、よし。これで時間が稼げそうだ。
頼んだぞ、シエロ……!
ちらり、と視線を向ける。
解除が終わったようだ。
ぐっ、と親指が立てられる。
あとは情報を入手して、合流だ!
「これなら、間違いなく一番乗りだな。」
「そうですね。ありがとうございます、シェロ。」
「お礼にはまだ早い。」
シエロが宝であるメダルを片手で持て遊びながら答える。
「……。」
さっきからアーサーが落ち込んでいる。
おかしいな、心にもない事を言った件については謝罪したのだが。
「そちらのやり取りもナイスだった。悪かったな、途中フォローさせて。」
「いえいえ、終わり良ければ総て良し、ですわ。」
「アーサーも、ありがとう。」
「……俺は何もしていない。」
あ、それか。
それで落ち込んでいたのか。
……うーん。
こんな時、主人公はなんて声をかけていたかな。
「そうか、次は活躍出来るといいな。」
「ああ……。」
期待してる、とか言うとプレッシャーになりそうだしなぁ……。
シエロ同様、触れないでおくのが一番かもしれない。
「あら、早いわね。貴方たちが一番乗りよ。」
ゴール地点で待っていた先生がにっこりとほほ笑む。
シエロが先生へ宝を渡し、確認をとる。
「確かに受け取ったわ。……でも驚いたわね、最短記録をこんなに更新するなんて。流石は天才と王子ってとこかしら。」
「すごいのはコイツらだ、俺じゃない。」
「ふふ、謙遜しちゃって。お兄さんに勝ったんですから、もう少し胸をはりなさいな。」
……ああ。
兄弟喧嘩がこれ以上ややこしいことにならないといいけど。
「おや、貴方が一番でしたか。」
「え、ハルト。」
正攻法でこんなに早く到着するとは……。
流石主人公補正。
「うーん、良いお題を引いたから勝ったと思ったんだけど……。ちょっと悔しいね。」
「そうですね、残念です。」
「でもでも、2番でもジューブンすごいよっ、クラリスちゃんのおかげだよ。」
「ありがとうございます、先輩。」
2着はクラリス、ハルト、ノエルのチーム。
ノエル=フリードは攻略対象の最後の1人なのだが……彼については今は右においておこう。
「何か考えがあるんだとは思っていましたが……。王子とシエロさんを誘ったんですね。」
「ええ、2人とも、とても頼りになりました。」
「ハルトさん、ご友人ですか?」
「ええ、紹介しますね。メークイン家の長女、ブランカ嬢です。」
クラリスが私を見る。
少し驚いた顔をしている。
……それは何に対する驚きなのだろうか?
「……よろしくお願いします、ブランカ様。クラリス=シュガーと申します。」
「ご丁寧にありがとうございます。ご紹介頂いたブランカ=メークインですわ。仲良くしてくださいね。」
挨拶を交わしたところで、入り口から「負けただとー!?」と、フランの声が聞こえた。
ここからしばらく更新ないです……。




