15 レクリエーション
クリスベル学園のレクリエーションイベント。
イベントとしては気になるキャラクターを紹介する意味合いが強い。
なので二人選べる。
ここで選ばなかったからと言ってルート確定が無理って事もない。
乙女ゲームはわりと一途に追いかけないとクリアできないシビアなものが多いのだが、トラヴィス物語が序盤は誰にするか選ぶ期間、ってのを重視しているので難易度低めである。
そしてこのレクリエーションの内容というと、宝探しだ。
全学年参加のイベントで、これまでに組んだことのない人と組まなければならない。
他の学年や新入生同士で組んで親睦を深める事が目的のイベントらしい。
皆知り合いと組むからあんまり意味ないんだけどね。
「見ろよ、あれ……。」
「うわっ、あの二人と一緒の人可哀そう……。」
そしてこれは当日になってから思ったのだが。
「…………。」
「……気にするな、ほぼ俺の悪評だ。」
この二人、生徒の評判悪いワースト2じゃないか。
目立つ2人をチョイスしてしまったな……。
アーサー王子、一般生徒からはむしろ同情的な反応が多いんだけど、シエロに関しては全方向から嫌われているようなものだからなぁ。
情報収集役の私が悪い意味で注目を集めてしまっている……。
……むしろ二人が目立って私は目立たないのではないか?
なんせモブだからね! 地味さには定評があるぜ!
「その……なんだ、シエロ、さん?」
「シェロでいい。平民に丁寧に接する必要はないさ。」
「え、いや、けど学園では……。」
「権力を振りかざすような真似は許されていない。だが、君が立場通りの振る舞いをしなければ、文句を言う人間に餌を与えるだけだ。」
「……分かった、シェロ。」
あれ、ゲームだとあまり絡まないんだけど、こうしてみると相性のいいコンビなのでは?
自信がなくておどおどしているアーサーとマイペースでどっしり構えているシエロ。
「君も、俺の事はシェロで構わない。」
「かしこまりましたわ、ではシェロと。」
「ああ。」
周囲の声は止まない。
どうやってチーム組んだんだ、とか、王子を脅したんじゃ……とか、操られているのではとか。
いや、すごいなシエロ。
ゲームでも脅されているのか? って噂されていたけどなんか王子達の喧嘩までシエロのせいにされてる。
全部スル―して会場に用意されてるお茶飲んでるけど。
無言でさくさくクッキー食べてる。
気に入ったのか。
「シェロは気にならないのか?」
「ん? ……アーサー王子は愛称はあるか?」
「? 呼ぶならアートかアーティあたりじゃないか?」
「ならアーティ。」
距離感近いなシエロ。
「……仲間外れは良くないな。君の事はブランと呼ばせてもらおう。」
いや本当がんがんくるなシエロ。
あだ名があるとファンもその名前で呼ぶし、覚えやすいからキャラに馴染みやすいんだよね。
「そうだな……俺は元々平民で、学校では嫌でも注目を集めるからな。こういうのには慣れている。」
「そうだったのか……。」
シェロの場合は魔法が優秀過ぎて目立ってるからなぁ。
……さて、アーサーにも今回の勝負について話さないと。
昨日はなんだかんだで話せなかったし。
「アーサーくん、今日のレクリエーションなんですけれど、」
言葉は続かなかった。
「なんだ、お前はアーサー王子に声をかけたのか。」
「へぇ……お前がちゃんとイベントに参加するとは思わなかった、かな。」
何故なら、横から声がかかったからだ。
対戦相手のフランと、第一王子のロミオから。
アーサーがザッとシエロの後ろに隠れる。
おお……シエロすでに懐かれてる……。
というかなんと間の悪いタイミングで……!
「俺やクラリスに頼れなくなったから、今度はこの二人に頼るつもりなのかな?」
私達の前に現れたのは、言うまでもなく対戦相手のフランとロミオだ。
そして伯爵家のリアラ=キスク。
クラリスの友人であるリアラは、王子ともそれなりに仲が良いキャラクターだ。
そうかー、ロミオはクラリスとじゃないか~。
……兄弟対決か~。
「お前が対戦相手か。」
「ああ、そうだぜ。俺はフランシス=ボールドウインだ。よろしくな。」
「シエロだ。」
フランとシエロが挨拶を交わす。
様子を見ていたリアラも会話に加わった。
「ボクはリアラ。ロミオ王子に誘われてね、参加する事にしたんだ。」
キラッキラの微笑みで話しかけてくれるリアラは旗から見れば完全無欠のイケメンである。
……女の子なんだけどね。
スラックスを着用し、 灰翠の髪を後ろで1つに束ねている金瞳の美少年にしか見えないが、女性だ。
彼女は主人公クラリスの親友という立ち位置である。
そして固有のエンドはない。
一番イケメンとの意見も多いキャラであり、友情エンドがないのが本当に残念である。
「ボクはいつでも、君の味方だよ。」と主人公を支えてくれるし、相談にも乗ってくれる。
ちなみにライバルの女の子はいない。
「よろしくお願い致します。」
「二人にも事情は話してある。……手を抜いたりするなよ?」
「ええ、勿論ですわ。」
嫁に行くつもりがないからシエロを仲間にしたのだ。
絶対勝つ。
「事情……?」
「おや、スペアくんは知らないのかな?」
あー! それ今話すところだったんですよー!
こっちで説明するので黙っててくれませんか王子ー!
「この勝負に負けたら、彼女はフランに嫁入りするんだよ。」
「!」
「まぁ、たかがレクリエーションだ。気楽にやるといいさ。誰も君に期待なんてしていないからね。」
あ、悪役してるぅ~~~。
先に精神攻撃するのやめて欲しい~。
アーサーが行動不能になってしまう~……。
「王子、」
嗜めようと声を発する、しかし行動するよりも先に、シエロがロミオからアーサーを庇うように前に出た。
「確かに、たかがレクリエーション。ただの遊びだ。本気でやる必要はない。……だが、それを負けた理由にするなよ?」
シエロがにやりと笑う。
ロミオも笑う。目が全く笑っていないけれど。
「……ブランカ嬢が可愛そうだから、負けてあげようかと思っていたけど。」
なんだって。
それを早く言ってくれロミオ王子。
「な、ロミオ!?」
勝ちを譲る宣言にフランが慌てた顔をする。
そうよね、家宝賭けてるもんね。
「そう言われちゃ、手を抜くわけにもいかない、かな。」
王子が真っ直ぐにシエロを見る。
シエロは全く動じない。強い。
「正々堂々、やろうか。」
「ああ、良い勝負にしよう。」
すごい、これが攻略対象同士の会話……!
私がすごいモブ!
むしろいらねぇ! 邪魔!
そしてアーサーがめっちゃシエロを尊敬した目で見ている!
お前攻略王か何かか!
攻略しようとしたら攻略されたの評判は間違っていなかった……?
「おい、あれ……!」
「第一王子と第二王子で勝負……!?」
私とフランの勝負は、いざ本番になってから王子達の対決、として一気に注目を集めだした。
……シエロを仲間にすれば勝てると踏んでスカウトしたのに、完璧王子のロミオが本気を出してしまった。
ええ、この勝負どうなるんだ……!?
次の話でストックなくなるので、次回更新以降しばらくは更新ないと思います。




