12 対戦交渉
あらすじ
フランと勝負する事になった。
「いやいやいや。」
何故、そうなる!?
ど、どうにか、どうにか回避しなくては!
それらしい理由を捻出しよう、学校では貴族の権力を行使出来ないとはいえ、ボールドウイン家は格上だ。
真っ向から断るなんてとんでもない。
「私、まだ入学したばかりですし、目立つような事は……。」
「勝負の舞台は今度のレクリエーションだ。どちらが先にクリアできるかを競う。これなら男女の力量差は関係ないし、周囲から注目を集める事もないだろ?」
闘技会と違ってあくまで個人的な勝負だからな、とフランは続ける。
え、えーと他の理由……。
「そうだな、せっかくだから何か賭けてもらおうか。……そうだ、俺が勝ったらうちに嫁入りしてもらう。」
「ふぁい!!?」
ちょ、令嬢らしかぬ声出た。
落ち着こう、深呼吸、深呼吸……。
「どうしたんです、フラン。急にそのような……。」
「俺はこいつがハルトの前に出た時、何も出来なかった。このお嬢さんはあまりにも堂々とした態度でハルトの前に立ち、年上の俺に対して物怖じせず言葉を返した。」
「正直に言おう、あれは俺の敗北だった!」
ええー、あれそんな大層なものじゃないと思いますよ?
途中で大人が来たから助かったようなものだし。
作戦もお粗末なもので今なら実行不可能だよ何考えてるんだって思うよ。
あの時ハルトに頼られて正気じゃなかっただけだって。
「この敗北を、俺はずっと忘れられなかった。ここで清算しなきゃ、これからずっとこのもやもやを抱えっぱなしになる。」
「だから、戦ってくれ。」
いや、でも。
レクリエーションってゲームにもあるイベントじゃないですか。
いいのかなー影響与えるような事して……。
いや、もう過去でハルトを助けた時点でフラグ作っちゃってるのか。
「彼女の嫁入りが条件なのは何故?」
「それだけ本気にして欲しい、ってのが1つ。あとは……男にも果敢に挑む女性で、ハルトが部下に欲しいって評価するくらいだ。是非ともうちに欲しいね。」
さっきからハルトが話を進行している……。
そのまま断ってくれないかな。
「ほう……。それで? 貴方は何を賭けるのですか?」
「む。」
「彼女の嫁入りと同等の価値のあるもの……用意出来ますか?」
おお、頑張れハルト、そのまま断ってくれ!
「……ボールドウイン家の秘伝魔法でどうだ? 身体強化の魔法だ。」
え、それ賭けるの!?
「なにを言っているんです?」
そ、そーだそーだ、魔法くらいで……ちょっと欲しいけど……釣られるものかー!
「もっと良い魔法があるでしょう?」
ハルト!?
「お前、まさか。」
「彼女は人生を賭けるのです、貴方が出すべきはとっておきの魔法。……雷光の剣です。」
あ、あー。あれか~……。
ゲームでもちょくちょく使ってたあの武器、ボールドウイン家の魔法だったんだ。
ブリッツブレードだっけか。
フランは双剣使いなんだよね。
身体強化の魔法も使ってて素早い連撃が得意らしい。
スチルでしか見た事ないからわかんないけど。
「……分かった、賭けよう。」
出しちゃうの!?
それ家宝みたいなものじゃないの!?
君のアイデンティティみたいなものなのでは!?
「もう一声いけますよね?」
ハルトは何なの!? どこまで値切るつもりなの!?
そもそも私ナイフ使いだから剣いらないよ!?
「もう2つか3つは賭けて下さらないと。」
「ま、待てハルト、それ以上は流石に……。」
「イグナーツ家がせっせと育てたお嬢さんを横からかっさらうんですから、少しは、ねぇ?」
にこにこと笑いながら話を進めていくハルト。
あれ、これそろそろ止めないと引き返せなくなるのでは?
「あの、ハルト。私剣とか使えないし、その話は……。」
「ははは、雷光の武器を生成する魔法だから心配はいらないですよ。」
止まらない。
なんで本人よりノリノリで交渉してるんだこの人。
いや剣ちょっと欲しいけどさ。
よく分からなかったが、ハルトはあれこれ提案し、最終的に2つの魔法提供で話がまとまったようだ。
うんうん、最初に大目に提示しておいて、本来欲しいものを引き出すやり方ね。勉強になります。
「いやぁ、楽しみですねぇ。」
「お前……くそぅ、俺が交渉下手だからって……!」
「ははは。」
おかしい、拒否権がなかった。
ボールドウイン家もイグナーツ家も格上だから断れないのはそうなんだけどさ。
「……? なんでハルトがそんなに楽しそうなの?」
「実は雷光の武器、一度手に持ってみたかったんですよね。」
あ、ちょっとわかる。
かっこいい剣は一度手に持ってみたいよね。
けど……。
「賭けに勝って魔法を貰えるのは私だよね?」
「レクリエーションは三人一組でしょう? 私も貰えますよ。」
「えっ。」
その理屈だと私も他の参加者に何か用意しないといけなくない?
「今回賭ける魔法は、継承権利は貰えないので一世代限り。結婚は末代まで影響があります。釣り合ってる釣り合ってる。」
「待てハルト、お前が参加してくれないと俺がメンバー集められな……。」
「知りませんよ。」
スパっと切り返すハルト。
うーん、でもなー。
「ハルトはチームに入れないよ?」
「えっ。」
だってこれはゲームにもあるイベント。
ハルトが主人公・クラリスとチームを組む可能性をつぶすわけにはいかない。
いかないのだ!
「だってほら、フランシス様と共通の友人ですもの。どちらかに肩入れするのはフェアじゃありませんわ。」
クラリスがフランとハルトを選ぶパターンもあるとは思うけれど、順当にいけばフランはロミオを連れてくるはず。
そこに主人公が加わったら勝ち目がない……かも……うん……。
主人公がフラン選ばないと助かる。
選んでも勝てるとは思うけれど。
「で、ですが……。」
「ハルトがフランシス様を勝たせる為にわざと手を抜く、とかもあり得ますもの。」
「……しませんけど、貴方に信頼されるかどうかは別ですね。」
ご、ごめんねハルト……!
君の将来に多くの選択肢を残すためなんだ!
君の未来を愛しているからこそなんだ……!
「あー……。 ハルトが俺のチームに入っても、俺が有利になるようにお前の情報渡す、とかなるとフェアじゃないな。」
「そういうことです。」
なのでハルトとは別行動なのです!
「……雷光の剣、使いたかったなぁ。」
「そういえば、昔から俺の剣好きだったよな。雷属性好きなのか?」
「だって雷って扱いにくいって言われてるじゃないですか、それを剣にして使いこなすのってすっごくロマンがあるじゃないですか!」
「お前……、わかってるじゃん!」
ハルトがいじけてしまったが、フランが雷の魔法をあれこれ見せて機嫌を取っているようなので任せよう。
それよりも、どうやって勝つかを考えなくては。
わざと負ける、は駄目だ。
私にはライバルとしてハルトを支えるという使命がある、フランと婚約してしまってはそれどころじゃなくなる。
クラリスではない私ではきっと汚名返上なんて出来ないだろうし、彼を前向きにしようと思ったらハルトの事がおろそかになろう。
それは良くない。
だが確実に勝とう、となると……。
「……。」
彼に頼るしかない。
残る攻略対象の2人のうち1人。
平民の天才、シエロに。




