15.疑似餌7
2話投稿します。
宜しくお願いします。
気付いたら、何かフワフワしたものにくるまれて、視界はそのフワフワに遮られていた。薄暗いのはフワフワのせいか単にそういう時間なのか。考えようにも、体に響く振動が心地よくて、瞼がまた降りてくる。
フワフワあったかいし、ゆさゆさ気持ちいー・・
私は疲れていた。
いつ意識が飛んだのか分からなかったくらい。
こりゃ、ヤバかったな・・・。
本来飛ばない意識が飛ぶくらい、力が底を付いていたんだろうか。今どういう状況か分からないけど、こうして考えられるということはまだ私が存在できていて、ドコかに運ばれているなら、その間は大丈夫ってことだろう。
少しでも休まないと・・・。
滅裂な思考をナンとか繋いで、都合よく結論を纏めて意識を微睡みに委ねた。
「んあ、まぶち」
ぶふぁ!
ん?
閉じた目蓋に当たる強い光に、つい声が出たけど、噛んじゃった。疲れすぎて舌も鈍くなってるのか?痺れたみたいに上手く動かせない。感じた光は夕日ががった西日のようだ。微睡みから浮上して、目をぱしぱししながら違和感に口をモゴモゴしていると、周りが騒がしい。
「かっ、可愛い・・・!」
この声はヨウコさん? 朝ぶり、どうもどうも!
まだ視界がボヤけてるけど、声の方を見て口許を緩める。息を飲む音の後、誰かにサッと両脇に手を差し込まれ持ち上げられた。軽々と。足元にパサッと布が落ちた。腹と足に浮遊感を受けてギョッと目を開く。
わあ、高い!って、わかむうじゃん。輝くようないい笑顔だねぇ。
ん?
わかむうの腕にそえた私の手が、ふっくらむちむち・・・。
手をにぎにぎする。
んん?
高い高いの状態で、足を揃えて上げたまま静止して、覗き込むように自分の両足を見る。
いつものフリフリスカート、短く、ね?
パンツとやら、見えてね?これ?
靴ちっちゃ!
え?
あれ?
前より縮ん・・・?!
「ぴぎゃ!」
変な声でた!
混乱でじたばたするも、わかむうにキュッと軽く抱き込まれる。
・・・背中やら尻を支える具合が妙に心地いいな。はっ、保父スタイル!!てゆか、抱っこ、こなれ過ぎでしょ!
抱っこされている自身の体を改めて見ると、ちんまりした黒ゴス(縮んでもゴスロリだった)を纏った、一、二歳くらいになっているようだ。マジギリギリ!これ以上ちっちゃくなったらどーなるの!?
多分、三竦みをやっつけることに集中してて、無意識に体長をコンパクトにして無駄な力の消費を無くしていった結果だな、と考えながら、じいっとわかむうを見上げていると、わかむうと目が合った。
「・・・愛らしいな。大地殿、しばらく預かってもよいか?」
「・・・・・」
げんなりした顔の大地が、わかむうと私に近づいてきたと思ったら、視界がブレて、もう私は大地の腕の中にいた。への字口の大地は疲れた顔をしている。大丈夫だとはわかってたけど、・・・無事で良かった。
私はぎゅうう、と大地の胸に顔を埋めてしがみつく。両手両足ホールドだ。軽くピクッと揺れて、大地も私をしっかり抱き抱えてくれた。
「残念だ」
と言いながら、わかむうは笑ってる。視線を逸らした大地の頬が少し赤らんでいる。ナンか、二人ちょっと仲良くなった?
「それは、それとして」
一転して、冷やっとした空気が彼から流れてくる。
「何がどうなって、本土の半分に至る三竦みを呼び集める事態になったのか、お聞かせ願おう」
え? そんなに来てた? スゴいね~!・・・ご、ごめんて、わかむう!
茶化そうとした私を見る彼の目がキレッキレだ。
冷や汗が絶え間なく背中を伝う。私は必死に記憶を辿り、そこにいる皆に事の次第をゆーっくりと語った。・・・舌が回らないんだよう。
「さんちゅくみをよんだら、いっぱい来た」
皆がふんふんと頷いているのが見える。
「たくさんちとめたら、つかれた。きじゅいたらはこばれてて、ここにいた」
回想おわり。
・・・ん? どしたの、皆?
わかむうは笑顔のまま固まり、大地は項垂れ肩を落としている。ヨウコさんはぷるぷる震えている。
「わっかんねーよ、それじゃ・・・」
はぁ、と私の頭のてっぺんに大地のため息が揺れる。
ナンとも言えない沈黙を破るように、はふん!としぃまろが吠えた。
おや、しぃ、いつ出てきたの?三竦みと闘い過ぎて消えそうだったから、依り代の置物に戻してたのに。こまと力を譲り合ったのかな?
私の思考を他所に、しぃとわかむうの会話が続いていく。皆も聞き耳をたてているところを見ると、しぃのはふん言葉が理解できてるのか・・・マジか。分からんの私だけか?!
「・・・しぃまろ殿が話すと? そうか、そなた螺旋のと行動を共にしていたな」
はふ、はふはふん!
「ふむ、依り代に戻るまでなら状況が分かる、と。ならば詳細を頼む」
私の「通訳ちて!」というお願いは皆の半笑いに流された。
ソレってアレよ、目の前で自分の行いを暴露されてるのにナニを言われているのか理解できないとか、ナニプレイ?
はふ!はふ~ん、はふっはふっ。
「底なし腹か・・・」
「何!そんなことを・・・」
「よく・・・」
ぼそぼそ、ぼそぼそと漏れ聴こえる。そしてナンだろう、視線が痛い? あれ、ヘンなことも悪いこともしてないよね? ナンでこんなに居たたまれないの。どんな風に言ってるの? てゆか、どこから話してるの?運動公園ついてから?今は蛞蝓出たあたり、・・・そう、じゃあ胸張っとこう。私、チョー活躍したじゃん!
「お前、無茶したんだな。それは俺にも分かったわ」
大地に頭を撫でられたけど、労りとは違って、手のひらからは心配というか、悲しみが伝わってきた。これは、ちっさいのがイカンのだな。おおごとに見えるもんね。でも大丈夫!
「体は、おふだをほうのうしゅればもどるよ?」
童女の形だけならすぐだ。ただ力は使えないし、大きい姿になるならもっと時間かかるけどね。
だけど、大地は力なく笑うだけだ。反応に戸惑っていると、ヨウコさんが抱っこしたいと両手を広げて待っていて、おずおずと大地からヨウコさんに移った。
「俺は、守られてばかりだな」
大地は手洗いに行くと言ってその場を離れていて、彼の呟きは聞き取れなかった。
しぃまろが置物に戻るまでを話し終えたようだ。わかむうやヨウコさんにも向こう見ずだとお叱りを受けて、さらにわかむうには、力が戻ったら手合わせしようと怖い目で誘われた。私が三竦みを呼んだ最盛期状態での言霊に興味があるようだ。
全力で拒否した。
わかむう、武道極めまくってるよね? 知ってるよ、全国まわるついでに強者を訪ね歩いてるの! 今ナン連勝中だっけか?
瞬殺されるイメージしかわかないっつの!
「それよりも、私はどうやってココに戻ったの?虫は?三竦みはどうなった?」
虫や三竦みについては、皆が寛いでいる様子からナンとなく予想がつくけど、聞いてみた。
「簡単に言うと、そなたが呼び集めた分は始末できた。虫は例年通りといえるくらい数を減らし三竦みに変化したため、虫狩りから三竦み狩りに直ぐさま移行したのだ。三竦みらはそなたの方に行こうとするから、各地で進行の誘導に加え、迎え討つ形が取れた。・・・礼を言う」
三竦みに呑み込まれるヒトや妖怪も少なからずいたようだけど、すぐに助け出されて一時的な意識喪失で済んだらしい。あとは進む先が分かっているから三竦みを人気のない道に誘導してヒトを守り、弱い妖怪達は避難させて、大きな被害を免れたそうだ。よかったよかった。
「他県からの問い合わせが煩わしかったが、近隣のモノは助っ人に来てくれたぞ」
虫が三竦みに次々変化したと思ったら妙な力が走り抜けて三竦みを惹き付けた。その力の波動の出所を探って他県の妖怪達は大騒ぎだったとか。んで、わかむうは物問い速達の嵐に遭ったんだな。 ん? 妙って、私の力のコト・・・?
「ただ、そなたの力が強すぎて、皆なかなかそちらに近づけなかった。助力が遅くなり、すまなかった」
わかむうが深く頭を下げた。そんな、謝ることじゃないのに。私が力加減を間違えて呼び過ぎた、自業自得だよ?




