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14.疑似餌6 *大地視点

本日3話続けて投稿しています。未読のかたは前々話からどうぞお読みください。


よろしくお願いします。


5/20 太刀を刀に直しました。螺旋や若武者は知ってても、中学生の大地は違いなんてわからず「刀」と見るかな、と。

 今日は晴天で、暑いくらいだ。もう昼を過ぎて夕刻前だけど、ここは今もわいわいと行楽を楽しむ人で賑わっている。それでも、商店街からの入り口を真っ直ぐ、大きな古桜のそばのベンチに座る中学生に視線を向ける人はいない。・・・俺のことね。


 今日の俺は、こまろの結界で人から見えていないらしい。それもさっき知った。大声出しても、周りの人からチラッとも見られないからおかしいなとは思ってたんだ・・・。


 こまろの結界っていろんな種類があるんだな、と感心したら、場を守る狛犬の特性だと言いながらも、こまろは鼻先をつん、と上げて、お座りしながらふわふわした胸を張っている。


 食べ過ぎの体調不良で戻った組合員や、俺の話を聞き付けて集まった妖怪達をあらかた回復させて、ちょっと疲れた気がする。皆は虫を喰い飽きて、ようやく虫狩りを始めたらしい。


 まだ外は虫だらけなんだな。


 食中りを治したおかげか、俺に話しかけてくる組合員が増えた。園児達は相変わらず撫でろと言ってくる。

 そいつらによると、視界はまだ悪いものの、虫は高さ三メートルほどになったらしい。・・・朝は俺のうちの屋根を越すほどいたから、だいぶ減ったんだな。それでも例年より多いということで、皆必死に狩っているそうだ。


 虫が過密過ぎて、視界の悪さから人も妖も騙し討ちされやすく、見回りの組合員はてんてこ舞いらしい。ヨウコさんも頻繁に揉め事仲裁(お仕置き)するのに呼び出されていて、さっき垣間見た姿は妖狐だった。周りに漂う狐火がビリビリ鳴ってたから、だいぶイラついてるんじゃないか・・・? 俺はぶるっと背筋を震わせた。




「若ぁっ・・・!虫がっ、あのっ・・」


 公園外にいた組合員がバタバタと転げそうに駆けてくる。何か言っているが焦り過ぎて言葉を詰まらせている。同時に空からも地面からも、たくさんの小動物やら物やらが若さんに降りかかり、走りよってくる。始まる前に見かけた、遠方からの意思伝達手段で、いわゆる『速達の手紙』だ。


 若さんは、迷いなくその中から黄白い火玉(・・・・・)を掴みとった。


 あれは、・・あれはしぃまろの火玉じゃないか!?


 俺が息を飲んで若さんを見ていると、俺の脇にいたこまろが、はあ、と息をついた。そういえば、こまろとしぃまろは繋がってるって言ってなかったか。俺の視線に気付いたこまろが、いかにも、と言うようにはああ、と息を溢した。


 にわかに周囲が騒然とし始めた。いよいよ「何かが起きた」と思わせられる。


「何かあったのか?これは、いつも通りのことか?」


 俺の問いに、少しの間空を見つめ、こまろは黙っていた。そして、はあっ、と俺を見上げた。こまろは、この騒ぎと同じかは分からないが、螺旋(らせん)の居る所に虫が合わさった大きなナメクジが出た、と教えてくれた。


 そしてそれは、いつも通りじゃないと。あちらではナメクジに呑まれた人達が倒れていると・・・。


 俺は血の気が引いた。ガタッ、とベンチを揺らして立ち上がる。


 螺旋は、螺旋は大丈夫なのか? 倒れたってなんだ。まさか、人が死んだっていうのか。


 世の中善い妖怪だけではない、と螺旋から何度も聞かされた。知らない妖怪に話しかけられても応えるな、着いて行くな、と。俺はそれを、「悪い妖怪とか、人間と同じなんだな」と不思議な思いで聞いていた。


 ここぞと言う時にちょっと抜けるアイツの姿が頭に浮かぶ。きっと大丈夫じゃない。虫に夢中で、そのナメクジに突っ込むくらいやりそうだ。見ても無駄だと分かっていても、螺旋が向かった方角を見てしまう。


「・・・当代殿、」


 静かな声が響いた。若さんは全ての連絡に返事を出し終えたらしい。まだ次々と連絡が舞い込んでいるが大体同じ内容らしく、返事を天邪鬼(あまのじゃく)に任せたようだ。若さんの向こう側に、せっせと手紙を開封し返信する天邪鬼が見える。


「こまろ殿から聞いたか?異常事態だ。『三竦(さんすく)み』が出たようだ。そこの入り口にも数匹いるようだから、払いに出る」


 三竦み?聞いたことがある。確か、ナメクジ、カエル、ヘビだな。いや、それよりも・・・。


「螺旋は。螺旋を助けないと」


 言って俺は怯んだ。若さんの瞳が、物騒な輝きを帯びたからだ。顔は笑ってるのに。


「当代殿は、知らんのだな」


 若さんの手が腰の鞘に触れる。ここではないどこかを見て、ギラギラと目を光らせる。剣呑って、こういうのなんだな、と場違いなことを考えてしまった。


「あれは、(それがし)よりも強いぞ?」


 だから、言ってる意味が理解できなかった。

 誰が誰より強いって?


「まずは邪魔物を排する」

 

 そう言って踵を返し公園の入り口に向かう若さんを、俺は慌てて追いかけた。







 公園の、広いとは言えない入り口。門のように生える桜を越えようと、大きなものが動いている。ヘビ、か?一体で入り口がふさがり、後ろにあと何匹いるのか分からない。入って来ないのは、見えない壁に遮られているからみたいだ。これも結界なのか?


「この公園は誠に不思議だ。某らも全ての仕掛けを把握できておらん」


 組合員の誰かが結界を張ったんじゃないのか。この公園に元からある仕組みなのか。


「ちなみに、某とヨウコ殿、組合員のうち数名も公園から弾かれるぞ」


 え? 皆、普通に公園にいたじゃんか。


 俺の視線に若さんが笑み、手のひらに小さな巾着を出して見せてくれた。これ・・・螺旋の気配がする。


「螺旋のは弾かれない。それで、あれの一部を持つことで此処の仕掛けを誤魔化している」

 

 螺旋の一部って何だよ、と思ったが、じっくりみる前に巾着を仕舞われてしまった。教えるつもりはないらしい。若さんの口の端が上がっている。どうやら、俺のイラつきも面白がっているようだ。俺はおもしろくない。


「当代殿はそこから動くなよ」


 言われたわけでもないのに、足手まとい、と感じる自分が嫌だ。実際そうなのに、人から思われるのは不快に感じるなんて。いや、俺が勝手に思ってるだけで、でも本当の事で・・・あぁ、もう!頭わりぃな、俺。今は、とにかく迷惑かけないようにするぞ。


 俺が頭を振ってごちゃごちゃしたものを振り払おうとするところまで若さんは見ていて、微笑んでいたことを俺は知らない。




 ヘビと対峙した若さんの行動は、素早かった。「動かない敵はただの的」だそうだ。


 ぬらり、といろんな色を内包した大ヘビを見据えて、静かに刀を横一線。ばしゃあ、と袋の砂をぶちまけたように崩れるヘビの、後ろに見えた大きなカエルを踏み込んで縦一線。踏み込んで次にいた大ヘビは斜め斬り。とにかく滑らかに歩を進め、流れるように一刀して仕留めていく。止まることがない、・・・無駄がないんだな。俺は剣術なんて全く知らないけど、若さんの動きは美しいと思った。あっという間に公園までの道が空いた。




「他愛ない」


 そう言って刀を仕舞う若さんが、物足りなさそうに感じるのは気のせいか?相手が弱いのか強いのかも分からないうちに終わったし。





おおおおぉおぉぉおおおおおぉぉおぉぉぉぉん





 突然、空気が鳴った。耳が鳴る。圧倒的な質量をもつ気が、辺りを締める。・・・恐ろしい。何だよ、これ。膝がガクガクして立っているのがやっとだ。体の芯がジリジリ、ジリジリと震える。


「ああ、懐かしいな、この気配。からだが疼くわ」


 気に当てられて、また物騒な目をした若さんが言う。


 懐かしい? これが?


「・・ら、・・・螺旋は」


 喋るのもやっとの俺に、片眉を上げて笑む若さん。視線が普通に戻った。


「これでも口を利けるか、大したものだ。佐藤大地、殿」


「・・・っ、なんだよ・・・」


 この状態が大したものなわけないだろ。あんたのほうが凄いんだよ!


 変わらず体はビリついている。ついひねた視線を若さんに送ってしまった。彼は満面の笑みで「・・・騒ぎはじきに収まるだろうよ」と言った。


 もう、訳が分からない。分かっているなら教えてくれ。震える膝を叱咤して、若さんと並ぶ。目線が同じだ。



「ゆっくり知ればいい、焦るな」



 それより某も撫でろ、と兜を外した頭を差し出されて、聴きたいことが全部ふっとんだ。ほんとーに訳が分からない事だらけだ。






次は螺旋視点に戻ります。

そして今度こそ『疑似餌』終わる!はず。

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