エピソード6.
「お前、世良さんのこと好きなん?」
「...は?」
ある日の昼休み。コンビニの焼きそばパンの袋を開けながら西村が聞いてきた。
「なんでだよ。」
七瀬は動揺を隠すように弁当の蓋を開けて目を逸らした。
「いやぁ最近お前よく見てんじゃん。世良さんのこと。」
本当に椿を見る頻度が増えているというのなら、それは完全な無意識だった。
「お前の目は腐ってんのか?」
「俺のこの澄んだ眼をみろよ。」
西村は目を見開いてみせた。
そんな西村に見向きもせずに七瀬は自分のお弁当と向き合っていた。
「あーわかったわかった。」
そんな二人の元に一人の女子がやってきた。
「お二人さん何のお話ししてんのー?」
「クラスのマドンナが何の用だー?鏑木純恋さんよぉ」
西村はクラスみんな友達というタイプではないが、そこそこに人脈があるタイプだったので、クラスの人気者である純恋とも、そこそこに面識があった。
「いいやぁ?ちょぉっとうちのプリンセスの名前が聞こえた気がして?」
「はっそりゃ良い耳だ。」
「で、君たち狙ってんの?やめといた方がいいよぉ?」
椿はきっと、誰が告白してきても、付き合う気はない。たとえ好きな人であっても。
だから、多分、椿に恋するのは時間の無駄だと、私は知っている。
「狙ってんのはこっち。」
「は?ちげーよ。」
七瀬は西村が言った言葉をすぐさま訂正する。
そんな七瀬の言葉が聞こえていないかのように純恋は続けた。
「あらあら七瀬くん、うちの椿は手強いよー?」
「そう。」
「どこ行くんだよ。」
「図書室。」
どれだけ否定しても相手にされないのを悟ったのか、七瀬は弁当の蓋を閉め、席を立った。
七瀬が去った後も二人の話は続いた。
「早々に食べて逃げやがって。なあ純恋、あいつら付き合うと思うか?」
「.....まあ、両思いではあるだろうけど........」
確かに、七瀬君が最近椿を見ていることは多いと思う。それは私が椿と一緒にいて1番感じてる。
それに、椿が男子に話しかけに行くことはそうそうない。まだ本人が気づいていなかったとしても、両思いなことには違いない。
純恋は西村に聞かれて、最近の二人を振り返ってみた。
「まじで?」
「いや、でもだめ。あの二人が付き合うのは違う。」
椿には恋愛の他にやりたいことがある。きっと。それを私は応援したい。
「何だそれ、本人たちの自由だろ。」
「それはそうなんだけど。椿は....そういうのじゃない..とおもう......」
西村は、自信なさげに言った純恋の言葉に顔色を窺いながら、話を広げるのをやめた。
「ふぅん。そか。」




