エピソード3.
うちの学校には図書館が2つある。一つは創立当初からある図書館。もう一つは創立100年を記念して3年前に建てられた ガラス張りのおしゃれな図書館だ。
珍しく本が読みたい気分になり、二つの図書館を素通りして学校を出てすぐの書店に寄る。この書店は、ここら辺では1番大きく、二階建てで上の階は読書スペースになっている。
立ち読みをしている同じ制服の人の後ろを通り過ぎ、小説のコーナーに行くと先客がいた。
「世良さん、」
「七瀬くん、こんにちは。」
世良さんの手には既に2冊の本が積まれていた。『海月のコエ』『夜の花が咲く』そのタイトルに見覚えがあった。
「僕もその本読んだことあるよ。いい話だよね。」
「........」
世良さんは黙ってしまった。
間違えた。この世界は他人が入り込んではいけない、世良さんだけの世界だ。そう、僕は悟った。
「七瀬くん...」
その瞬間、嫌われたと思った。これほどまでに重い空気を世良さんから感じ取ったのは初めてだった。
「..........読んだら感想、聞いてくれる?」
そう声をかけられ、僕ははっとして脳みそをフル回転させた。そのくせ口から出た言葉は、
「ぁ.......う..ん...」
というそっけない返事だけだった。
世良さんは僕の返事を聞くと2冊の本を持って僕の前から去ってしまった。探していた本を諦めるほど、この空間は世良さんにとって居心地の悪い場所だったのかもしれない。
僕は、気になる背表紙の本を手に取る。
『甘い煙草屋』
表紙を開くと白紙のページが続いた。
なんとなく、この本が世良さんの探していた本な気がした。
一枚一枚ページをめくっていると、突然、手紙が挟まっているのに気づいた。
"この本を手に取ったあなたへ
この本の作者は、これまでこの本を手に取った読者たちです。
あなたの物語を聞かせてください。
垣瀬リナ"
そこには『海月のコエ』『夜の花が咲く』の作者の名が書かれていた。
ページをめくると、大きな字、小さな字、凛とした字、丸っこい字、カクカクした字など、そこに書かれた字を見ただけでも、この本の作者が1人ではないことがわかった。
僕はこの本の他に気になる本を見つけて2階に上がった。
スクールバッグのチャックを開けて筆箱を取り出す。シャーペンを手に持ち、本を開く。僕の手はすぐに言葉を綴り始めた。
"僕は———。"
さっきは驚いた。七瀬君があそこにいるだなんて。あの本はまた今度探そう。と思っていると、気になる本を見つけた。
私はこの本を買って、お店を出た。
今度七瀬君におすすめしてみよう。『海月のコエ』も『夜の花が咲く』も読んだ七瀬君ならきっと気に入るからと。
垣瀬リナ先生の『甘い煙草屋』を。




