エピソード10.
「あっそだそだ、西村くん、アイス何味がいい〜?」
「おっ、じゃあソーダで!」
「おっけー、買ってくるねん。」
七瀬が、アイスを買いに屋台に向かって走って行く純恋の姿を目で追いながら、ふと湧いた疑問を口にした。
「お前、何したんだよ。」
「教えると思うか〜?」
そうやりとりをしている間に、純恋が帰ってきた。
「はい!西村くん!」
「おーサンキュー。ほい。これ、お金。」
純恋からアイスを受け取った西村は、あらかじめ用意しておいたアイスの代金を純恋に手渡した。
「えっ、いやいやいやいや奢る約束だったじゃん。」
「買ってきてもらっただけで、十分気持ちは伝わったからな。」
「ひゃーかっこいいこと言っちゃって。んじゃもらっとくねん。」
純恋は、西村からお金を受け取り、すぐに前を向いて歩き始めた。
「あっ!焼きとうもろこし!買ってきていい?」
「あ、僕も....」
椿と二人きりになった西村は、特に表情が変わらない椿に話しかける。
「世良さん、世良さんは浴衣着ないの?」
話しかけられたことに驚いて少し目を開き、隣の少し背の高い男子の顔を見上げる。
椿は顔を元の位置に戻してから答えた。
「うん。」
会話の終わりが見えた西村は、急いで口を開いたが、それより少し先に、椿が話し始めた。
「..........純恋、可愛いよね。」
椿からの急な言葉に戸惑いながらも、西村は、椿に向いていた視線を純恋に切り替えた。
「...ま、たしかに?」
その一方、純恋はと言うと、一緒に焼きとうもろこしを買いに来た七瀬に話しかけていた。
「七瀬くんとうもろこし好きなの?私は大好き。」
「あー、お腹空いてたから。」
「え、ごめんそれ私が遅れたから何も食べれなかった系?」
珍しく純恋が申し訳なさそうにもじもじしている。
「いや、そんなことない。」
七瀬の否定の言葉が優しくて、純恋はつい顔を背けた。
「そっかぁ。焼きとうもろこし二つ!」
ちょうど屋台の前に来たので、純恋が焼きとうもろこしを二つ一気に注文する。
七瀬は慌ててお金を出す。
「ほい、どうぞ。」
「ありがとうございます!」
純恋が焼きとうもろこしを受け取り、七瀬に手渡した。
「とうもろこしってさぁ、食べ方むずくない?」
「え、.....うん。」
純恋は七瀬と少しでも話せて満足している一方、七瀬は助走無しで急に投げられる言葉達に戸惑いを隠せなかった。
「お待たせ〜!仲良くやってた?」
「うん。」「まあまあかな〜。」
椿が「うん。」と言ったことに西村が静かに反応した。
なにせ、自分としては、これまでにないほど会話が続かなかったのに、椿にとっては仲良くやっていたことになっていたからだ。
七瀬と西村の顔には戸惑いが残ったまま、純恋と椿はそんなことを気にも留めず歩いて行った。




