9/11
②
三日目の夜明け。
レオナルドの熱が、すっと引いた。
目の下に隈ができていた。徹夜だった。でも今はそんなことはどうでもいい。
「……エリーゼ」
初めて、名前を呼ばれた。
「はい」
「腹が……空いた」
固まった。
次の瞬間、立ち上がった。
「今すぐ作ります。何が食べたいですか」
「何でも」
「骨スープにします。腸壁を修復する効果があります。少し待っていてください」
小走りで厨房へ向かった。
(食欲が出た。腸が、動き始めた)
石段を駆け下りながら、胸の奥がじわりと熱くなるのを感じた。
(今度は——ちゃんと、間に合ってる)
泣くのは後だ。スープを作ってから泣く。
夜明けの光の中、エリーゼは塔の石段を全力で駆け下りた。




