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41継ぎ接ぎ知識のジェネレーションギャップ



「(視線を感じる)」

『…………前の人たち?』

「(多分)」


道すがら、いつもと同じように大通りを通って教会へ向かおうとしたところ妙な圧迫感を感じた

周囲に視線を向けず、できるだけ自然体になるように歩き、位置を教えてもらう


『ん…………カフェと、左上の二階の窓』

「(確か、二等星だっけ)」


そこにいたのは夜の星のクランメンバーであろうパーティーメンバー

こっそり確認した装備には特徴的な刺繍が施されており、二つの星が輝いている


「(偶然か?)」


俺が前回戦った集団よりも、さらに上の実力を持ったプレイヤー

どうも視線に敵意を感じる。いやまあ当たり前なんだろうけど


「……………………」


そのまま大通りを抜けて路地に入っても、特にこちらへついてくる気配はない

圧迫感が消え、ほっと一息つく


「(変だな。別の場所で偶然すれ違った時でもあそこまで強い視線を感じることは無かったのに)」

『…………なにかあった?』

「(うーん。何かしら事情が変わったのか、我慢が出来なくなったのか)」


実際レントさんが約束してくれたのはこちらの不当な扱いだけであって、普通に関わろうとする分まで縛ったりはしてないはず

となると


「(観測眼関連か?)」


錬金術で調べられないアイテムの詳細やモンスターのステータスという通常では知ることのできない情報を得られる魔法『ヴォ・ジャーチ』

新人戦で見たアヤノールというプレイヤーが持つイデアモンスターのフラグメント

プレイヤーには使えないと公言しているため、それがバレることを警戒しているのかも

何かしらトラブルが起きた場合、他のクランが接触してきて当時の話をされる困るからだ

なんなら俺は旅人、情報の確度はこっちが上

どうにかして釘でも刺したいのか


「(こっちはバラすメリット無いんだけどな)」

『…………そうなの?』

「(現状他のプレイヤーがシロを確認できる唯一の方法だ。変にトラブルが起きて使えなくなりましたじゃ困る。見えてたんだろ?)」

『うん』


向こうが警戒して厄介事持ってこないなら別に何も無いし、俺だってわざわざ敵対したいとは思わない

レントさんならギリ平和的な交渉は出来そうだが、夜の星全体が相手となるとちょっと難しい


「なーんでそっくりかなぁ……………………ん?」


路地の方で誰かいる

金髪のネカマプレイヤーにもう片方の緑混じりの赤髪の女性が何か棒のようなもの向けていてる


「(あれは、マイク?)」

「はい、それでは」

「ありがとうございました!……………………あ」


記者かなにかか

プレイヤーっぽいけど、わざわざこっちでやるなんて物好きだな

相手と別れこちらに気づいた瞬間小走りでこちらまで向かってくる


「すいませ~ん今お時間よろしいですか~?」

「よろしくないです。じゃあ」

「え…………あっちょっとぉ!」


片手を上げて断りのポーズを取り、驚く顔を横目に素通りしていく

記者の相手なんてしてられない、あいつらあること無いこと書き連ねるし


「お待ちッ…………おおっと!」

「うわっ?!」


背後から近づいてきた記者の手を辛うじて躱し、後ろに下がって距離を取る

相手はバランスを崩しかけるが何とか体勢を取り戻しこちらに向き直って訝し気な視線を向ける


「危ないじゃないですか!」

「そもそも飛び掛かってくんな。断っただろ、ほらシッシッ」

「いやいやいや、ちょっとお時間頂くだけなんで!ほんのちょっぴりだけなんで」

「うっわめんどくさい」


このやり取りだけで既に時間取ってるのがわからんのかコイツ

こういう手合いはしつこいんだよな


『……………………?』

「(いやまあ、あんま記者にいい思い出がなくてな……………………はぁ)」


取材だかなんだか知らないけど、付き合わされるこっちの身にもなって欲しい

ここから一時間、下手すれば二倍はかかる


「ちょっと何ですかその目は!私たちは安心安全をモットーに活動する組織ですよ!」

「…………言うだけならタダだよな」

「も~!ならこれを見てください!」


懐に手を入れた瞬間何が出るのかと警戒するが、出てきたのはプラスチックでできた手の平サイズのカード。目の前にウィンドウが表示される

所属クランを示すための証明書だ。偽物ならウィンドウは表示されないし、本物


「…………クラン報連相、相対部所属、ミテリア?」


クラン「報連相」

ゲームに関する攻略情報や世界観考察など、さまざまな情報を取り扱う情報屋クラン

いくつかのクランが合流することでできた、夜の星と似たような組織だ

組織は三つの部署に分かれ

情報を外部向けに調整して流布を行う「報道部」

情報の整理及び考察をする「連想部」

そして今目の前にいる奴が所属している、情報の収集や外部との連携を図る「相対部」がある


「プレイヤーなら一度くらいはお世話になったことがありますよね?だったら、ちょっとくらい取材を受けてくれたっていいじゃないですか」

「む…………」


実際報連相が作成したサイトや情報に頼ったこともあるので、それを言われると断り辛い

少し悩んだが、後のことを考えたら困るのはこっちだ


「…………わかった。だけど多分何も言えることは無いぞ?始めて一まだ週間くらいだし」

「いえ!ちょうどいいです。いま都市で起きてる連(・)続(・)殺(・)人(・)事(・)件(・)についてのお話ですから」

「殺人?」


かなり物騒な話が飛び出してきた

都市内で殺人

PKじゃ話題にならないだろうし、現地民か


「はい!既に五人もの被害者を出している一大事!巷ではネガキャンを繰り返す現地民に対する報復行為だと噂されていますが、貴方はどうお考えですか?」

「報復行為?…………ないだろ」

「ちなみにご理由は?」


そこまで複雑な理由じゃない

感覚的だし、根拠もあまりない


「ネガキャンがどういうものなのかわからないが、それで殺人をするってことは突発的な行動だと思うし、そんな馬鹿なやり方で五人も殺して聖騎士や他のプレイヤーから補足されていない時点でおかしいだろ」

「ほほう!では犯人は何か目的があり、計画的に犯行に及んでいると?」

「理由はわからないし、理解できないだろうけど。多分?」

「なるほどなるほど~」


そこからさらにいくつかの質問を答えていき、数十分程度

聞きたいことは終わったのか開いていたメモ帳を閉じて満足気な表情を浮かべる

思ったよりも時間が取られなくて安心していたのだが


「貴重なご意見ありがとうございました!あっ最後に写真を撮ってもよろしいですか?」

「えっ」


インベントリからカメラを取り出し、こちらへと向けてくる記者

咄嗟に顔を映さないように後ろを向く


「いや、ちょっと」

「え?どうして……………………ハッ!まさか、顔を撮られると困る理由が……………」

「待て!そういうのじゃない」


記者が何かを察したような顔をした後、警戒するような目線でじりじりと近づいて来る

カメラをしっかりと握り、身体を伸ばしたりしゃがんだりといった謎の動きを繰り返す


『……………………苦手?』

「(…………まあ、ちょっと)」


どうにかして断るための理由を探さないと


「…………えーっとほら、写真を撮られると魂が抜かれるっていうだろ。それが怖くて」

「いやいや、いつの時代の人ですか!ほら、ピースピース!」

「やめろって!悪いけど写真は無し、取材は終わりだ」


しつこく騒ぎ立てる記者を無視して歩き出し、その場を離れようとするが、記者はこちらの前に回り込もうと近づいてくる


「———フシュゥゥゥゥゥ……………………」

「写真一つで何をお気になさるのですか?単なるアバターの顔じゃないですかぁ?」

「別にいいだろ、こっちの勝手だ。ってかそのウザイ顔やめろ、というか近づくな」

『…………ヒカル』

「記者の勘が、貴方からスクープの予感を……………………あれ?」


今何か、変な音が


「「……………………」」


左側の通路。少し暗くて見えないその奥から何かが近づいてくる

重量感のある足音、大きな体格、灰色の体毛に丸太のような長い腕

上から見下ろすようにして輝いた、二つの双眸

そこにいたのは優に三メートルを超える、ゴリラのような見た目のモンスター


「——————————!!!!!」

「「ッッッ???!!!」」


そいつが雄叫びを上げようと身体をのけ反ったその瞬間、脳が理解を告げる前に、俺たちは一目散にその場から走り出した


「どういうことだよ!何で都市の中にモンスターが?!」

「知りませんよ!!こんなところにアッシュドエイプがいるなんて…………あっでもスクープスクープ」

「撮ってる場合かっ!!」


ビリビリとした圧迫感が背中を襲い、その後地面を叩くような足音が聞こえてきた

後ろ向きに走る記者がカメラを向けたその先には、都市にいるはずのないモンスター。両手両足を使った特徴的な走り方、だがその速度は恐ろしいほどまでに早かった


『…………後十秒』

「早すぎだろ!!…………クッソ!!」

「あっちょっと!それじゃ無茶ですよ!」


方向を転換、抜刀の構えで一気に駆け抜ける


「—————!!!」


迫るこちらに気づいたのか、こちらを叩き潰そうと右腕を振り上げ、勢いの乗った拳を叩きつけようとする、その瞬間


「『ウィンド』!!」


迫る拳を加速で走り抜ければ、背後をすり抜けた一撃が叩きつけられ地面を砕く

石片が周囲に飛び散るも、こちらは既に相手の足元へとたどり着いている

腕を前に出して前傾姿勢になった敵の胸元へ、飛び上がって木刀を引き抜く


「『断』!……………………ッ?!」


振り上げた木刀は確かに命中したものの、咄嗟に持ち上げられた左腕にガードされる

返ってくる感触に手ごたえは無い。相手はまるで微動だにせずノックバックも機能してないようだった

腕を振って吹き飛ばされるも、地面を擦りながら何とか着地。元の場所まで戻される


「効いてない…………?」

「当たり前ですよ!アッシュドエイプの体毛は高い物理耐性があるんですから!」

「耐性…………眼前を切り開け『ウィンドスラッシュ』!」


物理が効かないなら魔法をと、手から放たれた風の刃がアッシュドエイプの腕に命中する

しかし効果はほとんど無くほんの少しの傷が出来ただけだった


「魔法でもダメなのか…………」

「向こうは中層のモンスター!二節魔法じゃ威力不足です!」

「…………クソッ!」


よくわからないが今の俺じゃ勝てない

こちらが逃げ始めた瞬間、再び雄叫びを上げこちらへ走り出すモンスター

呪術ならある程度ダメージを稼げるかもしれないが、あの速さの相手に何度も当てる自信は無い


「(ルートは)」

『…………左』

「こっちだ!」

「えっちょ…………もう!」


シロに逃走ルートを示してもらいつつモンスターから逃げ続ける

角を何度も曲がり、巨体では通るのが難しい場所を選んで何とかしのぎ続ける


「ちょっと?!どこ向かってるんですか!」

「なんとか撒こうとしてんだよ!……………………げっ」

「…………あっ!!」


通路の向かい側からこちらに向かってくる人影が見えた

子供を抱えた女性で、さらにその後ろを大きな蜂型のモンスターが追いかけている


「灼針蜂!!マズいですよ!」


蜂が空中で動きを止め、女性に向かって針を構える

その身体から蜃気楼のような歪みが見えた後、それらが針へと収縮

白かった針が熱を持つようにオレンジ色に変化していく


「女性は頼む!通路は右側!その後左の階段を行け!」

「へ…………」


―——『越境』


魔法を使えば記者を吹き飛ばすため、アビリティを使って加速

石畳を蹴り砕き、右前の壁、そこからは魔法と併用してさらに前へ


「カウント1『マルティプルフィスト』!!」

「?!」


蜂の腹に拳を叩き込み、空中から弾き飛ばす

まだ生きているが攻撃を止められれば充分


「(シロ!)」


事前に頼んでおいたアイテムを開いた手の平でキャッチ、その内一つをアッシュドエイプの顔面に向かって投げつける


「???!!!」


それが当たった瞬間モンスターは身悶えるように顔を抑え、滅茶苦茶な動きを繰り返し周辺の壁や地面が破壊していく

臭い玉とかいう嗅覚の鋭い動物にはキツイ奴

間違って買った奴だが役に立ってよかった

記者は女性を確保して通路へ入った。後は


「もう一つ!」


今度は白い球を地面に投げると、それは当たった瞬間空気が放出される音と共に大量の煙が中から噴き出してくる

宿のポイントで交換した煙玉

そのまま煙の中を突き進んで二人を追いかける

最悪モンスター同士で喧嘩とかしてくれると助かるんだけど


「はぁ…………はぁ…………はぁ」

「大丈夫ですよ!直ぐに助けが来ますからね」


しばらく走り、階段を登り切った辺りで開けた場所に着く

噴水があり、都市を見渡せる展望台のような場所

女性は息も絶え絶えで、それでも子供を守るように抱き上げていた

彼女を介抱していた記者がこちらに気づいたのか近づいてくる


「そっちは大丈夫でしたか?!」


その質問に、再度周囲を確認

先程のモンスターは追ってくる気配もないし撒いたようだ

モンスターの殺気は読みづらいが、それでも特に問題は無さそうに見えた


「…………ああ。大丈———」

『避けて!!』

「?!」


シロの声で咄嗟に頭を下げると、頭上を何かが通り過ぎた

日の光に反射した、曲線を描いた刃

距離を取って確認すればそこにいたのは


「カマキリ?!」

「グリム・マンティス?!こんな奴まで…………」


昆虫特有の無機質な動きでこちらを見つめるその姿は、通常のカマキリとは色が違く周囲の建物に溶け込むような色をしている

しばらくにらみ合っていると、どういうわけか瞬きの合間にどこかへ消えていた


「消え…………た?」

『…………体色を変えてる』

「なんだそれ?!」


咄嗟に今いた場所に銃弾を撃ち込むが反応はない

昆虫の中には葉っぱのような見た目を取ることで外敵から身を守る個体もいるのは知っているが、移動しながら少しの違和感も無い擬態をするなんて、ふざけた生態をしている


「(…………わかるか?)」

『……………………目と耳だけじゃ、ちょっと…………ごめんなさい』

「(大丈夫だ。後ろを頼む)」

『うん』


周囲に警戒の目を向ける

シロのように空気の流れから隠れたモンスターの動きを認識するなんて芸当俺には無理

足音もしないし、索敵系のスキルがあれば話は別なんだが


「……………………」


記者の方に目を向ければ、女性を連れて壁際に避難している

外部に対応する役割である相対部なら少しは戦えるはず、防御手段くらいは持ってるだろう。少なくとも俺より知識は深いだろうし心配はいらなさそうだ


「……………………よし」


鞘へ武器を納め、銃をコッキング

鎌での攻撃は相手に引っ掛けて引き切るのが基本的

カマキリは相手を両手の鎌で押さえて捕食までがワンセット

先程は片刃での攻撃だったので両方扱ってくる可能性あり


『……………………両手!』

「—————!!」

「『ウィンド』!」


背後から来た攻撃を前方へ加速し回避、身体を捻って身体を反転しつつ背後を見る

地面に刺さった鎌を引き抜きつつ、また体色を変化させ消えていくカマキリ


「だったら…………!」


右手で魔法、左手で銃弾を、それぞれ斜め前に放ちカマキリの移動を一瞬だけ止めつつ前方へダッシュ

カマキリはこちらに走ってくる獲物に体色の変化を止め、真正面から迎撃の体勢を取る

タイミングは『任せて』


『—————!!」

「『ウィンド』」


挟み込むようにして両手を上から振り下ろされる鎌を加速で回避

それを見越して用意していたのか、開いた大顎がこちらに向かって伸びる

勢いに乗ったそれ、大きく開いた口元はまるで大型機械にすり潰されるかのような錯覚を与えてくる


『……………………今』

「『越境』!!」


シロの合図と共に全身にブレーキをかけ左手を前へと突き出す

手に持った銃が消え、俺とカマキリの間に巨大な物体が出現する

それは宿で購入した大型の盾、越境状態でも引きずるのが精一杯なそれをシロが俺に装備させ壁とする


「—————?!」

「ぐぅぅぅ!」


地面に突き刺さったそれは勢いよくカマキリの顔面に激突し、反動でカマキリがのけ反り俺も少なくないダメージを受けた

盾を消してもらい腕を伝うようにして身体を駆け上がり、越境込みの抜刀


「『断』!!」

「—————」


直撃したスキルがカマキリの頭部を吹き飛ばし、そのまま地面へと転がっていく

そのまま何度か痙攣した後、地面に伏せるように動かなくなり爆散、地面へと着地する

ドロップしたアイテムが表示されているが見ている余裕は無い


「はぁ、はぁ、はぁ……………………ふぅ」


危なかった

HPは二割未満。盾越しだってのにカマキリの一撃が重すぎる

全力出してこれじゃあシロみたいになるには全然遠すぎる


「まだまだ弱いな、俺……………………?」

『…………ヒカル!」


なん


「—————!!」


シロの声に反応し目だけで追った場所にいたのは、壁から飛び上がるようにしてこちらに向かってくる、もう一匹のカマキリ

この距離じゃどんなことをしても間に合わない

アビリティを使えば逆に死ぬ

身体は上手く動かない

激突するようにして迫る鎌が今、振り下ろされ―――



「———危ないですよ」



―——る前に、消えた



「…………え?」


そこにあるはずの鎌が影も形もない

いや、それどころか全身のパーツがいくつも無くなっていた

空中で制御を失い、地面に激突した後消えていく


「まったく、この程度の相手に苦戦するとは。あなたは本当に稀人なんですか?」


気づけば目の前に誰かが立っていた

手に持った剣を鞘に納め、こちらへと振り返る

胸元や膝といった重要な部分にのみ鎧を着た軽装に、見覚えのある白い服装を着た顔の良い茶髪の男性

こちらを覗き見る瞳には、呆れと失望が入り混じった視線が感じられる


「嘘!最速の騎士、エリック様?!」


記者の叫び声で現実に引き戻される

助かった、のか


「えっと…………ありがとう、ございます?」

「…………お気になさらず。都市に入り込んだ怪物を駆除するの当然のことです。どうやらもう周囲にはいないようですので、それでは」


そう言ってエリックと呼ばれた聖騎士は、まるでコマ送りをするように一瞬でその場から消え去っていった


「あっ!もういない?!せっかくのシャッターチャンス~」

「(……………………シロ)」

『…………うん』


俺にはまったく見えなかったが、一瞬であのカマキリを切り刻むなんて普通じゃない

どうなっているんだ?


「なぁ、聖騎士ってみんなあれくらい強いのか?」

「え?ああそうですよ。知らなかったんですか?」

「いや、まあ何というか」



―————ドゴォォォン!!!



「今度はなんだ?!」


音のする方を確認しようと展望台から都市を見渡して見ると、そこには眼を剥くような光景が広がっていた


「うおおおおおおおおお!!!」

「今さらこの程度ォ!」

「魔法部隊!全弾発射!」

「深追いはするな!路地から出てきた奴だけに集中しろ!!」

「ヒーラー!こっち頼む!」


都市の中、たくさんの人間がモンスターを殲滅している

稀人だけじゃない、現地民までもが


「……………………え?あれ?」

『???』

「うひゃ~みんな張り切ってますね~。まあ前に起きたことを考えれば仕方ないですよねぇ」

「な、なんで…………」

『?????』


俺とシロは二人揃って首を傾げるしかなかった

現地民のステータスはどんなに鍛えても十を超えることは無いはず、なのに


「オラオラオラァ!!次の奴はどいつだぁ!!」

「『フレイム』!!」

「『アルティメット―——』」

「全弾命中!次!」


大剣でイノシシを断ち切り、素早い狐型のモンスターに同じ速度で渡り合い、オークと力比べで打ち勝ち、馬のようなモンスターの攻撃を盾で受け止める

そこではごく当たり前のように、稀人と連携を取って並び立っている現地民の姿があった


「……………………」

「どうかしました?そんな口をあんぐり開けて」

「いや、なんというか。現地民強くね?」

「そりゃそうですよ、なんせ―――」


その先の言葉は、俺とシロを驚かせるのに十分なインパクトを持っていた


「現地民はみ~んな生まれつき、鍛(・)え(・)れ(・)ば(・)鍛(・)え(・)る(・)ほ(・)ど(・)ス(・)テ(・)ー(・)タ(・)ス(・)が(・)上(・)が(・)る(・)らしいですからね。稀人はお手軽ですけど、向こうは青天井ですよ」


鍛えれば鍛えるほど、ステータスが上がる。それはつまり


「(神の、か、ご…………?)」

『……………………』

「あっわたしあの人連れて行くんで先に失礼します。そちらもお気を付けて~」

「あ、ああ…………」


白の神獣が持つ、神聖騎士に与えられるはずの加護

記者の言い方からして、現地民は皆それを持っている。しかもそれが加護である自覚もないように思える

シロが力を失った時点、というより二世の狭間に行った時点で新しく加護を与える方法はなくなっているはず

どうなってるんだ?

そもそも加護の数は決まっているはず、これじゃまるで加護が複製されたみたいじゃ―――


「…………ん?」

『あ…………』


俺たちはぎこちなく動き、互いの顔を見合って心当たりに気づく

複製といえばそう、シロの能力


「もしかしてなんか、変な影響起きてる?」

『…………多分。でも身に覚え、ない』

「だよな」


変に知っていることがある所為で、逆に混乱してきた。頭の中がこんがらがる

俺たちは目の前の現実にただ唖然とするばかり

今一体どうなっているんだ?この世界



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