34命はあれど、天秤は釣り合わない、人はそれを運命と呼ぶ
「へぇ~七大ギルド…………そんな感じなんですね」
「旅人ギルドはそんなにだけど~他のみんなは頑張ってるね~」
ジョブと同じ数だけ種類が存在するギルド、通称七大ギルド
ランキングが存在し、シーズン毎の貢献度によってそれらを統括する中央ギルドから豪華な報酬が貰える
自身の所属は、それぞれのギルドでのクエスト受注率がそのシーズンでトップの場所で判断され、ギルドカードによって不正はできないようになっている
ちなみに報酬はギルド毎で種類が異なるらしい
戦士なら武器や防具、錬金術師なら貴重なアイテムといった具合
「今のトップは戦士ギルドですか」
「討伐系は基本そっちだし~『緑』は取ってる人が一番多いから~」
「まあ戦闘するってなると、どうしてもリソース管理が大変ですからね」
ランキングでの結果に応じて、そのギルドマスターも中央での権限が増えるようで、所属する者や、貢献度を増やさせるため、報酬に金銭や立場なんかを与えたりして工夫を凝らしているが、稀人は『緑』を一個でも取るって人が圧倒的に多い
スキルは汎用性が高いし、コストもあまりかからないからだ
「わたしは~あんまりランキング争いとか好きじゃないけどね~」
「だから旅人ギルドにいるんですか?」
「そういうこと~」
ランキング争いをするってことは、やっぱりどうしてもいざこざはある
旅人ギルドは常にランキング最下位
ギルドマスターは顔を見せたことないし、積極的に行動しない
なんならギルドマスター同士の会合で、勝手にやってろ、と書いた紙を送り付けたくらいだ
そういうわけで旅人ギルドは、あんまり本気で争いたくない、静かにプレイしたい、いわゆるエンジョイ勢が集まる場所となっている
「わたしとしては~可愛い恰好するだけで充分だもん。ど~?似合うでしょ~?」
「はい、良く似合ってると思いますよ」
「そ~?やっぱり~?」
可愛らしくポーズを決めたミルラ先輩
計算しつくされた動き、これはかなり勉強している
『……………………これが、女子力…………私、男の人に、負けてる…………』
意外とそういうとこ気にするのな
シロはああいうのよりも、今の方が全然いいと思うぞ俺は
『………………………………そう?』
「(ああ)」
それ以上は思考にストップをかけミルラ先輩に質問する
「そういえば、ミルラ先輩ってどういう戦闘スタイルなんですか?戦士ギルドに行くってことはスキルは持ってるんでしょうけど」
「気になる~?でもちょっと恥ずかしいしな~」
「どうかお願いしますよ。先輩がどういう風に戦うのか、後輩としてはやっぱり気になるものなので」
「仕方ないな~」
そう言って、ミルラ先輩は右手に武器を出現させる
掴んだ瞬間、重量感を感じさせるように手首が下にやや動く
サイズはやや小さく、俺の持っているものよりもコンパクト
ピンク色に塗装してあるが、その存在感を緩和することは出来ていない
そう、拳銃である
「ばきゅーん♪…………なんちゃって。どう?」
「いいですね、凄く様になっていますし。もしかして先輩って結構強いんですか?」
「…………そんなことないよ~えへへ~」
そう、凄く様になっている
体幹はしっかりしてるし、足は少し開いている
取り出してから安全装置解除、構えるまでのスピードは凄く滑らか、トリガーにも指をかけていない
一瞬見えた真剣な眼差しは凄くかっこよかった
「ほら~見えてきたよ~。早く行こ~」
「あっミルラ先輩、待ってくださいよ」
武器をしまい込んだミルラ先輩が、ギルドの方へと足早に向かっていく
最初はちょっと怪しいし、他プレイヤーの反応から姫プレイの人かと思ったけど、色々と教えてくれるし、本当にただ助けようとしてくれてるだけのいい人みたいだ
「ほらほら~こっちこっち~」
意外と他プレイヤーって、いい人が多いのかな
ーーーーーーーーーー
「(バカな奴)」
後ろから追いかけてくる新人モドキを見ながら、オレはそう思った
あの鞘は一見普通のように見せかけているが、一瞬浮いていたのを見逃したりはしない
追従するようなタイプの武装はかなりのレアアイテム
こっそり確認していたが、今更ギルドカードを作っているところを見るに、大方ひたすら自己研鑽に励んで他の情報をまったく見ない情弱タイプ
可愛い恰好して、ちょっと優しくしただけでこっちに対する警戒心を簡単に解いちまう
男ってのはみんなそんな奴ばっかりだ
「(せいぜい稼がせてもらうぜ。ハハハ)」
素材なんかはため込んでるだろうし、こっちは今まで大量のプレイヤーを堕としてきたんだ、他の奴らと同じようにオレに渡させる
「(とはいえ、だ。こっちも気を付けねぇと)」
てっきり最初の反応から女に慣れていないような奴だと思っていたが、意外とガードが堅い
可愛いポーズも会話も、普通に対応してきやがる
後ろを見れば、警戒心の全く無さそうなのほほんとした顔
だが、下手を打てばバレる
「(……………………いいじゃねぇか。最近はあんまり手ごたえが無くてつまらなかったところだ)」
絶対に堕としてやる
ーーーーーーーーーー
追いついた時には、既にギルドの前
戦士ギルドは、何というか神社のような装飾が散見していて、しめ縄とか、緑色の鳥居なんかがあった
出入口は何故か二種類あって、一つは普通の正面入り口、もう一つは地下へと続く階段となっていた
「ギルドの登録はこっちの正面入り口だけど~。どうする?一緒に行く~?」
「大丈夫ですよ。登録したら直ぐに行きます」
「そっか~じゃあ待ってるね~」
ミルラ先輩はそう言って地下への階段を鼻歌を奏でながら下りて行く
その歩みはステップ交じりで、アップにした髪がぴょんぴょんと跳ねている
向こうはスキル習得場へ行ける直通路だ
俺が正面入り口の前に立った辺りでシロが
『…………?…………なんか変な音聞こえる』
あーまあ見ればわかる
木製の引き戸を開いて入れば、中を確認できる
そのまま真っ直ぐ歩けば受付で、左奥へ行けば訓練場、右奥に行けばスキル習得場だ
他プレイヤーの様子は
「ふんっ!ハァア!!」
「……………………」
「高天原に神留り坐ます、皇親神漏岐、神漏美の命以ちて……………………」
「ウケケケケケケ!!」
「うおおおおおおおおおおおおお???!!!」
うーんカオス
まあ気にしてもしょうがないので受付へ
そこには今にも倒れそうなほど顔色の悪い男性職員が立っていた
「すいません。登録をお願いします」
「……………………えっ、あっはいわかりました!お預かりします!」
声をかけても反応が遅れている、目元のクマが結構ヤバい
心配になって声をかけてみると
「その、すみません。最近夢見が悪くてですね……………………」
「あー……………………なんかすみません」
背後には今も存在感を発し続けるプレイヤーの奇行が見なくても伝わってくる
まあこんなのずっと見てたら気が狂ってもおかしくない
「あ、貴方もする気なんですか…………?」
「いやいや、大丈夫です。流石に」
「そうですか、安心しました……………………少々お待ちを」
職員が後ろにある機械でカードに刻印を刻み始めた
待合の椅子に座っていると、シロが何とも言えない困惑した様子で話しかけてきた
『……………………ヒカル、ナニあれ』
ああ、あれ?確か土下座教
神様に土下座して運気を上げるんだって
スライディングタイプもある
『…………あっちは』
あれは逆立ちして人差し指に運気を集中してるらしい
指一本だけの逆立ちはバランス感覚が大事でかなり難易度が高く、色んな意味で上級者向けだ
『……………………そっちは』
あれは触媒とかお供え物を捧げるタイプ
地面に魔法陣書くとかあるけど、あれは布に描いてどこでもできるよう工夫してるっぽい
『…………………………………………』
後は踊ったり、回転したり、奇声を上げたり、正拳突きしたり、事前に運要素のあるもので大成功してからくる人とか色々なアプローチがあるが、実際の場所じゃ禁止されているからここでやってるみたいだ
『……………………私がいない間に…………変な宗教が、いっぱい…………』
『(稀人だけだから心配するな)』
運要素が絡むと、人はどうしても変な方向に向かってしまう
例えそれが眉唾物であってしまっても
『……………………』
相当ショックな光景だったのか、シロが膝を抱えてプカプカ浮き始めた
微妙に震えている
「(なんか、すまん)」
しばらくして受付からカードを受け取る
刻印は、狐火のようなものを背後に剣を置いた形
右奥の通路を抜け、目的の場所へ
「広いな」
出た場所は、かなり広い円柱状の吹き抜け空間
天井はガラス製で空からの光が全体を照らしている
覗き込めば三十メートルほどの高さで、そこには地下空間が広がっている
中央には巨大な石にしめ縄を巻いた要石のようなものが鎮座されており、空の光がそれに降り注ぎ、神秘的な空間を作り出している
「下への階段は…………あれか」
円柱に沿うような階段を下り、地下まで着く
要石に近づけば、何人ものプレイヤーとすれ違い、その様子が伝わってくる
「よっしっ!!『両利き』ゲットォ!!」
「出ねぇぇぇぇぇぇ!」
「あぁ……………………」
「1だけ、足りない……………………ガクッ」
「おお、大吉」
調子の良さそうに帰るものと、肩を落として項垂れるもの
嘆きと喜びが入り混じった叫び声たち
神秘的な空間とは真逆の、人の欲が渦巻く様相
要石の前にある、緑色の鳥居にかかった横長の額には、日本語で大きくこう書かれていた
『……………………スキルガチャ大明神?』
「(そう)」
まあガチャと言ってもそこまでじゃない、運要素が強いってだけ
この鳥居は運を少しでも高めようとプレイヤーが用意したものだ
「ミルラ先輩は…………いた」
要石から少し離れた場所で他のプレイヤーと談笑している
邪魔するのもあれだし、先に習得を済ませておこう
『……………………どうやるの?』
「(まあ見ててくれ)」
要石に触れると、他プレイヤーには見えない特殊なウィンドウが表示され、画面には『今日の運勢は?』という文字
それをタップするとおみくじのようなものが現れ結果が出る
「大凶…………まあそれはいいとして」
その次に表示されたもの
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所持SP:5404
『リダクションスロウ』120SP
『マルティプルフィスト』600SP
『風魔法影響力軽減』800SP
『スーパーアルティメットオーバーストライク』10000SP
『抜刀術』1000SP
リロール 10SP
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この要石に触れると、今までの自分の行動に見合ったスキルがランダムに五種類表示され、SPを消費することで習得ができる
SPは戦闘を繰り返す毎に獲得でき、獲得量は『緑』のフラグメントによって変わる
俺のSPが結構あるのは二世の狭間にいたからで、かなりズルしているようにも感じるが特に没収されたりとかはなかった
『……………………知らないのもある』
「(まあシロの時代からかなり時間が経ってるし、異質スキルを売却した奴もあるだろうからな)」
スキルは進化するし、異質スキルは売却できる
売却した異質スキルは他の人でも習得できるようになり、通常のスキルと同じように進化が可能となる
とはいえ売却した本人は二度と習得できないので、相性が悪いとか、そういうのが無ければ売却とかはしないだろう、俺も売る気は無いし
リストの一番上のスキルをタップして、詳細を確認
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・『リダクションスロウ』
分類:スキル
投擲時に発動可能
投擲したアイテムの重量を減少させる
習得しますか? YES/NO
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「ハズレ」
重量が下がるってことは威力も落ちるということ
真っ直ぐ飛ばすとか、明らかに重すぎるものを投げるなら使うかもしれない
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・『マルティプルフィスト』
分類:スキル
拳攻撃時、1~10のいずれかを宣言して発動可能
ヒット数が宣言した数に変化し、威力がそれぞれに割り振られる
習得しますか? YES/NO
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10を宣言して発動すると、10回ヒットするがそれぞれ一発の威力が十分の一になる
1を宣言すれば普通に殴るスキルになるため、場合によって使い分けることができる
これは習得しよう
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・『風魔法影響力軽減』
分類:スキル(パッシブ)
風魔法によって発生する影響力を軽減する
習得しますか? YES/NO
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影響力ってことはダメージだけじゃなくて受けるノックバックも下がるだろうから、これを習得すると困ったことになる
なし。自動で効果を発揮するパッシブとかじゃなければ便利なんだが
問題は次の奴だ
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・『スーパーアルティメットオーバーストライク』
分類:スキル
それは大いなる究極となりて、汝のすべてを解放する
放て!!必滅の一撃を!!
習得しますか? YES/NO
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「……………………」
『……………………』
多分『ストライク』っていう基本的な奴の異質スキルなんだろうけど、どう使ったらこんなふざけた名前になるのか
詳細がわからないのでどんな性能なのかもわからない
というか値段が10000SPでそもそも習得できない
なんかシロも微妙な顔してるし
次で最後
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・『抜刀術』
分類:スキル(パッシブ)
刀武器を抜刀時、三秒以内に発動したスキルのダメージが上昇する
習得しますか? YES/NO
※習得時六種類から一つ選び刀系スキルを習得します
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効果自体はシンプルだが汎用性が高い、スキルダメージならなんでも上がるので普通に斬る『スラッシュ』とか、叩きつける『ストライク』といったものでも問題はない。なんなら抜刀しながら蹴り技とか使ってもなぜか上がる
それよりも、重要なのはセットで付いてくる刀系スキルだ
習得すると、リストの内容が変化する
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所持SP:3804
・『断』0SP
・『延』0SP
・『練』0SP
・『迅』0SP
・『堅』0SP
・『因』0SP
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『抜刀術』経由で習得できるスキルは一応普通に習得することもできるが、リストに入るまでかなり時間がかかる
その点、『抜刀術』は鞘を持ってるだけでリストに追加されるのでかなり便利だ
本来の値段は800SPで、威力もその分ある、元々全て持っていた場合、800SPが返ってくる
ちなみに、他人から鞘だけ借りて『抜刀術』を習得するとかはできない
『…………どれにするの?』
選ぶスキルはもう決めてある
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・『断』
分類:スキル
刀武器装備時使用可能
命中時STRに応じたダメージを与える
『抜刀術』効果中さらにSTRの半分に応じたノックバック効果を与える
習得しますか? YES/NO
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火力を出すにはやっぱりSTR重視、何より呪術を使うのに合わせられる
『剪涕の離罰』は命中から効果を発揮するまでに微妙に間があるので、その隙を補うためにもノックバック効果を持っている『断』がちょうどいい
「こんな感じか」
リロールもできるけど一回毎に値段が倍になっていき、しかもずっとそのまま
毎日リロール回数が一回無料で貰えるし、保持し続けられるので、そこまで焦ってリロールする必要もないだろう
ウィンドウを閉じてミルラ先輩の方へ向かうと、今度は二人組の男性となにやら話し込んでいた
「ほらほら~泣かないの~」
「ほんっっとにありがとうございますぅぅぅぅ!!」
「お前、もう少し落ち着けって」
男性が手に可愛く装飾された透明な包みを持ちながら泣いており、相方がそれを慰めながら離れていく
手を振っているミルラ先輩に近づいて声をかけた
「ミルラ先輩?」
「あ~ヒカルく~ん?ど~?良いの手に入った~?」
「ああはい。『抜刀術』が」
「ほんとに~?!やったね~!」
にこやかに笑い、まるで自分のことのように喜ぶミルラ先輩
「ミルラ先輩の方は?」
「わたしは全然ダメ~。パッシブばっかり~。元々魔法使いだったし~」
「ああ、なるほど」
リストの内容は今までの行動によって変わる
別のビルドを組んでいだが、途中で方針転換などをすると今は使わないスキルがリストに出てしまう時がある
スキルをメインに使う場合、もしものことが無い場合スタイルは一つのことに絞った方がいい
パッシブなんかはずっと残ってしまうし、下手するとスタイルを変える前より弱くなってしまう
フラグメントを全て『緑』にしているのならまた話は違ってくるのだが
「あの、ちなみにさっきのは?」
「あ~あれ~?」
気になったのは先程の二人組
一体なぜ泣いていたのか
「前にお世話になって~今日が誕生日だから~プレゼントあげたんだ~」
「ああ、それで」
「手作りのバームクーヘン~前に好きだって言ってたから~」
なるほど、傍から見たら可愛い女の子の手作りお菓子を貰ったんだ、だからあんなに泣いて喜んでいたのか
「ほら~そろそろ行こ~」
「ああはい、わかりました」
周囲では、今日も今日とて運に翻弄されるプレイヤーが多数存在している
ミルラ先輩はなんて事の無い様子で歩き出し、俺も付いていく
そうして戦士ギルドを出て、依頼人が待つお店へと向かうことにした
『…………………………………………いい?』
「(わかった、今度作ってやるから)」
バームクーヘンな
玉子焼き用のフライパンとか、宿にあったかな




