33人は案外見た目によらない
朝
いくつか用事を済ませた後、ログイン
目を開くと、シロが上からこちらを覗き込んでいた
『…………起きた』
「……………………どうした?」
『…………見てた』
「何を」
『ヒカル』
「そうか……………………?」
起き上がって、気づく
ログアウトする前と部屋の様子が違う
ベットと箱のようなもの以外に何も無かった部屋に、いくつもの家具が置かれ賑やかな内装に様変わりしていた
「あれ?…………シロ?」
『……………うん、どう?』
「いや、いいんだけど…………俺がログアウトしてる時でも動けるのか?」
『…………うーん…………多分、ここだけ…………ヒカルの身体残ってたから』
通常ログアウト中、プレイヤーの身体は消えてるはずなんだけど、ここじゃ例外なのか
シロが自由に動けるのはいいことなんだけど
「…………まあ誰かが入ってこれるとは思えないし、別にいいか」
ベットから降りて内装を確認する
気になっているのは元々あった箱、開けようとして触れた瞬間ウィンドウが出現する
「これ、アイテムボックスか」
『…………結構入る』
アイテムを異空間に収納できる、設置型で収納の多いインベントリのようなもの
インベントリを確認すると、ほとんどのアイテムが既にボックスの中に入っていた
シロが整理してくれていたらしく、ありがたい
「回復薬とか銃弾とか買わないとなぁ」
手持ちの消費アイテムが何も無い
聖地での戦いで全て使い尽くしてしまった
『…………ヒカル』
「ん?」
『…………どうする?』
「どうするって…………まあ」
目的か
本当は家でも買うためにお金を貯めようかと考えていたが、シロが神獣だったってわかったからにはそうとも言ってられなくなった
「神の意思が、どういうものなのか」
世界に神獣を遣わした神が、どうして白の神獣にあんな命令を与えていたのか
大地から溢れ出した怪物たち
七つの封印
世界の果て
「それを、調べてみたい」
そのためにも、本筋を追いかけたい
『…………それは、私も当事者として、ちゃんと知りたい』
「シロ」
『…………一緒に…………いい?』
「ああ、一緒に」
俺だけじゃなくて、シロの考えも合わされば色々とわかるようになる筈だ
アイテムボックスを閉じ、大きく伸びをして気持ちを切り替える
「って言っても、何をどうしたらいいのかわからないんだよなぁ」
『……………………うーん』
一回軽く調べたけど、神に関する情報はまったく無い
他プレイヤーもその辺り愚痴ってたし、現状ばらまかれた神の欠片の場所疑惑であるスポットを攻略することを主にしているらしいが、あんまり上手くいっていないみたいだ
『…………朝ごはん、食べよ?』
「……………………だな」
悩んでもしかたない
まずは自分の強化から始めよう
何をするにも強ければ大体なんとかなる筈
『…………私が作る』
「そういやここでならできるのか。ならキッチン借りないと」
扉を開け、宿のエントランスへ
そこにはリュートさんが一人、カウンターに立ってグラスを磨いていた
「おはようございます、ヒカル様」
「えっと、おはようございます」
「少しお話があるのですが、よろしいでしょうか。昨日伝えそびれてしまいまして」
話か
俺のほうも聞きたいことあったしちょうどいいや
「それは大丈夫ですけどその前に、キッチン借りても大丈夫ですか?シロが使うんですけど…………」
「キッチンを?……………………ふむ」
そう言うと、グラスを磨くリュートさんの手が止まった
視線がこちらを貫き、少し思案した後
「爆発物のようなものを持ち込まなければ、問題はございません」
「え、っとー…………まあはい、もちろん」
誰だよキッチンに爆発物持ち込んだの
テオさんか
『…………じゃあ』
「ああ、よろしく」
リュートさんの視線がシロを追いかけ、キッチンに入った後こちらへ視線を戻す
「あのリュートさん、どうやってシロを確認しているんですか?」
「?…………ああいえ、違いますね」
「え?でも今確かに…………」
見てたよな?
俺が違和感を感じていると答えが返ってきた
「私はこの宿の管理人ですので、宿に関することは全て把握しています」
「なる、ほど。じゃあテオさんは」
「あれは勘です」
「勘」
マジかよあの人
じゃあシロを他の人が確認する方法は現状無いと
「それでヒカル様、お聞きしたいことが」
「ああはい、わかりました」
そう言うとリュートさんは両手の人差し指を動かしながら長方形の形を描く
「このような形で、茶色い紙製のものをお持ちではないでしょうか」
「茶色い紙製…………」
そんなもの持ってたっけ?
記憶を掘り起こしても答えは出ない
「ヒカル様は稀人であるようですので、この世界に来られた時、何か手渡される手筈とギルドの方で報告が上がっていたのですが」
「ギルド……………………ああ!あの茶封筒ですか」
そういえば初期エリアを抜けた後最初に名前を書いたのを思い出した
感覚的にはかなり前のことなのですっかり忘れていた
インベントリを開いて底の底、一番下に入っていた
「これですか?」
「はい。お渡しして頂けますか」
「えっと、それはいいんですけど何に使うんですか?」
一応ギルドに渡せって言われてたんだけど
「ヒカル様はギルドカードを所持していらっしゃらなかったご様子ですので、こちらで必要書類をご用意させていただこうかと」
「必要書類」
「それがあれば、ある程度の手間は省けるかと」
「ありがとう、ございます?」
「はい……………………では、少々お待ちください」
よくわからないが手間が省けるのならいいか、向こうも深く話すつもりは無いみたいだし
リュートさんは封筒を受け取ると中身を確認し、そのまま別の部屋へ行ってしまった
「……………………ヒマだしちょっと何売ってるのか見てみようか」
誰もいなくなったエントランスで何をするわけでもなく
昨日説明された販売機の方へ
タッチパネルを操作すれば、アイテムのリストが表示され、それぞれの値段が見て取れる
「…………装備はあんまり売ってないのか……………………消費アイテム全般…………聖水まであるのか……………………銃弾売ってる」
だいだいのお店で売っているものがラインナップに並んでいた
コールとポイントの変換効率は50:1
つまりポイントを全てコールに変えた場合
「四十四万コール……………………」
今の所持金と合わせると七十万はある
多いのか、少ないのか、正直よくわからん
コールをポイントに戻す方法は無いので流石に変換はなし
「銃弾、回復薬、くらいしか買うものないな」
値段は少し店売りより高いくらい
食料、変な猫耳、デカすぎて持つことが不可能そうな盾、煙幕を発生させる珠、他にも色々あるが興味を引きそうなものはなかった
「ちょっとしたボーナス程度」
実質タダでアイテムが手に入るし、消耗品にかかる費用が削減されるのはいいことか
まあ旅の補助って名目だし食料とかがメインなのかもしれない
「……………………えっ!魔法書売ってるのか!」
スクロールを続ける中、眼に入ったそれを即購入
インベントリに風の四節魔法の書が入った
値段は750ポイント
普通に買うよりは安い
「今の内に解いておこう」
早速を開いて使ってみる
ウィンドウが表示され、そこに映し出されたのは四×四のライツアウト
ボタンを押すとその上下左右の光が消灯、または点灯し、全て点灯させればクリアのパズルゲームである
『……………………(なにそれ?)』
「魔法を習得するためにはパズルを解かないといけないんだよ」
基本的に魔法は一から十二節まであるが、四以降は魔法書を使用する必要がある
使うと使用者に合わせた難易度のパズルが表示され、解くことが出来ればその魔法を習得できる
『…………(他の属性も覚えられるの?)』
「一応、できるらしいけど」
新しく他の魔法を習得する場合、パズルの難易度が急激に跳ね上がる仕様のため習得するのに良くて一ヶ月、悪ければその倍は時間がかかるらしい
「仮にできたとしても今度はMPが足りなくなるからな」
赤のフラグメント一つにつき最大MPが50増えるが、俺は一つなので100
それにどれだけ覚えても俺の場合十節から上は無理だ
風の十節魔法の消費MPは91、十一は111だ
どうやったって撃てない
『テイルウィンドを習得しました』
「……………………よし」
そうこうしている内にパズルを解き終わった
メニューを開く
ちょうどいいし、自分の方針を考えるためにも色々と再確認しておこうか
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NAME:ヒカル
JOB:『旅人』
所持金:305809コール
HP(体力):100/100
MP(魔力):100/100
EP(燃料):200/200
SP(霊気):5404
STR(筋力):20
MAG(魔法干渉域):20
DEX(器用):28
AGI(敏捷):20
VIT(耐久):24
LUC(幸運):20
装備
右手:至不の木刀 付:【死の踏駆音】
左手:機構式TOS斥力銃
頭:飾り紐の髪留め 付:友好の願い鈴
胴:巡遊の旅装
右腕:皮籠手 付:揺らめく篝火の指輪
左腕:皮籠手
腰:巡回の旅装
脚:行脚のブーツ
[魔法]
『風魔法』
→ウィンド 1MP
→ウィンドスラッシュ 3MP
→ダウンバースト 7MP
→テイルウィンド 13MP(30s+1)
[機構]
『斥力機構』
『背追機構』
[スキル]
『全進壮来』⇄『緩去全戻』
[ability]:『越境』
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上から順に
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・至不の木刀
種別:刀
呪いによって本来の姿から変質した姿
二つの呪いを内包している
さらにもう一つ呪いが込められている
『不渡の呪い』『不滅の呪い』『剪涕の離罰』
『不渡の呪い』
世を呪う災いの一つ
それは決して離れることはなく
舞い戻りいつか帰ることを願っている
装備欄を外れてから三十秒後、または別の武器を装備しようとした場合、即座にこの武器を元の装備欄に装備する
『不滅の呪い』
世を呪う災いの一つ
それは決して滅びることはなく
あらゆるものを飲み込みいつか返り咲くことを願っている
一定時間耐久値が減少状態または耐久値がゼロになった場合、装備者の消費可能な数値を減少させ耐久値を最大まで回復する
『剪涕の離罰』
世界を呪う災いの一つ
それは恨んでいる
それは忘れてなどいない
それはすべてに罰を与えることを願っている
……………………どうして?
武器に接触していない状態で発動文を唱えた後、再度武器に接触することで発動可能となる
発動後、この武器でのダメージに加え基礎ステータスに応じた追加ダメージを与える
コスト HP10%
発動文
夢想 差し込む木漏れ日 安寧の日々 眠る『私』 永遠の楽園 されど汝 咎を刻む
・【死の踏駆音】
種別:武器アクセサリー
使用条件:なし
M:『背追機構』
ハイドラッカーが持つ『青』のフラグメント
付ける武器に合わせた収納具を出現させるストラップ型アクセサリー
浮遊位置は事前に設定可能
『背追機構』
周囲の目視可能な生物を目標に指定句を唱えることで対象を設定
対象を機構所有者が追跡する距離に応じてストックを獲得
発動句を唱えた後ストックを全て消費し、収納具から取り出した武器で行う次の攻撃の威力を上昇させる
ストック獲得距離:五メートルにつき一つ
威力上昇倍率:一ストックにつき一%上昇
対象指定句:ロック
効果発動句:セット EP50%消費
※この機構は仕様により取り外すことはできません
・機構式TOS斥力銃
種別:拳銃
使用条件:権限レベル1以上
M:『斥力機構』
機構によって銃弾を発射するよう設計された特殊な高威力拳銃
一発の消費EPが高く、さらに反動が無いため自動コッキングが不可能となっている
『斥力機構』
EPを消費し物体を押す力を発生させるプログラム
消費EP15
※この機構は仕様により取り外すことはできません
・飾り紐の髪留め
種別:頭装備
髪を結うための紐状の髪留め
・友好の願い鈴
種別:アクセサリー
教会の聖女から渡された、音の鳴らない真っ白な鈴
装備時精神異常耐性が上昇する
・巡遊の旅装
種別:胴装備
旅人が纏う伝統的な装い
補助VIT+0.2
・皮籠手
種別:腕装備
手を守るためのもの
特に効果はない
・揺らめく篝火の指輪
種別:腕部アクセサリー
表面に炎のデザインがされた鉄製リング
呪いを帯びている
補助DEX+0.2
『滞留の呪い』
世を呪う災いの一つ
それはただ押し留め
全てがそこにあり続けることを願っている
装備者の魔法命中時威力がMAG範囲内に応じた補正を得る
MAG:1~20% 50%上昇
MAG:21~50% 変動なし
MAG:51~100% 50%減少
・巡回の旅装
種別:腰
旅人が纏う伝統的な装い
補助DEX+0.2
・行脚のブーツ
種別:脚装備
旅人が纏う伝統的な装い
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「うーん」
やっぱり目下の目標は装備を整えること
木刀握って戦う以上、STRは上げたい
『越境』もあるけど、どうしたって長期戦には不向きだ
アプデ中にいろいろと調べたりしたけど、フラグメントを特化する方がやっぱり火力が出る
分化させれば可能性は増えるが、どうしても取っ散らかる
「ヒカル様」
「あっ終わりました?」
「はい。こちらをどうぞ」
リュートさんが戻ってきて、封筒を手渡してくれる
少し厚みが増したくらいか
「そういえば、外に出る場合ってどうすれば?」
「それでしたら、エントランスに入る時と同じように鍵を回していただければ。ちなみに初めての場合は旅人ギルドへ繋がっておりますが、それ以降は元の扉へ出ます」
最初は変な扉から入ったからか
「最後に」
「?」
「一応この宿もギルドという形を取っていますので、もしかすればヒカル様にも指名依頼という形でご協力いただくことがあるかもしれません。よろしいでしょうか」
そうか
ただまあ間借りする立場ではあるししょうがないか
「わかりました、その時はいつでも」
ーーーーーーーーーー
朝食を取った後、宿を出る
鍵を二度回して扉を抜ければ、そこはどこかの施設内
多くの人が行きかい、他プレイヤーや現地民が思い思いに過ごしている
マップを開けば場所は央都の旅人ギルドとなっている
『…………人がいっぱい』
「これでも少ない方らしいけど…………」
取り合えずギルドカードを作ってもらうために受付へ
ギルドの制服を着た女性に話しかける
「何か御用でしょうか」
「知り合いにここでもギルドカードを作ってもらえると聞いたんですけど、大丈夫ですか?」
「……………………かしこまりました。では書類の提出をお願いします」
一瞬凄い面倒くさそうな顔をしてたけど大丈夫なんだろうか
書類を手渡し、内容物を確認する受付の人
「えっ?!」
突然大声を上げ、周囲の人の視線が集まってくる
それに気づいたのか何でもないように振舞った後、書類とこちらを何度も見比べては困惑の表情を浮かべている
「あの…………」
「はい?」
「『裏』からの?」
「…………?ええまあ」
「しょ、少々お待ちください」
そう言って受付の人は後ろの扉へ入ってその場を去ってしまった
リュートさん、一体何を入れたんだ?
『……………………』
「(何してんだよ)」
『……………………聞き耳』
シロが壁に頭を突っ込んでいた
普通に見えてるし聞こえているみたいだが、よくよく考えてみたら物理的におかしいのでは
『……………………「部長これ、本物ですか」「……………………この紋章は本物だ、間違いない」「つまりこれがあの『絶対』様の?」……………………「うちでの登録をするってことは」』
シロが俺にもわかるよう伝えてくるが、微妙に抑揚があれなのでなんだか眠くなってきた
『……………………「「「つまり」」」』
三重に聞こえてきたんだけど、どこから声出した?
『…………「特別手当が出るぞ!」「やったー!」「今日は焼肉だー!」……………………だって』
「(ああまあうん、最後の方は普通にこっちの方まで聞こえてきた)」
何というか、どこの世界でも公職員って世知辛いんだな
しばらく待っているとウッキウキの表情で戻ってきた女性職員
そのままギルドカードを手渡された
「…………へぇ」
渡されたカードは免許証とかと同じサイズ
表面には本人の名前と発行したギルドの所在地
裏面にはそれぞれのギルドに登録した証明のための刻印が刻まれるようになっており、旅人ギルドのマークは本と鍵が重なり合うような形をしている
施設の利用には登録が必須らしく、旅人ギルドでは主に周辺の細かい立地や歴史資料を閲覧可能になるようだ。感覚的には図書館に近い
「ありがとうございます」
「いえいえ、これからも頑張ってください!」
さっきとは打って変わってテンションが高い、お金って凄いな
『……………………見てみていい?』
「(ああ、俺も少し見てみたい)」
シロが示した場所はクエストボード
依頼なんかが提示されたギルド共通のもので、壁一面に依頼書が貼られていた
数人のプレイヤーらしき人がまばらに眺めており、パーティーを組んでいる集団が依頼書を取って受付へと向かっていった
「ふーむ」
猫探し、ストラグルドックの討伐、錬金術に必要な素材の収集、別都市への物品の配達、特定地点の写真撮影、人探し、調書作成のための立ち合い
「なるほど」
旅人は長距離の移動や旅の書なんかによる正確な記録などが頼りにされているんだろう
見た感じ、討伐の依頼なんかは少ない
立ち合いなんかは依頼料が高そうだけど、自分の記録を他人に見せるのってちょっと抵抗がある
しばらく色々と見ていると、後ろから近づいてくる気配を感じた
「あれ~?もしかしてぇ、新人さんですか~?」
「はい?」
振り返って見てみると、そこにいたのはツーサイドアップの紫髪で小柄、見た目が女性の人だった
下から覗き込むようにして首を傾げ笑顔でこちらを見ている
服装は俗にいう、地雷系とでも言うのだろうか
かなり派手だが下品というほどでもなく、バランスが取れている
「何か用ですか?」
「もしかしたら困ってるのかと思って~。ほら、ギルドのクエストってぇ、種類がいっぱいあり過ぎて、どれを選んだらいいかわからなくなっちゃうんですよ~。同じような内容でも中身は全然違いますし~」
「まあ、そうっすね」
実際この量から手ごろなクエストを選ぶってのかなり骨が折れる
そういうのを知る方法はありそうだけど、結局のところ早いもの勝ちになるだろうし
「もし良かったら~一緒にクエスト受けませんか~?先輩として色々とお教えしますよ~」
「それは、ありがたいんですけど……………………」
どうしてわざわざ俺にそんなことをしてくれるのだろうか
特に接点とかはないはずなんだけど
「気にしないでくださ~い。わたし、昔この場所で困ってた時に、色々と助けてもらったことがあって~、それでもし同じような人がいたら助けよう、ってずっと思ってたんです~」
「はぁ」
流石に怪しいと思っていたが、周囲のプレイヤーが声を上げる
「あれ?!ミルラちゃんじゃねぇか!」
「えっマジ?」
「ホントだ」
ぞろぞろと人が集まり、ミルラと呼ばれた人物の周囲に人だかりができる
そのほとんどが男性だが、一部は女性も混じっている
「みなさん、お久しぶりです~」
「久しぶりーどこ行ってたの?」
「ちょっとリステーアまで~、ごめんなさい、急にいなくなってしまって~」
「いやいや、戻ってきてくれただけで全然いいよ!」
「そうそう、良かった良かった」
見た感じ、みんなミルラという人物に対してかなり好印象を持っているらしい
ギルド内でも有名なようだ
集団の一人がこっちに気が付いた
「もしかして彼を?」
「あっはい~、もし良かったらって~」
「おっ、お前運イイな!ミルラちゃんに見つけてもらうとか」
「俺も、ミルラちゃんに手取り足取り教えてもらいたい…………」
何人かの人物がこちらに来ては肩を軽く叩いたり、うらやましそうな視線を見せてくる
「どうですか~?」
「…………あ~。じゃあ、折角なんで」
断れそうな雰囲気でもないので仕方なく了承
周囲の人たちも一言二言交わした後、そのまま離れていった
「わたし、ミルラって言いま~す。よろしくね~」
手を伸ばして求められる握手
「ヒカルって言います。よろしくお願いします、ミルラ先輩」
それを掴んで応じる
「え~、ミルラちゃんって呼んでもいいんだよ~♪」
「じゃあ、ミルラちゃん先輩で」
「も~生意気な後輩くん~。取り合えず、これなんてどうかな?」
ボードから手に取って見せられたのは、馬車に積んだ荷物を護衛する依頼で、貰えるコールもまあまあ高い
変なところは特になさそうだった
「はい、大丈夫です」
「じゃあわたし~受付に行ってくるけど~取り合えずパーティー組もうね~」
パーティー申請が送られ、承認
視界の左上に名前とHPバーが表示される
ミルラ先輩はそれを確認すると、依頼書を持ってそのまま受付の方へ行ってしまった
『……………………大丈夫?』
「(ん?何が?)」
『……………………握手、してたけど』
「(ああ、あの人中身男だぞ)」
ピシッ、っとシロが固まった
驚きすぎて言葉も出ないのか、口が半開きになっている
『……………………な、なんでわかるの?』
「(それは…………ほら、うんあれだよあれ)」
こう立ち姿とか雰囲気とか、何というか男って感じがするんだよ
声は地声っぽいけど、女性にしては違和感があるし、さっき握手したけど何も感じなかった
『…………………………………………』
なんかシロが凄い目でこっちを見てくるけど、わかるもんはわかるんだからしょうがないだろ
『……………………なに、ネカマ導師って』
「(おいコラやめろ)」
その記憶だけはどうか掘り起こさないでくださいお願いします
『……………………こんなことしてたんだ』
頼むからその件を話題に出すのはどうかご勘弁を、正直黒歴史なんで思い出すのもキツイっす
『……………………ボイスチェンジャー越しでもわかるのは、もう超能力だと思う』
「……………うぐぐ」
「あれ、どうかしたの~?」
「いえ、何でも…………」
そんなことをしているとミルラ先輩が戻ってくる
不思議そうな顔をしているが気にしている様子はない
「えっと、依頼に行く前に、戦士ギルド行ってもいいですか?」
「スキル習得しに行くの~?」
「はい、SPが結構溜まったんで、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ~わたしも今日の運勢気になるし~一緒に行くね~」
そうして可愛らしくウィンクしたミルラ先輩は、先導するようにしてギルドの外へと向かっていった
『……………………バレてるって言わないの?』
「(俺にも情け容赦くらいある)」
趣味は、人それぞれ




