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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第5章:『残念で不幸な僕が、美少女たちに黒歴史を曝される件について』

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第31話:パパ、責任を取ってください(第1節)

 かつて神の遺物と呼ばれた魔神跡の現場では、悠真が美少女たちに押しつぶされるという、いつもの修羅場が展開されていた。


「うわぁぁっ! 重い、重いってば! みんな離れて!」

「きゃあっ! なぜ私まで……離れなさい、ルナさん!」

「あははは! お兄ちゃんあったかいねー!」

「パパ〜!」


 だが、そんなカオスな惨状は、突如として不吉な現象によって打ち破られた。


ブォンッ……!


「……えっ?」


 もみくちゃの中心にいたエーテラの体が、突然、どす黒く禍々しいオーラに包まれ始めたのだ。


「な、なんだ!? エーテラから変な気配が……!」

「えっ、どうしたの!? 何かヤバくない!?」

 ただならぬ異変を察知したルナとドナが、慌ててハグを解いて飛び退く。

 悠真も幼女を抱きかかえたまま、エーテラから距離を取った。


「エ、エーテラさん……? どうしたの!?」


 黒いオーラに包まれたエーテラは、自分の体に何が起きているのか理解できないまま、雪の上に立ち尽くしていた。


 やがて、数秒ほどで彼女を包んでいた黒いオーラが晴れていく。

 だが、その直後。彼女の背中にある誇り高かった『純白の翼』が――。


「嘘……」


 光を失い、薄汚れたグレーに、無惨にくすんでしまっていた。


「……エーテラさん、その羽……」

 少し離れた場所から、セレスティアが心配そうに口元を覆う。


 魔王イヴの治療を手伝っていたリーファも、その異変に気づき、ハッとして立ち上がった。

「あれは、もしや……」


 その時だった。


『――第一級記録官エーテラ。天界の法典に背き、神を破壊する手助けをした罪は重い。よって、汝を天界より永久追放とする』


 どこからともなく、冷酷で機械的な声が、エーテラの脳内に直接響き渡った。


「あれはまさしく……堕天使の羽……」

 魔王のそばにいたリーファが、悲痛な声で呟く。


 そう、それは天界の恩恵を失い、地に堕ちた者の証。

 紛れもない『天界からの宣告』だった。


 エーテラは、自分のグレーに染まった翼を振り返って見つめ、ゆっくりと状況を理解していった。

「あ……ああ……。私の、私の純白の翼が……」


 彼女は雪の上にへたり込み、両手で顔を覆った。


「うわぁぁぁぁん! もう二度と、天界に帰れない……っ!」


 ポロポロと大粒の涙をこぼし、やがて彼女は顔を上げると、真っ直ぐに悠真を睨みつけた。


「悠真さん! あなたのせいです! あなたが規則違反を繰り返すから、私まで巻き添えになったんですぅぅ!」


 エーテラは泣き叫びながら、悠真の首根っこをガシッと掴み、前後に激しく揺さぶり始めた。


「どうしてくれるんですか! 私、もう帰る場所がないんです! 天界から追い出されて、これからどうやって生きていけばいいんですかぁぁ!」

「ぐえぇぇっ! 僕のせいって言われても……! 首絞めないで……! く、苦しい……」


 彼女の理不尽な首絞めに白目を剥きかけた、その時だった。


「……ママ?」

 悠真の腕の中にいた幼女天使が、不思議そうに首を傾げ、泣いているエーテラの顔を覗き込んだ。


「えっ……?」


 エーテラの動きがピタリと止まる。

 すると幼女は、短い両手をエーテラの頬にそっと当て、満面の笑顔で無邪気に呼びかけた。

「……ママ、泣かないで」


 その、あまりにもあどけない笑顔と、温かく小さな手の感触。

 エーテラの無機質だったはずの心に、これまで感じたことのない、強烈な感情――が芽生えた。


「……っ」

 エーテラは悠真の首根っこから手を離し、思わず幼女をギュッと抱きしめた。


「ママ〜!」

「う、うわぁぁぁん……! 私、天に捨てられた挙句、捨て子のママになっちゃいましたぁ……!」


 幼女の温もりに感極まり、エーテラは再び大号泣を始めた。

 それは、彼女の身に立て続けに起こった惨事の後に、さらに突然、新しい家族ができたことへの、処理しきれない感情の爆発でもあった。


 そして、数分後。

 少しだけ落ち着きを取り戻したエーテラは、幼女を大事そうに抱きかかえながら、ズンッ、と悠真の前に立ちはだかった。


「……悠真さん」

「は、はい」


 まだ首を押さえてむせている悠真に対し、エーテラは真っ赤な目で、涙ながらに迫った。


「私、もう天界には帰れません。それに、この子もいます。……ですから」


 エーテラは、ヒロインたちが注目する中、幼女を抱いたまま、ビシッと悠真を指差した。


「この子は、私が天界の命で卵からふ化させ、悠真さんの力で天使に変化させた授かりもの。いわば二人の共同作品」

「……は?」


「そして私は今、あなたの不幸に巻き込まれ、純白の羽を失った」

「……はい?」


「悠真さん。責任を……取ってください! 私とこの子を、一生養ってもらいますからね!」

「パパー! ママー!」


「……はあぁぁぁぁ!?」


 幼女が無邪気にはしゃぎ、エーテラが涙ながらに「責任を取れ」と迫る。

 端から見れば、完全に『悠真がエーテラとの間に子供を作っておいて、無責任に捨てようとしている最低のクズ男』のシチュエーションが完成していた。


「せ、責任って! 変な誤解を生む言い方は、やめなさい!」


「悠真さん! あなた、私たちの子を捨てるんですか!?」

「だから、言い方!」


「パパー! ママー!」


 悠真が顔を真っ赤にして必死にツッコミを入れるが、周囲でその様子を面白がって見ていた仲間たちが、容赦なく追撃を仕掛けてきた。


「あはは! お兄ちゃん、さすが手が早いねー!」

 ドナが腹を抱えて大爆笑し、悠真の背中をバンバンと叩く。


「なんだ、そんなに子供が欲しいなら、オレたちも子作りしようぜ! 丈夫な獣人が産まれるぞ!」

 ルナがニヤリと笑い、牙を見せて豪快に肩を組んでくる。


「……やはり、ただの女たらしね。一度死んだ方がいいわ」

 リリアーナが、杖を突きながら冷ややかに、しかし口元を面白そうに歪めて吐き捨てる。


「お前ら、わざと面白がって言ってるだろ!」


 悠真の悲痛な叫びは、無邪気に笑う『娘』の「パパ〜!」という声と、悪乗りした仲間たちの笑い声に、虚しく掻き消されていくのだった。

設定・イメージイラストは、ピクシブに掲載中です。

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カクヨムにも作品連載中、ぜひご覧ください。
『スイート&ビター・リリィ』~男の娘王女に扮した亡国の王子、帝国の冤罪を解き明かす。はずだったのに、なぜか美少女探偵団で甘くて苦い百合ライフ~
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