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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第5章:『残念で不幸な僕が、美少女たちに黒歴史を曝される件について』

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第30話:少女にパパと呼ばれた日(第3節)

ドスッ!!!!


「ぶふぅっ!?」


 感動の涙を流し、幼女を熱烈に抱きしめていた悠真の顔面は、後頭部に凄まじい威力の『飛び蹴り』を喰らい、冷たい雪の中へと深く、深くめり込んだ。


 抱きしめられていた幼女は、悠真が前へ吹っ飛んだ拍子にぽすんと雪の上に尻餅をつき、きょとんと丸い目を瞬かせている。


「……このロリコン! 破廉恥な規則違反者ぉぉぉ!!!」


 背後の上空から、聞き慣れたはずの、あの凛とした怒声が響き渡った。


「え、えっ!?」


 悠真が顔面を雪まみれにして振り返ると、そこには、少し制服の裾を焦がしながらも、純白の翼を広げて仁王立ちしている少女――エーテラがいた。


「エ、エーテラさん!? 生きてたの!?」

「当たり前なのです! 私は優秀な天界の記録官です!」


 エーテラは腕を組み、ふんぞり返るようにして胸を張った。

 だが、その無機質を装う瞳の奥には、悠真たちの無事な姿を見て安堵したような、微かな涙の跡が光っていた。


「ま、まあ……私の元々の役目は一応『神の卵』の監視ですから……? 魔神への干渉は、権限消費の対象外だという、私の精密な予測が的中したに過ぎません。えっへん!」


 エーテラは、少しだけ頬を染め、視線を泳がせながらも自慢げに語り続ける。


「……バリア解除後は、危うく意識を失いかけましたが、ギリギリで『瞬間移動(テレポート)』を行使し、上空へと退避しました。ですから……消滅などしていません!」


 少し得意げに種明かしをする彼女に向かって、ドナが「うわぁぁぁぁん!」と泣き叫びながら突進した。


「エーテラぁぁぁ! よかった、生きてたんだねぇ! ほんとによかったぁぁ!」

「ひゃっ!? ちょ、ちょっと、鼻水を押し付けないでください! 離れなさい、汚いです!」


 ドナに思い切り抱きつかれ、エーテラは顔を真っ赤にしてタジタジになっている。

 その微笑ましい光景に、悠真は心から安堵の息を吐き出した。


(本当によかった……僕の不運のせいで、誰かが死ぬことにならなくて……)


 誰も死ななかったという事実に、胸の奥が温かくなる。

 さらに、そんな和やかな空気の中で、思いもよらず誕生した新たな命が……。


「……パパー!」

「えっ?」


 雪の上に座っていた、魔石から生まれた白い羽を持つ幼女。

 彼女が目をぱちくりと瞬かせた後、満面の笑顔で短い両手を広げ、悠真の胸にトテトテと飛び込んできたのだ。


「ぱ、パパ!? 僕が!?」


 全軍がざわめく中、悠真は慌てて幼女を抱きとめた。

 最初に魔力を込めて抱きしめられたことで、どうやら彼を『親』だと認識(刷り込み)してしまったらしい。


「だ、ダメです! 神聖なる天の使いの誕生に、そのような不純なスキンシップは! 離れなさい、このロリコン規則違反者!」


 エーテラがドナを引き剥がし、今度は悠真から幼女を引き離そうと必死に腕を引っ張る。

 だが、幼女は「えへへ〜」と笑いながら悠真の首にギュッとしがみついて離れない。


「あはは! お兄ちゃんがパパになっちゃった! じゃあ、ドナも。お兄ちゃ~ん、だっこ~!」


 ドナが面白がって、便乗するように悠真の背中に飛びついた。


「おっ、戦勝祝いのハグか? いいねぇ、オレも入れろ!」


 魔王の治療を終え、エーテラの無事な姿を見て一安心していたルナが、豪快な笑い声を上げて駆け寄ってくる。

 そして、制止しようとしていたエーテラごと巻き込むように、悠真の体に思い切り飛びついた。


「うわぁぁっ! 重い、重いってば! みんな離れて!」

「きゃあっ! なぜ私まで……離れなさい、ルナさん!」

「あははは! お兄ちゃんあったかいねー!」

「パパ〜!」


 世界を救った直後の現場でさえも、美少女たちが悠真を中心に絡み合う、いつも見慣れた修羅場が展開されていた。


「…………」


 そのカオスな惨状を、少し離れた場所から、桜井唯――『幻影のブルーメ』は、腕を組みながらふくれっ面で見つめていた。


 2年間、ずっと、ずっと待ち焦がれた先輩との再会。

 しかも、あんなに大勢の前で、顔を真っ赤にしてラブレターを突き出し、決死の告白をしたというのに、完全にそっちのけにされてる。


(……もう、せんぱい!)


 そんな彼女の隣に、セレスティアが優雅な足取りで歩み寄ってきた。

 彼女は扇子で口元を隠し、雪の上で押し潰されている悠真を眺めながら、桜井に微笑みかけた。


「ふふっ……。想い人を追って、遠く離れたこの異世界まで来るなんて……とてもロマンチックなお話ですわね、ブルーメ……いえ、桜井さん」

「……セレスティア様」


 桜井が視線を向けると、セレスティアは紫色の瞳に強い光を宿して続けた。

「ですが、わたくしも、彼を想う気持ちでは負けておりませんわよ?」


「ぶん……、あの凡人のどこがいいのかしら? 女たらしは死ねばいいわ」

 後方で杖を突いたリリアーナが、冷たい声で吐き捨てる。


「悠真様……! 世界を救った救世主だというのに、本当にふしだらですわ! わたくしというものがありながら……っ!」

 リーファは、神聖な光の杖をギリギリと握りしめ、嫉妬に顔を真っ赤にして地団駄を踏んだ。


「はぁ……。またいつもの光景ですね、エリザ様」

「そうねぇ、ボニー。相変わらず、お兄さんはモテモテだわ」


 ボニーとエリザも、そのドタバタ劇を遠巻きに眺めながら、やれやれと肩をすくめていた。


「……ほんと先輩は、相変わらずですね」

 桜井は、雪原で「助けてくれぇ!」と情けない声を上げている先輩を見つめ、ぷくっと頬を膨らませた。


 だが、そのカオスな修羅場の中心で。

 悠真とともに巻き込まれ、絡まれていたエーテラの純白の翼が、突如として不吉な『黒いオーラ』に包まれ始めたことに、この時の僕たちはまだ誰も気づいていなかった。

設定・イメージイラストは、ピクシブに掲載中です。

https://www.pixiv.net/users/119429388

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カクヨムにも作品連載中、ぜひご覧ください。
『スイート&ビター・リリィ』~男の娘王女に扮した亡国の王子、帝国の冤罪を解き明かす。はずだったのに、なぜか美少女探偵団で甘くて苦い百合ライフ~
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