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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第4章:『残念で不幸な僕が、美少女たちと全面戦争する件について』

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第26話:魔導超兵器グングニル装填(第3節)

「私は警告しました! なぜ、あんな危険な真似をしたのですか!」


 極寒の夜営地に、エーテラの悲痛な叫びが響き渡っていた。

 彼女は悠真の胸元に歩み寄るなり、小さな両手でぽかぽかと彼の胸を叩き始めた。


「あれは神聖な存在のはずです! なのに、どうして牙を剥いたのですか! 私の言うことを聞いていれば……っ、もうっ、信じられません!」


ぽかっ、ぽかぽかっ。


 それは攻撃というより、まるで駄々をこねる子供のような、痛くも痒くもない抗議だった。

 だが、その必死な姿は、自分の信じてきた天界の正義が崩れ去ろうとしていることへの、激しい葛藤の表れでもあった。


「……あれが神? フッ、笑わせないでよ。記録官ともあろう者が、随分と都合よく情報操作されているのね」


 呆れたようにため息をついたのは、紫のローブを揺らしたリリアーナだった。


「エリザの話の後、私が調べ直した古文書にも明確に記されていたわ。あれは『万物を灰に還す破壊の化身』……天界がこの世界を強制リセットするために送り込んだ『兵器』よ。神などではないわ」

「そ、そんなはずありません! エラーです!」


 エーテラが首を横に振るが、今度はエリザが人懐っこい笑みを消して、静かに告げた。


「エメリア王女殿下の調査でも、同じ結論が出ています。あのドームに眠っていたのは、世界を終焉させる『災厄の魔神』。……私たち人間を、根絶やしにするための装置です」


「……っ」


 エーテラの叩く手が、ピタリと止まった。


「そして、悠真様こそが、その災厄から世界を救う『救世主』なのです!」


 リーファが光の杖を握りしめ、力強く宣言する。


「天界が世界を終わらせようとしているのなら、私たちは全力でそれに抗います! 悠真様と共に!」


「神が、世界を破壊する……? そんな、あり得ません……」


 エーテラは後ずさり、フラフラと首を横に振った。

 彼女の完璧だった論理回路は完全に崩壊し、パニックに陥っていた。


「ち、違います! これはすべて、悠真さんが規則違反を繰り返したからです! 警告を破って神に攻撃を仕掛けたから……神の怒りを買って、あのように暴走しているのです!」


「いや、エーテラさん、それは無茶苦茶な理屈じゃ……」

「無茶苦茶ではありません! 規則違反です!」


 エーテラは必死に自己正当化を図ろうとするが、ぽかぽかと叩いていた小さな手を下ろし、限界に達したようにうつむくと、大粒の涙をポロポロとこぼして泣きじゃくり始めた。


「うぅ……っ、ひっく……。どうして、こんなことに……」


 いくら説得しても、泣きながら「規則違反です」と繰り返すばかりのエーテラに、悠真たちはすっかり困り果ててしまった。


「……仕方ありませんわね」


 セレスティアが小さくため息をつき、戦車内の魔導冷蔵庫から取り出してきた、王都の最高級の生クリームがたっぷり乗った特製ケーキを差し出した。


「エーテラさん。とりあえず、これを食べて落ち着きなさいな。糖分は脳の働きを助けますわよ」


 そっと差し出された甘い誘惑。


「……っ! こ、こんなもので、誤魔化されませんよ! 私は天界の……」


 エーテラは涙目で拒絶の言葉を口にしながらも、彼女の手は無意識のうちにフォークを受け取っていた。


「……もぐっ。……ひっく」


 泣きながら、パクパクと猛烈な勢いでケーキを口に運び始める。


「……こんなの、全然美味しくないですぅ……。もぐもぐ……」


 大粒の涙がポロポロとケーキの上に落ち、生クリームに混ざっていく。


「しょっぱいです……! このケーキは、しょっぱいです! 地上の食べ物は不良品ですぅ!」

「いや、それ君の涙の味だから……」


 悠真が呆れてツッコミを入れると、エーテラは「うわぁぁん!」とさらに泣き声を上げてケーキを頬張った。

 そのあまりにポンコツで可愛らしい八つ当たりに、張り詰めていた夜営地の空気が一気に和み、全員が「はぁ……」と呆れ果てたため息をついた。



「……しょうがないなぁ。ほら、エーテラさん、顔拭いて……」


 悠真が見かねてハンカチを取り出し、彼女の口元についたクリームを拭ってあげようと手を伸ばした、その時。


ガシッ! ガシッ!


「えっ?」


 悠真の左右の腕を、セレスティアとリーファがそれぞれ恐ろしいまでの力で掴み、制止した。


「ゆうゆう。今はややこしいですから、余計なスキンシップはやめてくださる?」

「そうです悠真様。ここでまた『不運な事故』が起きて、エーテラさんに抱きついたりでもしたら……本当に浄化しますよ?」


「いや、僕はただハンカチで拭いてあげようと……!」

(何も起こっていないのに、完全に「トラブルメーカー」扱いされてないか?)


 そんな理不尽な扱いに、冷や汗を流して抗議しようとした、その瞬間だった。


「――グルルルルッ……」


 突如、猛吹雪の暗闇の中から、低く威圧的な獣の唸り声が響いた。

 巨大な白い虎の神獣。そしてその背に乗る、魔王軍の軍師『幻影のブルーメ』――桜井唯だ。


「敵襲かっ!?」


 ゼノアの鋭い声と共に、王国騎士団とルナ率いる傭兵団が一斉に武器を構え、夜営地の空気は再び氷点下へと凍りついた。


「待ってくれ! みんな、武器を下ろして!」


 悠真は両腕を振りほどき、両軍の間に両手を広げて立ち塞がった。


「彼女は敵じゃない! この神獣も! 彼女は……桜井さんは、僕と同じ元の世界から来た、異世界人なんだ!」


「「「……ええっ!?」」」


 悠真の爆弾発言に、セレスティアもルナも、武器を構えたまま信じられないというように目を見開いた。


 吹雪が止んだ夜の静寂の中、巨大な神獣の背から降り立った少女は、ゆっくりと悠真たちの元へ歩み寄る。


「……その通りです。そして、天界の記録官であるあなたに、どうしても伝えなければならない真実があります」


 桜井の静かで、しかし揺るぎない声が、夜営地に響き渡った。

設定・イメージイラストは、ピクシブに掲載中です。

https://www.pixiv.net/users/119429388

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カクヨムにも作品連載中、ぜひご覧ください。
『高安ゆき、13歳。AIじいやと小説をはじめますの ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ ) ୨୧』
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