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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第4章:『残念で不幸な僕が、美少女たちと全面戦争する件について』

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第25話:魔神の起動と、全軍の衝突(第3節)

 極寒のヘルヘイム山脈の頂。


 天を衝くほどの巨躯を持つ『災厄の魔神』の足元では、常識ではあり得ない光景が繰り広げられていた。


「おい、人間飼いの犬っころ! お前の攻撃、効いてねえぞ! 毛がフサフサなだけで、牙は鈍ってんのか!」

「うるせえ! てめえの炎こそ、あのデカブツの装甲を焦がすことすらできてねえじゃねえか!」


 魔王軍幹部『業火のジル』と、ヴァルハラ傭兵団の『銀色の狼』ルナ。

 犬猿の仲であるはずの獣人二人が、肩を並べ、互いに悪態をつき合いながらも、迫りくる魔神の巨腕を同時に弾き返している。


「……何が起きているのだ? なぜ、敵同士であるはずの魔王軍が、我々と同じくあの化け物を攻撃している?」


 少し離れた場所でその光景を眺めていたライオネルは、黄金の甲冑を鳴らして驚愕の声を上げた。

 ゼノアも、鋭い視線で戦場を分析しながら首を傾げる。


「分かりません。ですが、彼らの殺意は本物です。魔王軍は本気で、あの魔神を討伐しようとしている……」


 その時、吹雪の向こうから、巨大な白い虎の神獣が魔王軍の陣形を縫うように駆け込んできた。

 その背に乗るのは、魔王軍の軍師『幻影のブルーメ』――桜井唯だ。


「……もう、始まっているのですね」


 彼女は神獣の背から飛び降りると、陣形の最後方で腕を組み、静かに戦況を見つめている『謀略のヴァネッサ』の傍らへ降り立った。


「ええ、ブルーメ。……遅かったわね。天の使いは?」

「撒きました。ですが、彼女は必ずここへ戻ってくるでしょう……」


 桜井は、憂いを帯びた瞳で魔神を見上げた。

 そして、ヴァネッサの合図と共に、上空で待機していた黒い羽の魔族の精鋭たちと、巨大な神獣が、一斉に魔神へと攻撃を開始した。


「……ッ!!」


 その光景を見て、セレスティアは一瞬だけ息を呑み、すぐに傍らに控える二人の騎士団長へと向き直った。


「ゼノア! ライオネル団長!」


 彼女の凛とした声が、吹雪を切り裂いて響き渡る。


「魔王軍がなぜあのような行動に出たのか、その理由は分かりません。ですが、あの『魔神』を破壊するという目的において、今この瞬間だけは同じですわ!」


 セレスティアは、紫色の瞳に揺るぎない決意を宿し、王女としての気高さを見せつけた。


「王国騎士団、および全軍に命じます! 総攻撃を開始しなさい! あの災厄を、一歩たりともこの山頂から逃がしてはなりませんわ!」


「ハッ! 御意に!」

「承知いたしました、麗しき我が姫君!」


 ゼノアとライオネルが力強く応じ、すぐに全軍へ向けて号令を飛ばした。


「全軍、突撃! 我らが姫君の盾となり、あの巨悪を討ち果たせ!」

「恐れるな! 魔王軍に遅れをとるなよ!」


「「「オオオオオオオッ!!」」」


 騎士団長たちの号令を皮切りに、アルカディア王国軍が怒涛の勢いで進軍を開始した。

 ライオネルの黄金の剣閃、ゼノアの鋭い斬撃、そしてリーファが後方から放つ神聖魔法の光が、魔神に向かって一斉に放たれた。


 魔王軍、ヴァルハラ傭兵団、そしてアルカディア王国軍。

 かつて敵対していた三つの勢力が、この瞬間だけは完全に一つとなり、世界の終焉を阻止するための「全軍共闘」が実現したのだ。


 だが――。


ガガガガァァァァッ!!


「くそっ! まったく歯が立たねえ!」


 ジルの炎も、ルナの大剣も。

 魔神の漆黒の装甲に触れた瞬間、目に見えない強固な障壁に弾かれ、傷一つ残すことができない。


「ハァァァッ!!」

 ライオネルが愛馬を駆り、渾身の突きを放つが、剣先は虚しく滑り、彼自身が反動で大きく体勢を崩した。

「……なんと強固な! 剣気が通らん!」


「聖なる光よ、かの邪悪を穿て!」

 リーファが懸命に放つ光の矢も、魔神の周囲に展開された光の輪に触れた途端、水しぶきのように霧散してしまう。


「……無駄ね。あの装甲は、この世界の魔力法則とは根本的に異なるもので構築されているわ」


 後方で静観していたリリアーナが、紫のローブを揺らして冷静に分析する。

 彼女は杖を地面に突き立て、冷ややかな瞳で魔神を見上げた。


「……我々の力だけでは、あの障壁を突破するのは不可能よ。あの規格外の『兵器』が到着するまでは、ね」


「兵器って……まさか、ゆうゆうたちの乗ったスレイプニルのこと!?」

 セレスティアが震える声で叫ぶ。


「ええ。悠真の『不運エネルギー』を極限まで圧縮した、グングニルの一撃。それ以外に、あの天界の産物を破壊する手段はないわ」


「悠真様……どうかご無事で、早く……!」


 リーファが祈るように両手を組む。

 セレスティアも、細剣を強く握りしめ、吹雪の向こうを食い入るように見つめた。



 その頃。

 追手を振り切り、上空からドームのある山頂へと戻ってきたエーテラは、自分の目を疑っていた。


「……な、何なのですか、あれは」


 彼女の視界に広がるのは、自分を守ろうとしてくれた人間たちと、自分を殺そうとした魔族たちが、肩を並べて戦っているという、論理が崩壊した戦場。


 そして何より、彼らが総攻撃を加えている対象は――。


『もうすぐ……世界を救う光が、産声を上げる』


 自分が信じ、守り抜こうとしていた『神』だった。


 だが、その『神』は、人間も魔族も見境なく、ただ無慈悲に、周囲のすべてを破壊しようと巨大な腕を振り回している。


(……あれが、救済の光?)


 エーテラは、空中で呆然と立ち尽くした。

 悠真たちの『あれは災厄だ』という言葉が、激しいノイズとなって彼女の論理回路を激しく揺さぶる。



「このままでは、負傷者が増えるばかりですわ」


 剣も魔法も通じない、圧倒的な絶望。


(ゆうゆう、急いで……! わたくしたちが、もたないわ……!)


 魔神の巨大な腕が振り下ろされ、全軍の心が折れかけた、その時だった。


『――待たせたな、野郎ども!』


 吹雪を切り裂き、八本の鋼鉄脚を軋ませて、巨大な魔導戦車が戦場へと躍り出た。

 その上部に搭載された神槍『グングニル』の砲身が、冷たい光を放ちながらゆっくりと魔神へ向けられる。


「お待たせ! ドナ特製、対神兵器の出番だよ!」


 戦車の操縦席から、ドナの威勢のいい声が響く。

 待ちに待った反撃の狼煙が、ついに極寒の山頂に上がる。

設定・イメージイラストは、ピクシブに掲載中です。

https://www.pixiv.net/users/119429388

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カクヨムにも作品連載中、ぜひご覧ください。
『高安ゆき、13歳。AIじいやと小説をはじめますの ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ ) ୨୧』
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