↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第5章:『残念で不幸な僕が、美少女たちに黒歴史を曝される件について』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
106/109

第34話:わたしたちの子供の名前(第3節)

「ほら、こっちですわよ〜♡」

「おいで、いい子ですね〜♡」


 美少女たちが一斉に甘い猫撫で声を出す、端から見れば天国のような光景。

 だが、その背後に渦巻く「絶対に私が選ばれる」というドス黒い執念を感じ取った幼女は、完全にドン引きしていた。


「うぇぇん……パパー、こわいよぉ……」


 幼女はヒロインたちには目もくれず、悠真の足にギュッとしがみついて絶対に離れようとしない。

 ヒロインたちの笑顔がピキピキと凍りつき、執務室に気まずい沈黙が流れた。


(あ、あはは……。どうしよう、これ)

 悠真が冷や汗を流しながら、足元で震える幼女の頭を撫でていた、その時だった。


コンコン。


「失礼します」


 控えめなノックの音と共に、扉が開いた。

 入ってきたのは、書類の束を胸に抱えた見習い騎士のボニーだった。


「あの、セレスティア様、ご指示のあった報告書をお持ちし――」


 言いかけたボニーの言葉は、足元に突撃してきた小さな温もりによって遮られた。


「……あら?」

 ボニーが目を丸くして固まる。


 ヒロインたちの放つ「ドス黒いオーラ」に怯えていた幼女が、トテトテと駆け寄ってボニーの足元にギュッとしがみついたのだ。

 幼女天使が選んだ先は、まさかの途中参加のボニーだった。


「えへへ〜」

 幼女はボニーの顔を見上げると、安心したように笑った。


「「「「ボニーさん!?」」」」

 セレスティア、リーファ、エーテラ、そして桜井の声が綺麗に重なる。


 刹那、ヒロイン全員の殺気立った視線が、一斉にボニーへと突き刺さった。


「な、何しにいらしたの、ボニー……!」

 セレスティアが、扇子をわなわなと震わせながら、理不尽極まりない怒りをぶつける。


「ひぃっ!? な、何って、姫様に言われて書類をお持ちしたのですがぁっ!?」


 理由も分からず一斉に睨まれ、ボニーは涙目で弁明した。

「……ルールはルールですわ。この子が自ら歩いて向かった者の考えた名前に決定する。……というわけで、ボニー殿。あなたがこの子の名前を決めなさい」


 エメリアが、穏やかな笑顔で無慈悲な宣告を下した。


「えええええっ!? わ、わたくしがですか!?」

 ボニーは絶叫した。

 チラリと周りを見渡せば、ヒロインたちは皆、嫉妬と不満に満ちた恐ろしい形相でボニーを睨みつけている。


(な、なんでわたくしがこんな修羅場に巻き込まれているのですかぁっ!)


 一刻も早くこの場から逃げ出したかったボニーは、適当に名前をつけて、立ち去らなければならないと思った。


「え、ええと……その、お名前、ですよね……」


 ボニーは冷や汗を流しながら、助けを求めるように幼女の姿を見つめた。


 幼女の背中にある、純白の小さな羽。

 そして、テーブルの上に置かれた、お茶会用のショートケーキ。その上に乗った、白くてふわふわとした生クリーム。


「……ホ、ホイップ」


 ボニーは、半ばヤケクソで口走った。


「……え?」

 悠真がぽかんとする。


「ホイップ! ほいっぷー!」

 だが、名前を呼ばれた幼女が、嬉しそうにパタパタと羽を動かしてはしゃぎ始めた。どうやら、自分の名前としてえらく気に入ってくれたらしい。


「ホイップ……まあ、呼びやすくて、とっても可愛らしい名前ですわね」

 エメリアがパチパチと上品に拍手を送り、場を収めるように微笑んだ。


 幼女本人が大喜びしている以上、ヒロインたちもそれ以上異議を唱えることはできなかった。

 こうして、天界の終焉兵器になるはずだった幼女天使の名前は、『ホイップ』に正式決定した。


「……ふん。やはり幼女は、大きな胸の包容力には敵わないということですのね」


 セレスティアが、ボニーの騎士服を押し上げんばかりの豊かな胸元をジロリと睨みつけ、悔しそうに唇を噛んだ。


「ひ、姫様、それは全く関係ありませんっ! 濡れ衣ですぅ!」

 ボニーは顔を真っ赤にして、書類で胸元を隠しながら抗議した。


 そのドタバタの陰で、桜井は一人、不安げに俯いていた。


(……また、うやむやになってしまった)


 もしかして、先輩は意図的に返事を避けているのではないか。

 桜井の胸に、小さな不安の影が落ちていた。



「……ところで、ルミアナ密林の件だがな」


 騒ぎが一段落したところで、テーブルの上で丸くなっていた白猫――ちくわが、話題を戻すように首をもたげた。


「およその位置は分かるが、何しろ1000年という歳月が流れているのだ。草木が生い茂る密林が、当時と同じ景色とは限らん。下手をすれば、遺跡に辿り着く前に迷う可能性もあるぞ」


 ちくわの警告に、エメリアが真剣な表情で頷く。


「そうですわね。闇雲に向かうのは危険ですわ。……リリアーナ、ドナ。もう一度、古文書の記述と照らし合わせて、遺跡の正確な位置の絞り込みをお願いできますか?」


「ふふ、いいわよ。私の知的好奇心が、あの古代遺跡を求めているわ」

 リリアーナが妖しく目を細める。


「では皆様。エメリアお姉様たちが遺跡の位置を特定してくださる間、わたくしたちは必要な物資を揃え、本格的な旅の準備を進めて待ちましょう」


 セレスティアの号令に、皆が力強く頷き、それぞれが新たな冒険に向けての準備へと意識を向け始めた。



 その日の夜。

 桜井唯は、決意を胸にセレスティアの豪華な私室を訪ねていた。


「あの……今夜、私たち全員で『パジャマパーティー』をしませんか? これからのことについて、少しお話ししたいことがあって」


(先輩の気持ち……はっきりさせなきゃ。このままじゃ帰れない)


 桜井の行動がうやむやになったことで、再び芽生え始めた不安。悠真の本当の気持ちを確かめるため、ヒロイン全員と腹を割って話す必要があると考えたのだ。


「まあ! 女の子だけの秘密の夜会ですわね! 大賛成ですわ!」


 イベント好きなセレスティアは目を輝かせ、すぐに他のヒロインたちを呼び集めるように言った。


 平和な待機期間の裏で、悠真の貞操と未来を巡る『女たちの密談』が、今まさに始まろうとしていた。

読んでいただき、ありがとうございます。

評価・ブックマークして頂けると、とても嬉しいですわ。

なろうの連載は、月・金の夜20時30分、次回もお楽しみに ( ⁎•ᴗ•⁎ )୨୧

・物語のキャラ・設定イラストを、ピクシブに掲載中です。

 https://www.pixiv.net/users/119429388

・カクヨムでも、毎週水曜日の夜20時30分に別作品を連載中です。

 https://kakuyomu.jp/users/t_yukiyuki13

・最近、note始めましたの。4コマ漫画付きエッセイですわ。

 https://note.com/t_yukiyuki13

・作品掲載時は、Xで告知しますので、フォローお願いします ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )୨୧

 https://x.com/T_YUKIYUKI13

是非、ご覧くださいませ ( ⁎>ᴗ<⁎ )୨୧

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の作品を読んで下さり、ありがとうございました ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )୨୧
よろしければ、評価&ブックマークをして頂けると、とても嬉しいですわ。

毎週、月・金の夜20時30分に最新話をUPしてますの。
次回も是非、お待ちしておりますわ ♡ (ू•ᴗ•ू❁)୨୧

また、このラノベの設定資料やイメージイラストは、ピクシブに掲載中です。
イラストも是非、ご覧くださいませ ( ⁎>ᴗ<⁎ )୨୧
https://www.pixiv.net/users/119429388
カクヨムにも作品連載中、ぜひご覧ください。
『スイート&ビター・リリィ』~男の娘王女に扮した亡国の王子、帝国の冤罪を解き明かす。はずだったのに、なぜか美少女探偵団で甘くて苦い百合ライフ~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。