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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第5章:『残念で不幸な僕が、美少女たちに黒歴史を曝される件について』

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第33話:王都への凱旋と、公認ハーレム(第3節)

 王都アヴァロンの別邸での生活は、騒がしくも平和な日々が続いていた。


 悠真は、新たに迎え入れられた公式な「妹」たちにからかわれながら、胃痛と安堵が入り交じる奇妙な日常を送っている。


 一方で、そんな賢者二人は第二王女エメリアと共に王宮の書庫にこもり、古文書の解読や古代の遺物の研究を真面目に手伝うという、意外な一面も見せていた。



 そんなある日の午後。

 桜井唯は、別邸の長い廊下にある大きな観葉植物の陰に身を隠し、そわそわと自分の指先を弄っていた。


(今日こそは……絶対に、返事を聞くんだから!)


 あの決戦の日以来、告白の返事をうやむやにされたまま、彼女はずっと悠真が一人になるタイミングを窺っていたのだ。


 やがて、聞き慣れた足音が近づいてくる。先輩だ。

 桜井はギュッと目を閉じ、どうやって声をかけようかと頭の中でシミュレーションを繰り返す。


(ドクン)

 心臓がうるさいくらいに鳴り響き、緊張がピークに達した、まさにその時。


「何してるの?」


 背後から音もなく忍び寄っていたドナが、ニヤリといたずらっぽく笑って囁いた。

 そして、桜井が振り返るよりも早く、彼女のスカートをバサッと豪快に捲り上げたのだ。


「きゃっ!?」


 桜井は短い悲鳴を上げ、反射的に両手でスカートを押さえた。


「あれ? どうしたの、桜井さん?」

 前を歩いていた悠真が、悲鳴に驚いて振り返る。


 だが悠真には、ただ顔を真っ赤にしてスカートを必死に押さえる彼女と、その後ろでケラケラと笑うドナの姿だけが視界に入った。


「あはは! お兄ちゃんに用事があるみたいだよー!」

「な、何でもないですっ!」


 桜井はドナをジロリと睨みつけると、真っ赤な顔のまま、逃げるように廊下の奥へと走り去ってしまった。


「えっ? ちょっと、桜井さん……?」

「あーあ、行っちゃった」


「お前が何かしたんだろ!」

 ドナを問い詰める悠真だったが、彼女は「さあねー」と肩をすくめるだけだ。


(また何か、怒らせてしまったのだろうか?)

 最近やけに、桜井が不機嫌になることが多いと感じていた悠真は、冷や汗を流しながら首を傾げた。



 その日の夕方。

 セレスティアの豪華な執務室に、エメリアを招いてのお茶会が開かれていた。


 テーブルには高級な紅茶と焼き菓子が並び、悠真をはじめ、リーファ、桜井、エーテラ、そして賢者二人が顔を揃えている。


「エメリアお姉様、古文書の解読は進んでいらっしゃいますか?」

 セレスティアが優雅に紅茶を啜りながら尋ねると、エメリアは静かに頷いた。


「ええ。リリアーナとドナの協力もあり、飛躍的にはかどっていますわ」

 エメリアは、手元の分厚い資料に視線を落とす。


「教団の教義や言い伝えには、天界の都合の良い嘘と、未来人が残した真実が複雑に混在していました。それを前提として読み解くことで、すべてのつじつまが合ったのです」

「やはり……天界の終焉計画は、紛れもない事実だったのですね」


 エメリアの言葉に、リーファが立ち上がり、光の杖を強く握りしめた。


「私は教団の巫女として、この恐ろしい真実を、今すぐ民衆に伝えなければなりません! 天界の嘘に騙されている人々を救うために!」


 だが、セレスティアが冷ややかに、しかし優しくそれを制止した。


「お待ちになって、リーファさん。そんなことをすれば、あなたは教団から異端者として審問にかけられ、間違いなく命を落としますわ」

「……っ」

「嘘だと知りながら、教団に戻って教えを説くことなど……私にはできません」

 信仰の基盤を失い、帰る場所も奪われたリーファ。

 そんな彼女に対し、セレスティアは扇子をパチンと閉じ、満面の笑みで告げた。


「心配いりませんわ。いつか必ず、真実が民衆に理解される日が来ます。それまでは、悠真の『第二夫人』として、このままわたくしたちと一緒に暮らしましょう」


 セレスティアの言葉に、リーファは顔を真っ赤にして俯いた。

 しかし、すぐに意を決したように顔を上げ、潤んだ瞳で悠真を見つめる。


「悠真様……。そういうことですので、わ、私をもらってくれますか……?」


「えっ、あ、いや……その……」

 しどろもどろになる悠真に対し、リーファはさらに一歩にじり寄り、上目遣いで迫った。


「もし悠真様がもらってくださらないと、私は教団に戻るしかなく……異端審問にかけられて、殺されてしまいます……っ」

「いや、それって実質、脅迫ですよね!?」


 悠真は冷や汗を流しながら、完全に逃げ場を塞がれたプレッシャーにパニックになる。


「……コホン」

 そんな悠真の様子に、エメリアが小さく咳払いをして話題を変えた。


「ええと、話を戻しますわね」

 エメリアは、テーブルの上に広げた地図を指さした。


「残念ながら、異世界へ帰る具体的な方法は解読できませんでした。ですが……ルミアナ密林の奥深くにある未来人の遺跡に、『転移装置の研究施設』がある事が解読できましたわ」


「本当!? やったー! 未知の遺跡調査だ!」

 ドナが目を輝かせ、椅子から飛び跳ねる。


「ふふ、私の知的好奇心を満たしてくれそうね。退屈しなくて済みそうだわ」

 リリアーナも妖しく目を細め、不敵に笑う。


 だが、エメリアはふと表情を曇らせた。


「……ただ、一つ懸念があります。魔神は倒しましたが、天界がこのまま私たちの反逆を見過ごすのかしら……」


 その言葉に、部屋の空気が一気に重くなった。


「ひぃぃっ……! エル・アディン様の天罰が下りますぅ……!」

 エーテラがブルブルと震え上がり、幼女天使をギュッと抱きしめて小動物のように怯える。


 天界の報復という見えない恐怖。

 平和なお茶会に、冷ややかな影が落ちた、その時だった。


「……それについて、お伝えしなければならないことがあります」


 これまで静かに話を聞いていた桜井が、真剣な表情で口を開いた。


「ヴァネッサさんから……天界と繋がっていた『あの男』の動きについて、情報が入りました」


 桜井の静かで、しかし緊張を孕んだ声が、執務室に響き渡る。

 平和な日常の裏で蠢く、新たな災厄の予兆が、静かにその姿を現そうとしていた。

読んでいただき、ありがとうございます。

評価・ブックマークして頂けると、とても嬉しいですわ。

なろうの連載は、月・金の夜20時30分、次回もお楽しみに ( ⁎•ᴗ•⁎ )୨୧

・物語のキャラ・設定イラストを、ピクシブに掲載中です。

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毎週、月・金の夜20時30分に最新話をUPしてますの。
次回も是非、お待ちしておりますわ ♡ (ू•ᴗ•ू❁)୨୧

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カクヨムにも作品連載中、ぜひご覧ください。
『スイート&ビター・リリィ』~男の娘王女に扮した亡国の王子、帝国の冤罪を解き明かす。はずだったのに、なぜか美少女探偵団で甘くて苦い百合ライフ~
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