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残念で不幸なぼくを異世界美少女が欲しがる件について  作者: 高安ゆき(ゆきゆき)
第5章:『残念で不幸な僕が、美少女たちに黒歴史を曝される件について』

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第33話:王都への凱旋と、公認ハーレム(第2節)

 魔神討伐の熱狂冷めやらぬ王都アヴァロン。

 悠真たちは、セレスティアの広大な別邸へと身を寄せていた。


 そんな朝の豪奢なダイニングルームのテーブルには、専属のシェフが焼き上げたパンや色鮮やかなサラダが並んでいる。

 だが、そんな優雅な食卓の裏では、毎朝のように『悠真の隣の席』を巡る、静かで熱いマウント合戦が繰り広げられていた。


「ゆうゆう、こちらの特製オムレツをどうぞ。わたくしが取り分けて差し上げますわ」

「悠真様、お紅茶のおかわりはいかがですか?」

「パパ、あーん!」


 セレスティアとリーファが甲斐甲斐しく世話を焼き、幼女天使が無邪気に膝によじ登ってくる。

 そんな騒がしい朝食の光景を、桜井唯は少し離れた席から、紅茶のカップを両手で包み込みながらジッと見つめていた。


(……先輩と二人きりになる隙が、全然ない)

 彼女の視線は、虎視眈々と『その時』を窺っている。



 やがて悠真が、「少し風に当たってくる」と一人で中庭へ出た瞬間、桜井は音もなく席を立ち、足早に彼の後を追った。


 別邸の美しい中庭。

 噴水の縁で背伸びをしていた悠真に、桜井はそっと声をかけた。


「先輩……」

「桜井さん。どうしたの?」


 振り返った悠真を見上げる桜井の頬は、ほんのりと桜色に染まっている。


「……ずっと、聞きたかったんですけど。……あの手紙の返事……」


 悠真の心臓が、警鐘のように跳ね上がった。

「あ、えっと、それは……」


 桜井のことは、後輩として、そして一人の女の子として好意を持っている。だが、あの黒歴史の傷が深すぎて、いざ言葉にしようとすると頭が真っ白になってしまうのだ。


「私、ずっと待ってます。先輩の、口から……」


 桜井が距離を詰め、甘いシャンプーの香りが悠真の鼻腔をくすぐる。

 悠真が口を開こうとした、まさにその時だった。


カンッ! カンッ! カンッ!


 突如、王都の方角からけたたましい警鐘が鳴り響いた。

「な、なんだ!?」


 ただならぬ空気に、悠真たちは慌てて皆のいるリビングへと駆け戻った。

 屋敷の中は騒然としており、セレスティアが窓の外を険しい顔で見つめている。


「大変ですわ、ゆうゆう! 王都の壁が、巨大な魔物に破壊されたそうですの!」

「ええっ!? 魔物が!?」


 突然の凶報に、甘いムードは一瞬にして吹き飛んだ。


『……我が見てこよう。人間どもはここで待機しておれ』

 猫の姿のちくわが尻尾を揺らし、単独で騒ぎの中心へと向かっていった。



 一方、土煙が舞い上がる王都の城門前。

 警鐘を聞きつけ急行した騎士団の列に、見習い騎士ボニーの姿があった。馬を走らせるたび、彼女の豊かな胸が上下に激しく揺れる。


 ボニーは城門の前で馬を急停止させ、剣を抜いて息を呑んだ。

「魔物はどこですかっ……って、えええ!?」


 なんと、立ち込める土煙の中から現れたのは、魔物ではなく、見覚えのある八本脚の魔導戦車『スレイプニル』だったのだ。


「お、王都の壁をぶち抜くとは何事ですかぁっ!」


 ボニーが激怒して叫ぶと、ゆっくりと戦車の扉が開き、紫のローブを揺らしたリリアーナが優雅に降りてきた。


「久しぶりね、ホルスタイン」

「ボニーです! 誰が牛ですか!!」


 ボニーは、両腕で大きな胸を必死に隠しながら、顔を真っ赤にして激怒した。


 だが、戦車を見上げた彼女は、車体が巨大化していたのに気付く。

「ちょっと! スレイプニルって、こんな大きさでしたっけ!?」


「あはは! 気づいた?」

 操縦席からぴょこりと顔を出したドナが、ピンクのツインテールを揺らして自慢げに笑う。


「2階建てキッチン・浴室・寝室完備の、動く豪邸に改造したんだよ!」

「そう。だから城門が狭くて通れなかったの。仕方ないから、壁を壊させてもらったわ」


「仕方ないで済む問題じゃありません!!」

 悪びれる様子が1ミリもない賢者二人に、ボニーは頭を抱えて絶叫した。


「……で、一体何しにきたんですか!?」

「王国の技術発展のため、国王から公式に招待されて来たのよ。……さあ、案内しなさい」



 その頃、屋敷へ戻ってきたちくわの報告に、悠真を囲むヒロインたちは呆れ果てるしかなかった。

「全く……、常識というものがありませんの!?」

「なんて罰当たりな……」


(……もう!)

 そんな賑やかな輪の外で、会話を邪魔された桜井は一人、頬をぷくっと膨らませていた。



 翌日、桜井は廊下の柱に身を潜め、胸に手を当てて早鐘を打つ心臓を必死に落ち着かせていた。


(今日こそは……!)


 昨日、不本意な形で邪魔されてしまった告白の返事を聞くために、彼女はずっと悠真が一人になるタイミングを狙っていたのだ。


 やがて、廊下の向こうから悠真の足音が近づいてきた。


(よし……!)

 桜井は深呼吸を一つすると、サッと彼の前に飛び出した。


「先輩。……昨日の続き、ですが」

「えっ、あ、うん……」


 今度こそ邪魔は入らせない。桜井はジリジリと悠真を壁際へと追い詰める。

 その真剣な瞳に、悠真が観念して口を開きかけた、まさにその瞬間。


「おっにぃちゃ〜ん♡」


 ドナとリリアーナが廊下の角から乱入し、悠真の左右の腕をガシッとホールドした。


「よろしくね、お兄ちゃん♡」

「しばらく世話になるわよ、凡人」


「な、なんで君たちがここに!?」

 悠真が全力で嫌がって腕を振りほどこうとするが、二人はピタリとくっついて離れない。


 そこへ、セレスティアが扇子をパチンと鳴らして現れた。


「王国の技術発展のため、彼女たちを『ゆうゆうの妹』という設定で公式に迎え入れましたの。このお屋敷に、研究室をご用意しましたのよ」

「勝手に僕の妹を増やすな!」


 悠真が叫ぶ横で、桜井は「……また邪魔が」と、ぷくぅぅっと限界まで頬を膨らませ、ふてくされていた。



 その後――、

「わあ、家族が増えて賑やかになりますね!」

 リーファが聖女スマイルで歓迎し、悠真たちは引越しの手伝いをすることになった。


「はぁ……。またややこしいのが増えましたね。これ以上、秩序を乱さないで欲しいものです」

「パパ、おてつだい!」

 迷惑そうなエーテラの隣で、幼女天使がパタパタと純白の羽で飛びながら、ピンク色のクッションを運んでいる。


 そんな中、スレイプニルの荷物を運び出していた桜井が、何故か不機嫌そうに無表情のままドンッ!と、木箱を悠真に押し付けた。


「先輩、これお願いします」

「おもっ、何が入ってるの!?」


 腕をぷるぷると震わせる悠真の横から、リリアーナが紫のローブを揺らして覗き込んだ。


「ふふ。それはエメリア王女へのお土産の本よ。王宮の古い文献や魔導書を見せてもらう代わりのね」


 妖しく目を細めるリリアーナの言葉に、悠真はごくりと唾を飲み込んだ。


 増え続ける美少女たちとの騒がしい同居生活。

 だが、その裏で、世界の根幹を揺るがす秘密の扉が、今まさに開かれようとしていた――。

読んでいただき、ありがとうございます。

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なろうの連載は、月・金の夜20時30分、次回もお楽しみに ( ⁎•ᴗ•⁎ )୨୧

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『スイート&ビター・リリィ』~男の娘王女に扮した亡国の王子、帝国の冤罪を解き明かす。はずだったのに、なぜか美少女探偵団で甘くて苦い百合ライフ~
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