第33話:王都への凱旋と、公認ハーレム(第1節)
魔神討伐という大任を果たし、悠真たちを乗せた王国軍の隊列は、ついにアルカディア王国の首都・アヴァロンへと帰還した。
「おおおぉぉぉぉっ!!」
「救世主様が帰還されたぞーっ!!」
「セレスティア王女殿下、万歳!」
巨大な城門をくぐった瞬間、一行を待っていたのは、割れんばかりの大歓声と、空を埋め尽くすほどの鮮やかな花吹雪だった。
大通りを埋め尽くした民衆が、熱狂的に手を振って喜んでいる。
「まあ、わたくしたちの帰りをこんなにも歓迎してくれていますわ!」
セレスティアが馬車の中から扇子を振り、上機嫌で民衆の歓声に応える。
「な、なぜ私たちが魔神を倒したこと、みんな知ってるんですか!?」
馬上で驚くボニーに対し、少し離れた場所で馬を操る情報屋のエリザが、琥珀色の瞳をいたずらっぽく輝かせてウィンクした。
「ふふっ。姫様を喜ばせるため、事前に知らせを送っておいたのよ。これで、凱旋の準備は完璧ってわけ」
自分の主を最高に輝かせるための、完璧な舞台設定。
「……やはり、この方は苦手です……」
ボニーは、その用意周到すぎる手腕としたたかさに、顔を引きつらせて少しだけ馬の距離を取った。
熱狂する民衆の歓声を背に、一行は王城へと直行し、謁見の間へと通された。
玉座に座る国王陛下に対し、セレスティアが一歩前に出て、堂々と魔神討伐の顛末を報告する。
「……というわけで、悠真様のお力と、我が軍の奮闘により、世界を脅かす災厄の魔神は完全に消滅いたしましたわ!」
「おお……! でかしたぞ、我が娘よ! そして救世主殿、よくぞ世界を救ってくれた!」
立派な髭を蓄えた国王が、玉座から身を乗り出して歓喜の声を上げる。
その言葉を受け、セレスティアは扇子で口元を隠し、少しだけ上目遣いになって国王を見つめた。
「ねえ、パパぁ♡」
「お、おう、なんだい、私の可愛いセレスティア!」
普段の「国王陛下」という毅然とした呼び方から一転、甘い声でねだる末娘に、親バカな国王は一瞬でデレデレに顔を崩した。
「わたくしたち、命がけで頑張りましたの。ですから……救世主様の偉大な功績と、王国の威信を、民衆に広く示すべきではなくて?」
「おお、その通りだ! 世界を救った英雄の凱旋だぞ! すぐに大規模なパレードを手配させろ!」
「陛下、お待ちください! そのような大規模なパレードは、警備の手配や予算の面から見ても、あまりに急すぎます!」
実権を握るアルベール大臣が、慌てて前に進み出て反対の声を上げた。
王族の権威が回復し、セレスティアの求心力が高まることは、彼にとって全く面白くない事態なのだ。
「ええい、黙れアルベール! 英雄の凱旋にケチをつける気か! よしセレスティア、許可しよう!」
「ありがとうございます、パパ♡」
二つ返事で快諾する国王の傍らで、アルベール大臣は「……チッ」と忌々しそうに舌打ちし、顔をしかめていた。
そして、ついに華やかな凱旋パレードが開始された。
豪華に装飾された、天蓋のない大きな馬車。
その中央に座らされた悠真の周囲には、左から桜井唯、セレスティア、そして悠真を挟んで右側にリーファ、さらに端には幼女を抱っこしたエーテラが、ぴったりと隙間なく座っていた。
「きゃあああ! 救世主様よーっ!」
「なんと美しいお妃たちだ!」
「お子様までいらっしゃるぞ! なんてお手が早い、度量の広い英雄様だ!」
沿道から浴びせられる、民衆の割れんばかりの歓声と、明らかな誤解に満ちた称賛の言葉。
(……いや、誰か助けてくれ! この公開処刑から!)
事実上の『王国公認の、手が早い英雄』として、国中から羨望のまなざしを向けられるという、最高に恥ずかしくて理不尽な状況。
悠真は顔から火が出る思いで、ひたすら愛想笑いを浮かべて耐え続けていた。
一方、城のバルコニーからは、その騒がしいパレードを見下ろす二人の王女の姿があった。
「やれやれ……。相変わらず、派手なことが好きな子ですわね」
第二王女のエメリアが、優しく微笑みながらため息をつく。
その隣で、第一王女のソフィアは腕を組み、冷ややかに鼻を鳴らした。
「目立ちたがり屋のバカが。……まあ、今は好きにさせておけ」
口では毒づきながらも、その視線はどこか安堵したように、無事に帰還した妹の姿を温かく見守っていた。
そのパレードの護衛として馬を進めていたゼノアやエリザの列に、なぜか第一王女の家臣だったはずのボニーが、誇らしげに胸を張って混ざっていた。
「あら、ボニー。あなた、なんで私たちの列にいるの?」
エリザが不思議そうに尋ねると、ボニーはエッヘンと胸を張った。
「ふふん! 驚かないでください! 今回の私の多大なる活躍が認められ、なんとソフィア様から直々に『今日からセレスティアの専属騎士になれ』と命じられたのです! つまり、栄転です!」
ボニーの言葉に、エリザは上品に、しかしどこか憐れむような笑みを浮かべた。
「……『第一』王女様から、私たちの姫の元へ来てくれるのね。歓迎するわ」
「えっ」
エリザの言い方が引っかかり、少しずつボニーの笑顔が引きつる。
(第一王女から、第三王女専属への異動……あれ? これって……つまり……厄介払い……?)
ボニーの頭の中で、冷たい現実が急速に組み上がっていく。
(わたくし……もしかして、ソフィア様にリストラされたのでは……?)
歓声に包まれた華やかなパレードの片隅で、元第一王女の見習い騎士が一人、真実に気づいて小さく肩を落としていた。
だが、四人の美少女と一人の幼女に囲まれ、民衆から『英雄にして希代の色男』として拍手喝采を浴びている悠真には、彼女の様子に気づく余裕すら全くない。
(恥ずかしすぎる……! 誰か助けてくれ!)
悠真は公開処刑の居たたまれなさに、隣で満面の笑みを振りまくヒロインたちをチラリと見た。
だが、一番端に座る桜井さんだけは、民衆へ向けてあからさまに引きつった作り笑顔を浮かべていた。
悠真がその異変に気づいた瞬間、彼女とパチリと視線が合う。
そして彼女は、笑顔のまま、その奥にある瞳だけで「じとーっ」と彼を睨みつけ、ぷくっと小さく頬を膨らませてみせたのだ。
(ヒィッ……! 怒ってる?!)
「どうかしましたの、ゆうゆう?」
背筋に冷たい汗が流れ、悠真が視線を彷徨わせていると、隣のセレスティアが、満面の笑顔で彼の腕にギュッと抱きついてきた。
そして、悠真の腕に豊かな胸を押し付けたまま、民衆へ向かって優雅に手を振って見せる。
「あ、いや……なんでもないです……」
悠真は完全に逃げ場を失い、諦めたように前を向いて愛想笑いを浮かべるしかなかった。
こうして、彼の異世界生活は、王国公認の『ハーレム状態』という恥ずかしすぎるレッテルと共に、新たな日常へと突入していくのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
評価・ブックマークして頂けると、とても嬉しいですわ。
なろうの連載は、月・金の夜20時30分、次回もお楽しみに ( ⁎•ᴗ•⁎ )୨୧
・物語のキャラ・設定イラストを、ピクシブに掲載中です。
https://www.pixiv.net/users/119429388
・カクヨムでも、毎週水曜日の夜20時30分に別作品を連載中です。
https://kakuyomu.jp/users/t_yukiyuki13
・最近、note始めましたの。4コマ漫画付きエッセイですわ。
https://note.com/t_yukiyuki13
・作品掲載時は、Xで告知しますので、フォローお願いします ( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )୨୧
https://x.com/T_YUKIYUKI13
是非、ご覧くださいませ ( ⁎>ᴗ<⁎ )୨୧




