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エピソード6:精神科

音信不通だった奈津美の無事を確認し、再会した俺たち。

奈津美は…弱り切っていた。

水を飲ませ、俺は奈津美を部屋に誘導した。

奈津美はベッドにちょこんと座り込む。

俺はその隣に座った。


「「なんで…」」丁度二人同時に話し、声が重なった。

「奈津美ちゃん、先いいよ。」俺はそう言って奈津美に発言を促す。


「…なんで、悠斗さんわざわざ来てくれたんですか?」奈津美がそう発する。

「さっきも言ったけど、音信不通になったって春樹からも聞いて心配だったから」俺がそう答えると、奈津美は苦笑する。

「メンヘラあるあるですよ、連絡途絶えるくらい。」…と。


「悠斗さんは何が言いたかったんですか?」奈津美がそう聞いてくる。

「音信不通の理由…今言ってくれたことだよ。」俺ははあ、と溜め息をついてそう答える。


ふと机を見ると、薬のシートが無造作に沢山散らばっていた。

俺の視線に気付いた奈津美が「あー…」とこちらを見て苦笑いする。


OD(オーバードーズ)…ってやつ?」俺が奈津美にそう問いかけると奈津美はこくっと小さく頷いた。

「メンブレしちゃって…今は回復してきてるんですけど。」奈津美がそう言った。


「これ…病院の薬?精神科、通ってるの?」俺がそう問いかけるとまた、奈津美はこくっと小さく頷いた。

「でも暫く行けてなくて…もうお薬も無くて。」奈津美はそう言うと俯く。

「どこの病院?何てとこ?」俺がそう問いかけると奈津美は「ここから歩いて10分くらいの…’’メンタルクリニックリシュ’’ですけど…?」と返す。


それを聞くと俺はスマホで病院名を検索する。

そして、そこに記載されてある電話番号に電話をかける。

スマホを耳に当てると、「悠斗さん…?」と奈津美が不思議そうな顔をした。


あ…苗字。

「奈津美ちゃん、苗字なんだっけ?」俺がそう奈津美に問うと「岩瀬(いわせ)ですけど…」と奈津美が答える。


丁度、電話のコール音が切り替わり『メンタルクリニックリシュです。』と電話口から女性の声が聞こえる。

『あの、そちらにかかっている岩瀬奈津美の代理人で…明日、予約したいんですけど。』俺がそう言うと電話口の女性は『ご本人様の生年月日をお願いします。』と言ってくる。

『少し待ってください』と言い、俺は電話をミュートにして「奈津美ちゃん、生年月日は?」と奈津美に問う。

「平成10年1月4日ですけど…?」不思議そうな顔をする奈津美をおいて、俺は電話口に戻る。


『お待たせしております。生年月日は平成10年1月4日です。明日の18:30で予約できますか』

俺がそう言うと、電話口の女性は『わかりました、保険証とお薬手帳を忘れずお持ちください。』と言って失礼しますと電話を切った。


「俺、明日仕事早退するから。18:30に一緒に精神科行こう。」俺がそう言うと奈津美は「へ…?」とポカンとした顔をした。

「こんな状態、放っておけるわけないだろ…」俺は、はあと溜め息をつく。


「メンクリ…苦手なんですけど」奈津美が苦笑しながらそう言う。

そして続ける。「でも悠斗さんが付き添ってくれるなら…行けるかな」と。


「行けるかなじゃなくて行くんだよ、今日はもう帰るから…明日18:00頃に迎えに来る。」

俺はそう言うと、奈津美は「わかりました」と呟いた。



次の日、俺は仕事を早退する旨を朝のうちに上司と部下たちに伝えた。


昼休憩始まりのチャイムが鳴ると、三浦がせこせこと俺のデスクに近寄ってきた。

「早退の理由、病院の付き添いって言ってましたよね?…てことは昨日話してた女性ですか?」

流石、勘が鋭い。俺は「あたり。」とだけ答えた。


「無事だったんですね、その方…良かったです!」三浦が笑みを浮かべる。

「関係ないのに心配かけてすまんな。」俺はそう言って苦笑する。

「んじゃ俺、喫煙所行くから…」俺はそう言って立ち上がった。



いつもより1時間早く、17:00に職場を後にする。

自宅に戻り、軽くシャワーを浴び身支度を済ませると、俺は私服に着替えて奈津美の家へ向かった。


奈津美の住むマンションに着き、部屋のインターフォンを鳴らす。

『…はい』と今日はインターフォン越しに奈津美の声がした。

『迎えに来たよ』俺がインターフォン越しにそう言うと、暫くして部屋のドアが開く。


「わざわざ…ありがとうございます。」奈津美は玄関でペコリと頭を下げた。

「準備できてる?保険証とか…」俺がそう問いかけると「ばっちりです!」と奈津美は笑った。



精神科…奈津美がいうところの『メンクリ』には18:20分頃着いた。

診察券や保険証を受付に出して、診察待ちだ。


俺はあまり精神科などに詳しくないが、どうやらこの病院はプライバシーに対して徹底しているらしい。

受付時渡された番号札で呼ばれるという。

また、待合室もそのスペースの中で二人掛けの椅子に仕切られていた。


精神科というのはこういうものなのか…俺は一人で納得する。

確かに、精神科というところに来る人たちは他人の目を気にしているのかもしれない。

そんなことを考えていると、「番号札6番の方ー、診察室にお入りください。」と奈津美の番号が呼ばれた。


診察室のドアを開けて、中に入る奈津美に続く。

そこには50代程度の白衣を纏った医師がいた。


「佐倉と申します、よろしくお願いします。」俺は医師に対して軽く頭を下げる。

その医師は「川村(かわむら)です、奈津美さんの付き添いの方ですね。本日はよろしくお願いしますね。」そう言って、微笑んだ。


俺たちは促されて椅子に腰掛ける。

「奈津美さん、最後に受診されたのが…ええと、7月の終わり頃ですね」医師がカルテを確認しながらそう告げる。

奈津美は居心地わるそうに「すみません…調子が悪くて、なかなか来れなくて。」と答える。


「気にしないでください、今日来れたことが何より大切なことですよ。」医師は穏やかにそう告げ、続ける。

「薬はもう切れているよね?最後に出したのが4週間分だから…。」


OD(オーバードーズ)しちゃったみたいです。」俺は会話に入り、そう告げる。

医師の穏やかだった表情が厳しく変わった。

「それはしないという約束で4週間分出すということでしたよね、このままではそれを防ぐために毎週来てもらうことになりますよ。」

その医師の言葉に、奈津美は俯く。


「俺…僕が奈津美さんの薬の管理をします!ここに来るのも嫌がっていたし、毎週は僕もちょっと付き添えないので…。それで、どうでしょうか?」

俺のその言葉に、奈津美は驚いたようにこちらを見る。


医師は、はあと溜め息をついた後に「それなら4週間分の薬を処方しましょう。4週間後、それでもOD(オーバードーズ)などの報告があれば次回からは毎週ですよ」そう告げた。


「ありがとうございます。」俺は医師に頭を下げた。



精神科の帰り、処方箋薬局に寄る。

そこで俺は、奈津美の飲んでいる薬の量に驚いた。


薬剤師によると、発達障害の薬が『コンサータ』『インチュニブ』。

うつの薬が『レキサルティ』『テラトミド』『ザズベイカプセル』『レキソタン』。

睡眠剤が『サイレース』『ハルシオン』。


俺は薬を管理する、と言ったもののこんな量だとは思っていなかった。


「…百均、寄ろうか。」俺がそう呟く。

「何買うんですか?」不思議そうな顔をする奈津美に「ピルケースだよ!」と答えた。

次回、『奈津美との関係』へ続きます。

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