エピソード5:再会
奈津美からの連絡が途絶えた俺は、何となく気になる気持ちを抑えながら生活していた。
…が、結局気になって春樹に連絡を取ることにした。
音信不通になって約一か月。
もう9月も半ばだ。
奈津美のことが気になった俺は、仕事の昼休憩であったが…春樹に連絡を取ることにした。
その時気付いたのだが、合コンの時に作ったLINEグループから奈津美は退会していた。
『春樹、奈津美ちゃんと連絡とってるか?』
春樹からの返信は早かった。
『奈津美ちゃん?あの子のことは知らないけど…どうかしたか?』
その返信に対して、簡潔に事情を説明したLINEを返す。
『わかった。奈津美ちゃんを連れてきた女の子に聞いてみるよ。』
春樹からそう返信が来た。
『助かる』とだけ俺は返信し、まだ早いが喫煙所から自分のデスクに戻った。
「佐倉課長…最近、何かあったんですか?」
部下の三浦が、サンドイッチを片手に近寄ってきた。
「何で?」そう返すと、三浦は「課長、最近なんだか心ここにあらずというか…まあ、女の勘です。」そう言ってサンドイッチをかじりだす。
「女の勘…か」俺は苦笑する。
俺は奈津美とのことを簡潔に三浦に話し、「どう思う?」と聞いてみた。
「精神疾患…リストカットですかぁ…」三浦が考え込んだように呟く。
「自殺…なんてことはなさそうですか?」三浦が恐る恐る俺に聞いてくる。
『自殺』…その考えはなかった。
「あ、でもでもその前に入院してるとかですかもね!」と俺の表情を見た三浦が慌ててそう言う。
昼休憩終わりのチャイムが鳴る。
俺はもやもやした気持ちを抱えながら、仕事に戻った。
◇
定時になり、仕事が終わると俺はスマホを確認する。
春樹からLINEのメッセージがきていた。
俺はそれを見てやや胸が高鳴った。すぐにメッセージを確認する。
『奈津美ちゃんを紹介してくれた子に連絡取ったんだけどさ、音信不通らしいぞ。』
『ただ、これまでも何回かこういうことはあったらしい。』
それがLINEの内容だった。
俺はそれに対して『わかった、ありがとう。』と短く返信をする。
そして俺は仕事用鞄をつかみ「お先に失礼」と部下たちに告げ、足早に職場を出た。
◇
気付けば俺は奈津美のマンションに来ていた。
部屋のインターフォンを鳴らす。…応答はない。
もう一度インターフォンを鳴らす。…応答はない。
俺はドアノブに手をかけた。鍵は…開いていた。
「奈津美ちゃん…?」俺はドアを開けて中に入る。
…小さくすすり泣く声と嗚咽が聞こえてきた。
「奈津美ちゃん!?」俺は慌てて靴を玄関に脱ぎ捨て声の聞こえた方に向かう。
奈津美はユニットバスの便座にむかって、「おえっ…」と嗚咽していた。
何かを吐いたんだろう、吐瀉物の匂いが漂っている。
「悠斗さん、なんでここに…?」奈津美が息も絶え絶えな声でそう問うてくる。
「音信不通って聞いて心配になってきたんだよ!体調が悪いなら救急車を…」
俺がそう言ってスーツのポケットからスマホを取り出そうとすると、奈津美はそれを制止した。
「大丈夫です、ご飯を食べて…それを無理矢理吐いていただけなので。」奈津美が消え入りそうな声でそう言う。
そして言葉を続ける。
「太るのが…怖いんです。私は決して美人ではないから、せめて体型くらい維持しなきゃって…。」
確かに、奈津美は前述した通り不細工でも美人でもない。
…が、すらっとした165センチ程度の慎重にモデル級のスタイルをしていた。
「痩せすぎなくらいだよ…!」俺は奈津美にそう言った。
俺は鞄から未開封のミネラルウォーターを取り出し「とりあえず、これ飲んで。」そう言ってフタを開け、奈津美に手渡す。
奈津美は「ありがとうございます…」そう言うとごくごくと喉を鳴らしながら水を飲んだ。
『エピソード6:精神科』へ続きます。




