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エピソード4:音信不通

成り行きで奈津美の家で酒を飲むことになった俺たち。

そこで俺は奈津美の秘密を知った…。

その夜、酒を飲んでつまみが欲しくなった俺と奈津美は出前を取ることにした。

頼んだのは有名なファストフード店のポテトなど揚げ物が入ったセット。


それをつまみながら、俺たちは雑談を続けた。

その中で俺は「体をカッターで切るって…痛くないの?」と触れてみた。

「私も不思議なんですけど、そういう時って痛みを感じないんです。ラりってるというか…主治医には解離状態だからだと言われました。」そう、奈津美は答えた。


「見てください、これとか…」ふいに奈津美がスマホを差し出してきた。

そこには、パックリ開いた傷と志望のような薄黄色いモノ…流血画像であった。

「これ撮ったのも朧げにしか覚えてないんですよねー…」と、奈津美が呟く。

幸いグロ耐性のあった俺だがその写真の傷には驚いた。


「救急車呼んだり…傷を縫ったりした?」俺がそう問うと、奈津美は「そんなお金ありませんよ…ガーゼをペタッです」と苦笑した。

そんなもので治るのか…というか、だから奈津美の左腕はケロイド状になっているのか。と俺は一人納得した。



夜も更け、終電が近づいてきた頃。

「泊まっていきませんか?」…そう、奈津美が言ってきた。


思わず俺は「え?」と言葉を返す。

まずベッドはシングルサイズであるし、ソファもない。

それ以前に俺たちは男と女だ。


「…今、いやらしいこと想像しましたね?」

奈津美がニヤッとした顔でそう言う。

否定しきれない俺は、「…っいや、まあ……」と答えた。


「いいですよ、それでも。今晩は一緒に過ごして欲しいんです。…私には何もないから。」

奈津美は最後の方、消え入りそうな声でそう言った。


『私には何もないから』…その言葉が、何となく引っかかった。

しかし俺は深掘りせず、「わかった。…今晩は泊まっていくよ。」とだけ答えた。



狭い…いや、二人だから狭く感じるシングルベッドに俺たちは横になった。

奈津美は俺の背中に腕を回し、脚を絡めてきた。


正直なところ、興奮しなかった訳ではない。俺だって男だ。

ただ…何となく手を出す気にはなれなかった。


『私には何もないから』…その言葉の意味を考えていた。

今までどんな経験をしてきたのだろう、どうしたらそんな発言が口をつくのだろう…。

そんなことを考えながら、俺は眠りについた。



翌朝。アラームで目が覚めた。奈津美のスマホだ。

「ううっ…んー」と、奈津美が伸びをして起きる。

「おはよう」俺が奈津美にそう言うと、奈津美は「おはようございます…」とむにゃむにゃと眠そうに答えた。


時刻は午前7時。

「今日単発バイト入れてて…7:45には家を出ないといけないんです。」

奈津美がそう言う。

「そういうことは先に言っておいてくれよ…」と、俺の心の声は口にでてしまっていたようである。

「ごめんなさい」奈津美がしゅん、とした声でそう言った。


俺は奈津美にユニットバスの洗面台を借り、ささっと水で寝癖を直す。

そして急いで化粧をしている奈津美に「先に出るよ」と言い残し、帰路に着いた。



帰宅後、『昨日今日、ありがとう。』そう奈津美にLINEを送った。

その日、そのLINEに既読がつくことは無かった。


1日、2日、3日…一週間経っても、返信が来ることは無かった。

『LINE、ブロックされたのか?』

そう思った俺はブロック確認の方法を使い調べてみたが、どうやらそうではないらしい。


「何か…あったんだろうか」気付けば俺はポツリと独り言を呟いていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

『エピソード5:再会』へ続きます。

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