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エピソード3:奈津美の秘密

『私の秘密…知りたくないですか?』

その奈津美の言葉に釣られ、奈津美の家に行くことになった俺。


一体、奈津美の秘密とは何なんだろうか…。

奈津美の家は駅から15分程度のマンションだった。

道中、俺たちは他愛ない話しかしていなかった。


「どうぞ、お入りください。」

奈津美の言葉に俺は小さく「お邪魔します…」と呟いて玄関に靴を置く。

玄関を入ってすぐ横には洗濯機があった。


1K、六畳半ほどの部屋にはベッド、ローテーブル、カラーボックス、収納ボックス…などがあった。


「歩いてきて暑かったですよね、こんな猛暑日に…オレンジジュースかお水、どちらか飲みます?お酒ならストゼロもありますよ。あ、ベッドにでも座っていてください。」奈津美がそう言った。

時間は18時半、俺は有難くストゼロをいただくことにした。


そしてベッドに腰掛ける。

まじまじと部屋を観察すると、片付いている…とも散らかっているとも言えない部屋だった。


奈津美は、同じくストゼロの缶を持って廊下の冷蔵庫から部屋に戻ってきた

間を机に置くと「部屋着に着替えても良いですか?」奈津美がそう言う。

俺は「どうぞ」と答えた。


奈津美は部屋着を持って、俺に気遣ってか廊下に着替えに行った。



プシュ、っとスト缶を開ける音が部屋に響く。

有難いことに酒はキンキンに冷えていた。

一口飲むと、冷たい酒が体に染み渡る。


「お待たせしました。」

廊下のドアが開き、奈津美が戻ってきた。


奈津美はマキシ丈の、半袖のワンピースを着ていた。

俺はふとそちらを見つめて…驚いた。


奈津美の左腕にはリストカット…いや、それどころでは収まらないほどの傷跡があったのだ。

俺は過去にリストカットの傷跡を見たことはあったものの、それらはそれこそ手首の内側にあるものだった。

…が、奈津美の傷跡は、腕をグルっと囲むようにあった。手の甲から二の腕まで。


俺が奈津美の左腕を注視していることに気付いた奈津美は「驚きました?」と微笑む。

どうしてこの状況で微笑むことが出来るんだ…俺は唖然とした。


「お見苦しくてすみません、でもそんな反応には慣れているので。」

奈津美は床に座り、スト缶を開ける。

「乾杯しましょう」と奈津美が言った。



乾杯、と缶同時をコツンと合わせる。

俺と奈津美は酒を飲み始める。


「精神疾患を持っているんです。」そう、奈津美が話し出した。

「家庭環境が問題とかではないですよ?ただ…私発達障害も持っていて。そのせいで、精神疾患を併発したらしいです、お医者さんの話だと。」


俺は黙って酒を飲みながら話を聞いていた。


「男運ないんですよねー、私。なのに恋愛ばかりして、失恋して病んで…カッターで体を切ってしまうんです。」

奈津美はそう話すと、グビグビと酒を飲みだす。


奈津美はあまり酒が強くないらしい、すぐに頬が赤くなる。

…と共に、左腕の白い傷跡も赤みを帯びていた。


俺はふと、奈津美の右首筋に目がいく。そこにも赤みを帯びた傷跡が2、3本あった。

俺の視線に気づいた奈津美が「あー気付いちゃいました?」…とニヤリと笑う。


「実はですねー…こんなところにもあるんですよ。」

奈津美はマキシ丈のロングワンピをまくり上げると、傷跡のあるふとももを見せてきた。


「…これが、私の秘密。大した事ないでしょ?期待外れだったら、すみません。」

奈津美はえへへ…と少し声を出して苦笑した。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

次回、『音信不通』へ続きます。

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