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第60話 終焉

 世界が閉じる。理が書き換えられる。

 そこは終焉という概念が張り付けられた世界。そこにはもはや、何もない。

 当然、未来()も。


「終わりだ。アルセリオン」


 夜を吐き出していた穴はただの演出。それが侵蝕の起点だと思わせるための。

 全ては黒龍(アルトワール)の手のひらの上。

 

「……そのようだな」


 もはや成す術はない。

 此処は行き止まりの世界。何もかもが停滞している。魔力も、肉体も、魂も。此処では何の意味もない。全てが終焉に絡め取られている。


「アルトワール。一つ聞かせてくれ」

「……いいだろう」


 状況は詰んでいる。さすがの白龍(アルセリオン)でも、ここから巻き返す手はない。

 だから黒龍(アルトワール)は頷いた。

 

「星を滅ぼした後、お前はどうするつもりだ?」


 白龍(アルセリオン)の問いに、黒龍(アルトワール)は冷笑を零す。

 それはくだらないモノで、どうでもいい問いだったからだ。

 

「そんなものに興味はない。オレの目的は生命の根絶だ。その先には意味なんてない」

「……そうか。それは寂しいものだな」

「くだらない遺言だな」


 黒龍(アルトワール)覇黒剣(ミゼル=ヴェルクーガ)を握り、白龍(アルセリオン)の首元に突き付ける。

 何も意味をなさない世界。だが終わらせた本人はその例外だ。十全に力を振るうことができる。


「……ではさらばだ。白龍アルセリオン。かつて友だった者よ」

「……」


 白龍(アルセリオン)はなにも答えずに目を閉じる。星の命運は既に尽きた。できることはもうないもない。


「ハァァァアアア!!!」


 しかし英雄は諦めない。

 剣を握り、白龍(アルセリオン)の前に躍り出たのは一人の人類種。

 

「……な……に?」


 黒龍(アルトワール)は驚愕に目を見開いた。

 終焉という概念を貼り付けられておきながら動けるはずがない。

 しかしその理由にはすぐに思い至った。


「……オレの血だな?」


 龍帝(セリア)はかつての大戦で黒龍の血に汚染されている。だから終わった世界が黒龍と同質の存在だと解釈した。


「だが、動けるだけだろう?」

 

 裂帛の気勢と共に斬撃を放つ龍帝(セリア)。しかし黒龍(アルトワール)の言葉通り、そこに輝きはない。


「先にお前から殺してやる。さらばだ。セリア=ルクシア。かつて英雄であった者よ」


 覇黒剣(ミゼル=ヴェルクーガ)が振り上げられる。

 

「セリア!!!」

「くっ……!」


 龍帝(セリア)は純白の剣で受けの姿勢を取った。しかしこれが何の意味もないことは龍帝(セリア)自身がよくわかっている。


 ……ここまで……か!


 振り下ろされる漆黒の大剣が龍帝(セリア)を両断する。



 

 ――その寸前。

 世界が罅割れ、(希望)が差した。


「レン様……!!!」

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