第58話 世界を呪う言葉〈異界の理〉
「……ッ! ジョシュア翁!」
ソレにいち早く気付いたのは神王アルストンだった。
ジョシュアはすぐにアルストンの意図を正しく把握。即座に魔術式を記述する。
パッと輝く魔術式。次の瞬間、蒼龍と赫龍姿が黒龍の前から立ち消えた。
直後、黒き剣、覇黒剣が頭上から落ちてきて、二体のいた場所を貫く。
ゼスマティア神王国国王、神王アルストンの天恵は【天眼】。
音、空気の動き、魔力の流れなど、ありとあらゆる情報を視覚的に視ることができる天恵だ。
それは長年の研鑽により、今や未来予知の領域にまで至っている。
「助かったぜ! 神王アルストン! 良い眼をしているな! 背中は任せるぞ!」
「【律識翁】! 転移は任せるぞ!」
「はい!」
「御意!」
二体の真龍種は背に乗る人類種が背を預けるに値する人物だと認めた。
そこへ響くは世界を呪う声
「――|傲慢なる者らに夜の静けさを《アザイレンプライド》」
呪いが空気を伝い、伝播する。
次の瞬間、黒龍以外の全員が血を吐いた。
「がはっ!」
肺が潰れた。そう全員が理解した。
しかしそれしきのことで止まる者はいない。この創られた世界にいるのは英雄のみ。
「ガァァァアアアアア!!!」
口から血を撒き散らしながらも突貫する赫龍。再び魔術式を記述するジョシュア、眼を見開く神王アルストン。そして結晶化した龍爪を構える蒼龍。
全員が全員、己の役目を理解していた。
そしてそれは龍帝と白龍も同じ。
「がはっ! アル……セリオン! これは呪いの類だ!」
「あ……あ! 解……っている! ――起動! 龍核炉心……!!!」
天から光が降り注ぎ、清浄なる空気が世界を満たす。同時に龍帝も魔術式の記述を行う。
姿を表すは巨大な立体魔術式。そこへ重ねるように、白龍も魔術式を記述する。
それは数多の魔術を組み合わせた巨大な複合魔術。
ここには龍帝と白龍が知る限りの対呪用の魔術を詰め込んである。
加えて龍核炉心の起動により能力を底上げされた光属性の魔力と、複数の魔術を組み合わせることによって得た相乗効果。この世界に存在する呪いならば即座に消し飛ぶほどの魔術だ。
だが――。
「ダメ……か!」
「くっ!」
龍帝と白龍は歯噛みした。
アルトワールの呪いはこの世界の理ではなく、異界の理で動いている。ならば対応するのも同じ異界の理であるのも道理。
「……」
「……」
龍帝と白龍はアイコンタクトを交わし、方針を統一する。
判断は迅速だった。
解呪不可能と見るや否や、回復魔術を使用し、全員の肺を再生させる。当然、呪いの影響で即座に潰されるが、それを上回る速度で再生させていく。
要は対症療法のゴリ押しだ。
「私は……日和見が……過ぎていたのかもしれん」
英雄セリア=ルクシアが呟く。
黒白大戦の時は、フィレインが居た。だから未知の状況という場面はほぼ皆無。故に、様子見をする癖が付いていた。
しかしそれはもはや不可能。今ここに、かつて戦場を共にした友はおらず、異界の理を理解する時間もない。
だからこそ前に出る。様子見は悪手だと判断して。
「行くぞ! アルセリオン!」
「……」
無言で並び立つは太古から生きる伝説の白龍。
もはや言葉は不要。そう言わんばかりに人と龍は同時に飛翔を開始する。
刹那で二体の真龍種を追い抜き、黒龍に肉薄。
龍帝が上段から剣を振り下ろす。その背後には顎を開けた白龍。
――龍ノ息吹。
龍帝を巻き込みながら、放たれるは白の奔流。
しかし黒龍もただ見ていたわけではない。
「――聖絶を拝せよ」
黒龍の口から紡がれるは、呪いの言葉。その瞬間、龍ノ息吹のみならず、龍帝が纏う光も消失した。
……これは!
龍帝と白龍は起きた現象をすぐに理解した。
それは双方が光の魔力を持つ者だから。
「……対策済みというわけか!」
「黒龍……! お前は……私たちを殺すためだけに! どれだけ……!」
「……チッ! ハラァ……立つよな! 蒼龍!!!」
「珍しく……同意見だ。……赫龍!!!」
追いついた二体の真龍種が咆哮する。
黒龍が使用するモノは全て光に対抗するモノ。
即ち、――龍帝と白龍以外は眼中にないということの証左だ。
――龍ノ息吹。
――龍ノ息吹。
超至近距離から放たれる赫と蒼の奔流。
次の瞬間、紡がれたのは真龍種、黒龍の言葉。
「――起動。龍核炉心」
「ッ! 離れ――」
白龍の言葉を掻き消すように、黒龍の全身から黒炎が吹き出した。
世界が黒炎に包まれる――。
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