第57話 真龍武装
同時に放たれる白と赫と蒼の極光。
それらが今まさに龍新星を放とうとしていた黒龍に直撃する。
互いが干渉し、空間が歪むほどの魔力の奔流。隙だらけだった黒龍は一瞬にして呑み込まれた。
しかし、極光が過ぎ去った跡から無傷の黒龍が姿を現す。
「なに……?」
「ハッ!」
目を大きく見開く蒼龍。そして獰猛に嗤う赫龍。両者異なる反応を見せたが、警戒心を跳ね上げたのは同じだった。
「どういうことだ。アルセリオン。なぜアレを喰らって無傷……いや、それ以前に何故ああも易々と龍新星を放てる!?」
蒼龍が白龍に鋭い眼光を向ける。
龍新星は真龍種が持つ最強の技。だけど同時に、禁じ手でもある。
真龍種は不滅だが不死ではない。死ねば今代はそこで終わり。だからこその最終手段。黒龍はそんな技を躊躇いなく使う。
「アルトワールの器は【不死】の天恵を持っている。だから龍新星に躊躇いがない」
「……【不死】。通りで。……放たれたらどうなる?」
「先ほどは創造した世界ごと壊された」
蒼龍が眉根を寄せる。
白龍の言葉は、撃たれたら終わりだと言っているようなモノだ。
「白龍様。黒白大戦ではどうやって倒したのですか?」
「私だ」
アルストンの言葉に答えたのは白龍ではなく、龍帝だった。
「……私の剣技は概念を斬る。だから首を落とせば殺せる。……落とせれば、な」
龍帝が黒龍を見据える。しかしその視線は厳しく、それが簡単ではないことを示していた。
「フィレインが居ないのは痛いな」
「……そう……だな」
白龍の言葉に龍帝は頷いた。
かつて黒白大戦を戦い抜いた友にして、神王国を建国した預言の巫女フィレイン。
「アルストン。今代の預言の巫女は仮定だな? あと何度使える?」
「なぜそれを……いや」
アルストンは疑問を呑み込み頷く。
「おそらくは……無理をしてあと一度できるかどうかです」
「アテにするのは無理か……」
龍帝は大きくため息を吐く。
一度使えたところでどうしようもない。そう言外に語っていた。
なぜならば、黒龍を倒した時、フィレインが行った仮定は十や百ではない。
七日七晩仮定をし続け、黒龍の動きを読み切った。
実際に倒したのは龍帝だが、あの勝利はフィレインあってのモノだと龍帝は理解している。
「ならやることは――」
「――果てを覆う夜の帳」
厳かな声が響いたと同時、黒龍の背後に夜がまろびでた。
夜が世界を侵食する。
「……!?」
白龍は大きく目を見開いた。
魔術的な現象。だが、魔術式がない。
「……なんだ……あれは? セリア!」
「わからない! あんなモノは私も見たことがない!」
「まさか……!」
古くから生きる伝説、龍帝と白龍でも知らない現象。しかしレンの口から事情を聞いていた一人だけが例外だった。
「なんだ! 【律識翁】!」
「おそらくアレは異界の理。先ほどレン殿……器の少年が異世界からの転移者だと口にしていました」
「まさか、一度の転生ではなく、二度も世界を越えたというのか!」
「そんなことはどうでもいいだろ! 今はアレをどうするかじゃねぇのか!」
赫龍が獰猛に吼える。
全員が直感で理解していた。
アレはまだ途中。完成した瞬間、終わりだと。
「とにかくセリアの攻撃を届かせる。それ以外に勝ち目はない」
「ハッ! 白龍ともあろう者が弱気だなァ!? オレが殺してやるよォ! 行くぞ神王アルストン!」
赫龍が好戦的な笑みを浮かべ、背に乗せた神王と共に空を翔ける。
それと共にジョシュアが魔術式を記述。
そして真龍種二体が力ある言葉を口にした。
「「――接続」」
「羅刹火山!!!」
「冷厳山嶺……!」
双方が己の守護地へと接続する。
「「起動、真龍武装」」
「轟却剣ゼイン=ストラムレーゼ」
「崩氷剣ニラル=アインヴェーレ」
赫龍は顕現した|轟却剣《ゼイン=ストラムレーゼ》を手に取る。すると赫い刀身から轟音を立てて、火柱が立ち上った。
その火は胎動し、赫龍を包み込む。
「オレの炎に焼かれて死ぬなよ? 神王アルストン!」
「望むところです。ライガット様」
「良くぞ言った! 行くぞ!」
「蒼龍様。儂のことはお気になさらず……!」
「はなからそのつもりだ」
蒼龍は顕現した|崩氷剣《ニラル=アインヴェーレ》を手に取る。
ここまでは赫龍と同じ。しかし次にとった行動にジョシュアは驚愕した。
「蒼龍様!?」
蒼龍は手に取った|崩氷剣《ニラル=アインヴェーレ》を己の胸に突き立てる。
「慌てずとも良い。蒼龍の真龍武装とはそういう物だ」
次の瞬間、蒼龍の胸を|崩氷剣《ニラル=アインヴェーレ》が貫いた。が、血は一滴も出ず。代わりに剣がボロボロと崩れ、その欠片が瞬く間に蒼龍の身体を覆った。
「行くぞ【律識翁】。識の名を冠する者よ。そなたの魔術でこの我を支えてみせよ!」
「御意……!」
【律識翁】ジョシュア=アーレルシュバンクは恭しく頭を下げる。そして転移魔術を起動した。
黒龍の眼前に転移する蒼龍。
その隣へ|轟却剣《ゼイン=ストラムレーゼ》を振りかぶった赫龍が肉薄する。
「ガァァァアアアアア!!!」
「……!」
獰猛に吼える赫龍。そして結晶化した爪を突き出す蒼龍。
致命の一撃が黒龍へと迫る。
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