第56話 亡霊
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『ぁぁぁぁぁあああアアアアア――――――!!!』
慟哭が響き、世界が崩壊した。
零れ落ちるは白と黒の二つの影。
「ガァァァアアアアア!!!」
「アルトワール!!!」
白龍は傷を負いながらも大口を開ける。収束するは、白。
対する黒龍の口元からも、黒炎が散る。
――龍ノ息吹。
――龍ノ息吹。
白と黒の極光が衝突し、大爆発を引き起こす。
「聞け――! アレは……黒闢の厄災だ!!!」
戦場に響き渡るは白龍アルセリオンの声。
「なっ……!?」
アルストンは言葉を失った。
しかし、目の前にいるのは紛れもなく黒龍。白龍を疑うほど、アルストンは愚かではなかった。
「ッ――! 聞いたな!? 神王国の全戦力を持って叩く! レオニール、預言の巫女。ルシアを頼む」
「……お任せください」
「はい……」
ここから先は神話で語られるような激しい戦いになる。それがわかっていたからこそ、レオニールと預言の巫女は歯噛みしながらも一礼し、従った。
預言の巫女はいまだ目を覚まさないルシアを抱え、レオニールと共にゆっくりと戦場を後にする。
「グゥォォオオオオオ!!!」
唸り、身体を丸める黒龍。その何かを堪えているような様子を白龍は冷静に見つめていた。
「やはり……こうなるのか」
白龍は一度目を瞑る。
黒と白。光と闇。対となる二体の真龍種。彼らの道はすでに分たれている。交わることはもうない。
だからこそ、白龍が取る選択は一つ。
「……接続」
これは黒白大戦の再来だ。
この戦いは黒龍が滅びるか、世界が滅びるかの二者択一。
だから白龍は力ある言葉を紡ぐ。黒龍を滅ぼし、世界を救うために。
「――真か――がはっ」
しかし、白龍は口から滝のような血を吐いた。
真核への接続。それは真龍種の頂天に君臨する白龍と言えど、そう何度も行えるものではなかった。
「アルセリオン! 無茶をするな!」
白龍の背で龍帝が叫ぶ。純白の鎧は、今やその輝きを曇らせていた。
「だが、このままでは星が……!」
「喚べ! 今こそ契約を果たす時だろう!」
「だがこれ以上真龍種を減らすわけには……!」
「どのみち今動かなければ、ヤツらも滅びる……!」
「……くっ。……そう……だな。……接続、【真龍王域】。連結接続、【黒闢淵穴】、【羅刻火山】」
白龍の腕から、大地へと魔力が注がれる。描き出されるは複雑な魔術式。
それは地面に解けるようにして消えた。
『蒼龍、赫龍。喚ぶぞ?』
返答を聞かずして、白龍はその背に巨大な魔術式を記述した。
虚空に描かれた魔術式は次第に形を変えていく。やがて姿を現したのは、深淵を思わせる漆黒の扉と灼熱し燃え盛る炎の扉。
漆黒の扉に縦の亀裂が走り、開いていく。
そうして静かに姿を現したのは蒼い身体に、流水を纏った真龍種、蒼龍。
「状況は?」
目を細めたのは蒼龍。現れたばかりだというのに、鋭い目つきで白龍を睨みつけた。
「なんという体たらくだ。アルセリオン。わざわざ守護地まで変えたというのに、なぜあそこまで力を取り戻している?」
「返す言葉もない。アルトワールの狙いに気付けなかった私の責任だ」
「――ハッ! オマエがミスるとはな! アルセリオン!」
声が響き、炎の扉が爆散した。
時空に空いた亀裂。そこから姿を現したのは赫い身体に轟々と燃え盛る炎を纏った真龍種、赫龍。
その名も――。
「気を引き締めろライガット。アレはそんなに甘い相手ではないぞ」
派手な登場に蒼龍は大きくため息を吐いた。
嗜める蒼龍を赫龍はギラギラとした瞳で睨みつける。
「うるせーぞ蒼龍。んなこたぁ見ればわかる。その上で言ってんだよ。ビビってんのか? アァ?」
「ビビッ……」
蒼龍の額に青筋が浮かぶ。
「オレにとっては好都合だ! なにせあの伝説と殺り合えるんだからなぁ!」
「この脳筋が。だから貴様は――」
「――言い争いは後にしろ」
白龍は言葉を遮り、両者を嗜めた。このまま黒龍が動き出せば神王国が滅びる。
今は時間がなかった。
「まずはもう一度世界を創造する。合わせろ」
「……了解した」
「オゥ!」
白龍は一つ頷くと、もう一度真核への接続を試みる。
「――接続」
「……接続」
「接続!!!」
後に続くは二体の真龍種。もはや不足はない。
「「「真核」」」
創り出すは新たな世界。
「――創世、真域」
そうして、白は広がり、再び世界が創造された。
取り込まれたのは四体の真龍種と三人の人類種。
白龍アルセリオンは、それ以外を足手纏い、可能性のない者と判断した。
「神王アルストン! 【律識翁】ジョシュア! お前たちは騎手となれ! 赫龍! 蒼龍! いいな?」
「仕方ない。人類種を乗せるのは業腹だがそうも言っていられんからな。神王――」
「――神王アルストン! 背に乗れ! このオレが許す!」
蒼龍の言葉を遮り、赫龍が吼えた。そして無理矢理アルストンをその背に転移させる。
「まったく……」
やれやれとため息を吐く蒼龍。その眼前で【律識翁】ジョシュア=アーレルシュバンクは白い地面に膝を突いた。
「お初にお目に掛かります蒼龍様。儂でも構いませんかな?」
目を細め、ジョシュアを値踏みする蒼龍。しかしすぐに頷いた。
「許す。その殊勝な態度は気に入った」
「ありがたきお言葉。では」
ジョシュアは恭しく頭を下げると、蒼龍の背に転移した。
「よし! では――」
「ぐぁぁぁあああああ!!!!! オレは……! ボクは……!!! 全部……! 全部……ボクのせいで……!!!」
白龍の言葉を遮り、慟哭が轟く。うずくまる黒龍の朱瞳からは涙が流れていた。
「セリア様。あれは?」
神王アルストンの言葉に、純白の兜の隙間から覗く目が細められた。
「亡霊だ。かつて我らが滅ぼし損ねた、な」
「亡霊……? でもあれは……」
アルストンの言葉が止まる。
黒龍の力を受け継いでいたとはいえ、元は人類種。ルシアとの関係からも、それは確かだとアルストンは判断している。
それが今や、黒闢の厄災。
なぜこのような事態になっているのかがまるでわからなかった。
しかしその疑問にはすぐに答えがもたらされる。
「私とアルセリオンは黒龍が生まれ落ちる度に殺し続けてきた。それは黒龍に黒闢の厄災アルトワールの思念が宿っていたからだ」
「では何故、今回は……?」
そのような事情がありながらも、龍帝と白龍は今代の黒龍を殺さなかった。だからこその疑問。
「今代の黒龍には思念が宿っていなかった。だから私とアルセリオンは黒龍の思念は消え去ったと判断した。だが……」
「まさか人類種として転生しているとは」
龍帝の言葉を白龍が受け継いだ。
「記憶がなかったのは私たちを欺くためだろうな」
「では、レン殿は……」
白龍は一度目を閉じてから、再び黒龍へと視線を向ける。
「彼は器だ。言ってしまえば彼も被害者だな。だけどこうなった以上は殺すしかない。後に不安は残るが、星が滅びるよりはマシというものだろう」
「あれを……殺す……?」
神王アルストンの喉が鳴る。
相手は黒闢の厄災。伝説に語られる真龍種だ。
力の差は歴然。
「勝てるのですか?」
「やるしかあるまい。我らが負ければ星は終わる」
「そうだな」
龍帝セリア=ルクシアは目を瞑る。
そして過去を想起し、再び目を開けた。決然と――。
「過去を清算しよう。アルセリオン」
「ああ。そうだな。セリア」
龍帝の言葉に白龍が頷く。
するとその時、慟哭が止んだ。
「そうだ。オレは……。ああ。わかっている。オレから奪ったこの世界を、――滅ぼそう」
やがて顔を上げた黒龍。その虚な瞳には静かに炎が燃え盛っていた。その炎の名は憎悪。生きとし生ける者、全てを呪う業火。
黒白大戦が終結したあの日から連綿と続く、邪念。
「来るぞ!」
「龍新――」
「――っ! 撃たせるな!」
真龍種三体が同時に口を大きく開く。
――龍ノ息吹。
――龍ノ息吹。
――龍ノ息吹。
こうして最後の戦いが始まった――。
そしてGWに入ったので明日から完結まで、1日2話更新します!(最終話、最終日だけは1話です)
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