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第42話 答え

「……レン様。そこに……いますよね?」

「……ッ!」


 驚いて振り返る。

 そこには先ほどまで謁見の間にいたはずのルシアが立っていた。


 ……は? 隠蔽は……機能してる……よな?


 不安になり、確認したが、魔術はしっかりと機能している。セキュリティに引っ掛かっていないのがその証左。

 ルシアには僕の姿は一切見えていないはずだ。

 それは視覚的にも、魔力的にも。音や匂い、気配さえもないはず。なのにも関わらず、ルシアは曇りない瞳でしっかりと僕を見ていた。

 完全に気付いている。


 ……逃げ……いや。


 今も違和感がある。

 なぜ、僕はルシアの存在を忘れていたのか。

 会話すればその理由がわかるかもしれない。だから僕は光学迷彩を解除した。

 

「なんで……わかった? 隠蔽は完璧だったはずだけど……」

「私がレン様に気付かないはずがありません」


 ルシアはキッパリと言い切った。

 さも当然ですと言わんばかりに。

 

「無茶苦茶だね……」


 僕は苦笑を滲ませる。

 理由になっていない。だけどルシアならそういうこともあるのだろう。

 決して、嫌な気分ではなかった。


「ひさしぶり。ルシア」

「お久しぶりです。レン様。……えっと、その姿は?」

「ああ」


 僕の姿はかなり変化した。

 翼と尾は隠しているが、目はそのままだ。

 ルシアが疑問に思うのも無理はない。だけど同時に話す必要もない。

 

「僕のことはいいよ。ルシアは……四方神将になれたんだね」


 ジョシュアが呼んで、すぐに来た。

 ならばルシアが()()なのだろう。


 あの日の誓いをルシアは果たしたのだ。


 ……僕も嬉しい……んだけどな。

 

 だけど今はタイミングが悪い。


「……はい。南方神将です。十年も掛かってしまいました……」


 素直に喜べない。

 僕はゼスマティア神王国の人々を皆殺しに、滅ぼすと決めた。

 そしてルシアはゼスマティア神王国を守護する四方神将だ。

 もう、僕たちは相容れない。

 僕が復讐を決めた以上、ルシアは敵だ。


 ……。


 そう。敵だ。

 だけど僕は……。


 ……僕は、ルシアを殺したくない。


 たとえ相容れない存在になったとしても、ルシアが僕の親友であることは変わらない。

 ルシアは僕にとって紛れもなく大切な存在だ。

 

 それに、ヴェルナードに続いて、ルシアまでも……と考えると胸が痛い。しかしまた、復讐を諦めることもできない。

 相反する思い。だけどこれが僕の偽らざる本心だ。


 ……どうすれば……。


 きっと正解はない。だけど僕は選ばなくちゃいけない。

 

 するとルシアが続けて言葉を口にした。


「――ですが、誓いは半分しか叶えられませんでした」

「……うん。そうだね」


 ルシアの誓いは四方神将になり、自力で僕に会いに来ることだった。

 だけどルシアの言う通り、誓いは半分しか叶えられていない。それは僕がこの場に来てしまったから。


「覚えてくださっていたんですね」

「もちろん。忘れるはずがないよ」


 そうだ。忘れるはずがない。

 僕がルシアのことを忘れるなんてありえない。

 やはりおかしい。


「ですが、その原因は私たちゼスマティア神王国にあります」

「……え?」

「レン様がここにいるということは、復讐を選ばれたのですね」


 ルシアは悲しそうに呟いた。

 だけど僕はそれどころではない。


 ……なんで知っている?


 僕は出かけた言葉を呑み込んだ。

 頭が混乱する。だって、ルシアは知らないはずだ。

 僕がここに来た理由を。


「レン様。無理なお願いなのは承知しています。ですが、矛を納めては頂けませんか?」

「……ごめん。いくらルシアの頼みでもそれはできない。僕は……キミ以外のこの国を許すことができないんだ」

「……当然ですね。悪いのは私たちゼスマティア神王国です。ですが、それが()()()()()()()の頼みでも、ですか?」


 ……は?


 ルシアの口から信じられない言葉が飛び出した。

 僕の親友が黒龍だということをルシアは知らない。


 ルシアが知っているのは僕に友人がいるということ。そして友人はあの場にはいなかったということ。

 

 もしかしたらなにか勘付いていた可能性はある。しかし名前を知っているのはどう考えてもおかしい。

 ヴェルナードという名前は僕とヴェルナードしか知らないのだから。


「……魔術だったんでしょうね。ヴェルナード様が夢に出てきました」

「……なんて、言ってた?」


 僕は掠れた声をなんとか絞り出す。


「レン様を頼む――と」


 涙が溢れそうになる。


「全く。ヴェルナードはおせっかいだなぁ」

 

 ヴェルナードの名前を知っているということは、彼が自ら教えたということだ。

 ルシアの話には十分すぎるほどの信憑性がある。


「ヴェルナード様は、レン様の知識が人を殺すことに向けられた場合、悲劇が起こると仰っていました。ヴェルナード様もそれは望んでいないと」

「まあ……そうだろうね」


 僕が持つ現代知識には人を殺すことに特化した道具が山ほどある。この世界の住人からしたらオーバーテクノロジーだ。

 そして、それはすでに僕の武装に組み込まれている。だからヴェルナードの言葉は正しい。

 

「……ルシア」


 しかしそれは、決して許す理由にはならないのだ。


「僕はキミの敵だ」


 たとえヴェルナードが望んでいないとしても、僕がゼスマティア神王国を許すことはない。絶対に。


「……そう……ですか」


 ルシアは悲痛に目元を歪めた。

 それを見ていると心が痛む。だけどすでに決めたことだ。

 そうだ。僕はすでに選んでいる。

 だからこれでいい。


「三日だ。三日だけ待つ。だからルシア。大切な人だけでもこの王都から逃すといい」


 国は滅ぼす。だけどゼスマティア神王国に属する全ての都市を滅ぼすつもりはない。

 頭さえ潰せればそれでいい。


 ……だから逃げてくれ。


 そうすれば戦わなくて済む。

 

「……やはりレン様はお優しいですね。ですが――」

「――いい」


 僕はルシアの言葉を遮った。


「その先は聞かない。だからよく考えてくれ。……この別れが()()()()になることを祈っているよ」


 ここまでだ。

 僕が譲歩できるのはここまで。

 だから僕は踵を返す。もうルシアの顔を見ていたくなかった。

 僕の中にある芯がブレてしまいそうだから。

 そうして僕は、テラスから身を躍らせた。

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