第29話 気付き
ルシアと別れてから十年。
僕は相も変わらずスローライフを満喫していた。
ルシアと出会ったことにより、変わったこともある。今までは食の方面ばかりに興味が向きがちだったが、魔導具の開発に挑戦してみたりした。
どうやら僕はルシアが感心したり、喜んでくれたのが嬉しかったらしい。
あまり大声で言うのは恥ずかしいのだけれど。
ともあれそんな挑戦の過程で気付いたことが一つ。
多分、ここは僕が前に生きていた場所とは根本的に違う。
冷蔵庫や風呂を作ったときもブチ当たった壁だが、高度な物を作ろうとすると必ずエネルギーをどうするかで詰まる。大抵は魔力で代用するのだが、工夫が必要な物もしばしば。
だから多分、僕がいた場所には魔力とは違うエネルギーがあったはずなのだ。それが何かはいまだに分かっていないが。
「だからさ。もしかしたら僕が元々いたのは違う星なんじゃないかと思うんだ」
「……星?」
ある日のお昼時。
ヴェルナードが狩ってきた羊のような野生生物の肉を食べながら、僕は立てた仮説を話してみた。
しかしヴェルナードは首を傾げている。
「あれ? そこ?」
「ボクにはキミがなにを言いたいのかがわからないよ……」
「ん〜。じゃあ例えばだけど、この世界ってどうやって出来たと思う?」
「この世界は無色の龍が創造したものだよ」
てっきり考え込むと思っていたのだが、ヴェルナードは淀みなく答えた。完全に予想外だ。
「あれぇ? 無色の……龍?」
そしてスラっと知らない単語が出てきた。さも当然でしょ?なんて言いたげな顔をしている。
なんだろう。置いてけぼりを食らっているような気持ちだ。
「大地と空を創り、その狭間にボクたち真龍種を創造した存在だね。人類種や森霊種といった生命体が生まれたのはその余波だよ」
ヴェルナードはさも常識のように語ってくれた。
なにそれ。知らない。少なくとも僕の常識ではない。というか余波ってなに。人類種が生まれたのはついでなのか……。
しかし妙に納得している自分もいる。
科学で説明がつかないことは神話的な概念で語られることが多い。どこかの神話の世界を支える象のように。
つまりはそれと同じだ。
「ヴェルナードは無色の龍を見たことはあるの?」
「あるよ」
「……あれぇ?」
これまた予想外。まさかあるとは。
そういうのは神話的概念で実際にはいないオチではないのか。
わからない。この星わからない。
「ボクたち真龍種は不滅の存在って前に話したよね?」
「……不滅? ……話したっけ? 寿命がないとは聞いたけど」
「あれ? そうだっけ?」
二人して首を傾げる。
どちらも覚えていない。なにせそんな話をしたのは僕が目を覚ましたばかりの頃。もう20年も前だ。
……もう20年も経つんだなぁ。
なんてしみじみ思ったが、今は関係ない。話を進めよう。というか進めてほしい。
「じゃあ改めて説明するよ。真龍種に寿命の概念はない。だけど死にはするんだ。それで死んだ場合は守護地から新たな真龍種が生まれる」
「おっと? 知らない単語が出てきたぞぅ。守護地ってなに?」
「冷厳山嶺みたいに龍脈の起て……。まあ簡単にいうと魔力が豊富な土地だね」
「……詳しく話してもわからないと思ったでしょ?」
「わかるの?」
「わかりません」
つまりは冷厳山嶺のような地が他にもいくつかあって真龍種が死んだ場合、そこから新たな真龍種が生まれる、と。
「真龍種は龍脈の管理者みたいな役割があるからね。減るわけにはいかないんだよ。もし僕が死んだら新たに黒龍が補充されるってわけ。まあ真龍種を生み出すのは大変だから数百年はかかるんだけどね」
「……縁起でもないこと言わないでよ。でもなるほどね。死んでも新たに生まれる。だから不滅?」
「そういうこと」
「ちなみにその場合、記憶ってどうなるの? 引き継がれる?」
「いや、まっさらな状態になるよ。ボクみたいにね」
ボクみたい?と、一瞬首を傾げたが、前に説明されたことを思い出した。
「あぁ。先代黒龍って悪いことしたんだっけ?」
「まあ厄災なんて呼ばれるぐらいだからねぇ」
それはおっかない。
ともあれそんな厄災黒龍さんが死んでヴェルナードが生まれたわけだ。
「ん? ということは、まさかドラゴンスレイヤーがいるってこと?」
厄災なんて呼ばれているのだからきっと討伐されたのだろう。というか寿命がないなら殺すしかない。
となると殺した人間がいるということで……。
……いや、これ殺すってホントに人間!?
真龍種と人類種とでは文字通り格が違う。
生命体としての格が。
僕がヴェルナードに全力のパンチをしても何の痛痒も感じないだろう。
逆に僕の拳が砕ける。どう考えても勝てっこない。
「ドラ……? なんだって?」
「ドラゴンスレイヤー。龍殺しって意味」
「あぁ。いるよ。龍王国の龍帝セリア=ルクシア」
「ほえ〜」
どうやら本当にいるらしい。わけがわからない。この星の人類怖い。
「まあそれはひとまず置いておこう」
そんなおっかない人間に会いたくないしね。興味はあるけれど。
「それで? それが無色の龍と会ったことがあるって話とどう繋がるの?」
「さっき、ボクたち真龍種は守護地から生まれるって言っただろ? それは正確ではないんだよ」
「どういうこと?」
「守護地は龍脈という世界を巡る魔力の……道? で、無色の龍の領域、真核に繋がっているんだ。ボクたちは無色の龍から生み出され、龍脈を通って守護地へと来る」
「あーなるほど。生まれた時に会ってるってわけか」
「そういうこと」
「……ふ〜む」
おそらくその無色の龍とやらは星の中心、中心核にいるのだろう。
真龍種は中心核で生み出され、龍脈を伝い、守護地に来る、と。
……やっぱり僕が知ってる情報とは違うんだよなぁ。
そもそも真龍種、もといドラゴンなんて居なかったような気がする。なんなら魔力もないし、こちらで人間は人類種だし。
違うことだらけだ
……うーん。ということは星というよりも……。
僕は考えに考えてから結論を口にした。
「世界が違う……?」
口にしてからその言葉がストンと胸に落ちた。
「あぁあああ!!! これわかった! あれだ! 異世界転生ってヤツだぁあああああ!!!」
生まれて?から20年。僕はようやく気付いた。
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