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第2話 出会い



 ソレの誕生は微弱だった。

 魔物の血に染まり汚染された泥沼。

 そこから浮かぶ何か。

 最初は明確な形があるわけではなかった。

 ただ膨らんだ気泡のようだったナニかは、少しずつ大きさを変え、拳ほどの泥の塊となり、そこからさらに大きさを変え幼い子供ほどの何かとなった。


 何かおかしい。


 そう思った瞬間、その血汚れた泥沼の表面が誰かの姿を歪んで写し始めた。

 ただ大きさを増しているように見えた泥の塊が四つに分かれ、何かのかたちを作っていった。

 四つに分かれた先端が再び五つに分かれ、細長い胴体部分がひょうたんのような線を描き始めた。


 それからまた、分割、分割、分割。


 繊細に分かれた枝分れは、いつの間にか何かの形をとりつつあった。

 最後に泥が糸のように分かれて頭の先端を埋め尽くしたとき、その前に立っていた者は、目の前の泥が何の形を取ろうとしているのかようやく理解した。


 それは目の前にいる彼女の姿を真似している、と。


 誰が見ても悲鳴を上げて逃げ出す、自分が二人になっていくという背筋が凍る状況。

 しかしなぜか少女は泥の羽化をただ静かに見つめていた。

 やがて完璧な形を得た泥が金色に染まった瞳で自分を直視したとき、その前に跪いた少女は微笑みながら言った。


「初めまして、私はリリアナ。勇者一行の聖女よ。あなたは?」


 その問いに丸い目をそっと瞬かせた泥人形は、少女と瓜二つの微笑みを浮かべながら答えた。


「初めまして、私はリリアナ。私も勇者一行の聖女よ。不思議ね。あなたと私、同じ名前だわ。」


 それが聖女リリアナと彼女のドッペルゲンガーの初めての出会いだった。


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