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第四十三話 雑魚VS多眼族の聖人と聖女 3

 はっきり言えば、りりあは今回の作戦に反対だった。だが代案がないため遠矢に押し切られてしまった。


 何故反対なのか。それは単純にりりあが辛いから。その辛さは第二回戦のように箱に長時間隠れるような精神的なものだけではなく物理的にも辛い。

 痛いのは嫌だし怖いのも嫌だ。だから反対した。


 作戦では遠矢は隠れて相手を監視し、場合によっては誘導するだけ。対して自分は酷い目に合う。許容できるはずがない。

 だからりりあは小さな山の頂点に着いても、これからやることの覚悟も決心もなかった。心の中では逃げろと言う声もあった。

 だけれど、山を登る途中で見てしまった。


 遠矢がマダラとリアンに見つかり攻撃を受けている所を。必死に逃げるも失敗し、山岳の斜面を転がり乗り物に潰されるところを。

 あの時遠矢の足が見えた。おかしな方向に曲がっていた。そして遠矢はいつまでも消えなかった。


 死体はすぐに光の粒になって消える。それが輝天祭のルール。それなのに遠矢が消えないと言うことは遠矢がまだ生きている。

 まだ生きて苦しんでいる。


 気絶しているのであればそれで良い。ただもし、気絶も出来ず身動きも出来ず、ただ痛みに耐えている状況だったのなら。

 岩肌を転がり、足が折れ、非常に重い物が乗っかっている。りりあでは想像も出来ない三重苦。それを味わっているのであれば。


「ちくっしょー! トーヤ! 覚えとけよ!」


 初めて遠矢に出会った時はハズレだと思った。主の腕輪を取られた時はクズ野郎だと確信した。それからも異様にポイントを節約するセコイ奴だと考えていた。

 ただリザに挑発されてからやや印象が変わった。考える作戦は卑怯だし、勝ち方は姑息だし、人のことをこき使う。酷い奴ではあったが。

 だが遠矢は勝った。

 英雄の血筋を引く竜人に、獣人とエルフの強力なペアに、相手を騙して勝ち進んできた淫魔に。遠矢はほぼ無傷で勝ち続けた。


 カッコいいとは思わない。頼りになるとも思えない。信じることも、難しい。

 りりあに取っ組み合いで負けるような情けない遠矢だが、結局最後は何とかしてくれる。言葉では表せない妙な思いはあった。


 そんな遠矢が全てをりりあに託して重傷で放置されている。残念ながらりりあでは遠矢を救うことは出来ない。出来るのはいち早くゴールして第四回戦を終わらせることだけ。


「やってやろうじゃないか!」


 りりあは自分が運転してきた軽トラから攻城兵器を下ろして準備に取り掛かった。




 レースも終盤に差し掛かり、マダラたちはついにゴールとなる谷間を視界に捉えた。


「前方にゴールの谷間を発見。りりあの姿はない。……爺、こりゃ勝ちだな」


「こら。実に隠れていてこちらが来るの待ってゴールなどと意地の悪いことをしようとしておる可能性もある。速度を落とさず進むぞ。後ろに人影なし。しかしそうなるとりりあはどこへ消えたのじゃろうな」


 そりゃあねえよ、と口では強気なことを言いながらもリアンは気を引き締めて周囲を今まで以上に警戒する。

 何せ中盤まで後方から遠矢が監視していることに気付けなかったのだ。いつから、どうやって後ろに居たのかは分からないが、裏をかかれたのは事実。

 得意だった先に見つけて監視する、を先にやられたおかげで怒りに満ちていた頭が冷えて冷静な判断を下せるようになった。


 相手がどんな姿をしていようが絶対に油断しない。リアンは自分の目を信用しても頼り切らないことを学んだ。

 だから気付けた。空におかしな音が混じっていることに。悲鳴とも、風を切る音にも見えた。ただ何かは分からない。


「後ろ。上空だ!」


 ならば経験豊富なマダラに任せようとリアンは叫び目に魔力を溜める。

 任せられたマダラは上半身の目を全て開き、上空から迫る何かを必死に見極める。


「リアン、迎撃の準備だけはしておけ! あれは、何じゃ? 鳥か? 先ほどの空飛ぶ物か? 違う、悪魔か! りりあじゃ! 高速でりりあが飛んできておる!」


 ここでりりあが現れた。つまりここで現れても勝てると言うこと。

 落とさなければ負ける。


 勝負のかかった場面でリアンは一番の集中力を見せる。

 振り返るとともにりりあの姿を視認。速度、高さ、そして風の動きも見抜く。

 狙うは未来のりりあ。


 凝縮された魔力が一筋の光となってりりあに迫る。

 リアンの目にはりりあの眉間に風穴を開ける未来が見えたが、りりあは当たる直前に高度を落として避けた。

 悪魔の翼が動き、進路を変えたのだ。


「くそっ!」


 もう一度魔力を溜めて放とうとするもその時にはりりあはリアンたちの直上。溜め終えた時にはすでにりりあは通り過ぎていた。

 それでもまだ狙える。当てれば勝ちの目は残っている。


 極度の緊張の中でリアンは集中し恐怖した。

 自分に当てられるのかと。

 先ほどリアンは完璧に当てられると思って狙った。しかしりりあに避けられた。それはりりあが自分の意志で飛んでいる証明。人の意思が絡んでしまえばリアンが見る未来は簡単に覆される。

 りりあを後ろから狙うとはいえ本当に当てられるのか。自分に出来るだろうか。


 本当の未来が見えれば!


 その願いは叶った。

 精神が極限まで追い詰められたことで、リアンの神の瞳が僅か先であれば本当に未来が見えるようになった。


「これなら!」


 僅か先だろうが見えるのであれば確実に当てられる。そうしてリアンはりりあに絶対に当てられるコースに狙いを付けて……。

 諦めた。


「悪い、爺」


 飛び去るりりあをリアンは見送った。

 頭上を飛ばれた時点でリアンたちの負けは確定していた。


 リアンの目にはどこを狙おうと急所だけは絶対に守り、怪我を負ったままゴールするりりあが見えた。

 マダラもリアンも第四回戦に勝ちに来たのだ。負けが確定したのであればそれ以上相手を攻撃する必要もない。


 その後、すぐにりりあはゴールである谷間まで飛んでいき第四回戦は終了。

 マダラとリアンは自エリアに飛ばされた。


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