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第四十一話 雑魚VS多眼族の聖人と聖女

 第四回戦最終日。


 対戦が始まる正午まであと僅かとなり、マダラは心を落ち着かせるように深く呼吸する。

 しかし隣にはこの時を待っていたとばかりに興奮気味なやる気を見せるリアン。


「……ふぅ。リアン、分かっていると思うが開始直後は目を瞑り相手の道具を警戒すること。それと耳も塞ぐのじゃ。目と耳さえ塞げば相手の道具を無効化出来る。もしも相手が道具を使わず、自分の足や動物に騎乗して逃げるのであれば後ろから狙い撃つ。覚えておるな?」


「当たり前だ、爺。余裕で覚えているから安心しろ。あいつらが何をしようが対処できる。上手く対処出来ればあいつらをボコボコに出来る。恥をかかせてくれたんだ、絶対に後悔させてやる」


 これは何を言っても怒りが収まることはなさそうだ、とマダラは諦めた。

 視野の狭さがあるものの怒りの感情は悪いことではない。ここ最近のリアンは集中力が凄まじく、多眼族の奥義を完璧に使いこなしていた。輝天祭に参加してから最も調子が良いと言える。


 だからこそ、不安になる。ルール無用とばかりに様々な策を用いる遠矢とりりあにその視野の狭さは致命的な弱点となるのではないかと。

 しかし言って聞くほどリアンは素直ではない。むしろ怒りを指摘されて余計に怒る姿が容易に想像できた。


 マダラは不安を抱えたまま、正午を迎えた。




 第四回戦が始まった。

 それと同時にマダラとリアンは目を瞑り、耳を塞ぐ。

 五秒間だけ待ち、先にマダラが目を開け安全を確認する。安全を確認出来たらリアンが目を開ける手筈になっていたが……。


「何じゃこりゃあ!」


 目の前の光景に驚愕し、マダラは叫んでしまう。

 周囲一帯を覆い隠すかのように広がっている白煙。想定外のことにマダラは安全の確認もしないままリアンの肩を叩く。


「お、大丈……。何だ、ゴエッ! ペッペッ」


 リアンも安全と思い目を開けるも周りの状況に驚き、運悪く白煙が口の中に入ってしまう。


「ぬう。ふんっ!」


 その間に我に返ったマダラは上着を脱いで上半身にある目を全て開け、あえて魔力を凝縮せずに拡散するように飛ばす。

 そうして白煙を飛ばして視界を確保する。


「やられた、逃げおったか。……なるほど、これが白煙の正体じゃな。リアン、無事か?」


「何か白いのが口に入って。ペッ。ゴワゴワする」


 完全に手玉に取られた。周囲に遠矢とりりあはおらず、代わりにホースが付いている赤い容器がいくつも置かれていた。その容器には消火器の文字。


「遠矢たちの方が一枚上手じゃな。あの強烈な光と音を発する道具を他の者に使わせることでこちらを警戒させ、本命は別に隠し持っておった。目を瞑らせ、耳を塞がせることで白煙が広がる時間を稼いだか」


「爺! 感心している場合じゃねえだろ! つまりあいつらが先に進んだってことだろ! 急がねえと負けるぞ」


「慌てるでない。もう見つけておる」


 そう言ってマダラが空を指差せば、そこには飛行機がゴールに向かって一直線に飛んでいた。

 さすが爺、とリアンは感心するもおかしなことに気付いた。


「おう、爺。あれは小さくないか?」


「うむ。やはりか。儂もそう思っておった。囮なのか、それとも遠矢たちは自身が小さくなる術を持っておるのか。分からぬが、試しに落としてみるのも悪くはないじゃろう」


「……そうだな。落とすか。イライラも溜まってるし、憂さ晴らしに丁度良い!」


 針の穴くらいにまで凝縮したビームが飛行機を狙うが、当たる直前に飛行機が横にずれた。

そしてビームに驚いたかのように飛行機は右に左にとふらふらとした飛行に変わった。


「避けたのう」


「おう。完全にこっちを見て避けたな」


 リアンの単眼は見えないものを見ることが出来る神の瞳。

 風の動きを、音の流れを、光を揺らぎすら見えてしまう。見えてしまえば、それが次にどう動くかも分かる。

 リアンの単眼は僅か先の未来すら見える。ただ見えるのは人などの意思が絡まない時。人の気まぐれなどはリアンの単眼でも見抜けない。


 もしもあの飛行機が囮で、単調に前に向かって進むだけならリアンは絶対に外さない。しかしもし、そこに人の意思があるなら。ビームが来て避けようと行動したのなら避けられる。


 つまりあの飛行機には人の意思がある。


「幸いあの飛んどるのはそれほど早くないようじゃ。近づいて落とすぞ」


「おう。せめて爺の射程距離まで行かねえとな」


 多眼族の奥義は当然マダラも使えるが、魔力量や目の質はリアンの方が圧倒的に上。それは威力や射程距離に影響し、マダラでは今の距離は届かない。

 リアンがマダラに勝てる数少ない部分であり、ここぞとばかりにマダラを弄ろうとするも。


「そうじゃのう。ほれ急ぐぞ」


 その程度の挑発に乗せられるはずもなく、マダラはあっさりと認めて走り出した。

 チッ、とつまらなそうに舌打ちをしてリアンもその後に続くも。


「ま、待て爺。さっきのは悪かった。謝るから……」


「はて、何のことじゃろう?」


 いつもよりも早く走るマダラについて行けず、リアンが謝ることに。

 意外に怒りやすいマダラであった。


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