第三十七話 第四回戦の脅威
第四回戦はレース。場所は荒れた山岳から始まり、ゴールは山の通り道である谷間。
自分の足で走っても翼で飛んでも良いし、動物に騎乗しても良い。乗り物も当然許可されている。
これだけならば相手が多眼族の英雄であろうとも、勝てる要素はいくらでもあるかのように思える。
だが、最大の問題があった。
「やべえな」
現在遠矢はコロシアムに来て四回戦の様子を見ていた。そして対戦画面の大半は爆発を映している。
対戦環境は人それぞれであり、邪魔者の多い平原だったり真夜中の遺跡だったりと参考になりそうなものは少なかった。
ただ非常に重要なことも知れた。
「スタート位置は同じか」
第四回戦が始まると選手は同時に同じ場所に飛ばされていきなり始まる。
当然準備の時間もなければ、逃げる時間もない。
ならば結果は一つ。目と目があったと同時に戦闘開始。そこで決着が着く場合もある。
そして戦闘開始とは遠矢たちにとっての敗北と同じ。多眼族が種族的に弱ければ希望があったが、戦闘能力は決して低くなかった。
「負けは第一回戦の砦の攻防戦のみ。サバイバルは相手に見つかるより前に見つけて奇襲。決闘も戦って勝利か。目からビームは反則だろう」
マダラとリアンの戦いを確認した遠矢の印象としては見られたら負け、絶対に逃れらないと感じた。多眼の名は伊達ではなく、一度見られてしまうとその目からは逃れられず、隠れることは不可能。更にビームと格闘術など遠近両方に対応している戦闘をしている。
無難な強さと驚異的なまでの監視能力。遠矢たちの天敵であった。
最初をどうにかしないと勝つのは不可能。どうしたものかと遠矢は頭を悩ませるも答えは出ない。
ただ頭を悩ませているのは遠矢だけではなかった。
「遠矢さーん。どうしましょう」
ディックを先頭に反イケメン同盟のメンバーが泣きながらやってきた。
戦闘能力が必要ないレースだと喜んでいた矢先にまさかの結果。これでは勝てないと助けを求めてきたのだ。
しかし当然のことだが、反イケメン同盟を助ける策を授ければ自分の時にはその策は使えなくなる。確実にマダラとリアンが見ているから。
「……見ている? そうだよな、見ているはずだよな。……良し。特別にお前たちにだけ、開幕の遭遇戦をどうにか出来る可能性のある道具を良心的価格で売ってやる。まずは実物だが、他の奴らに見られないために俺たちの店で見せよう。大丈夫、扱いは簡単だ」
遠矢は困っている反イケメン同盟のメンバーを手招きして、店へと連れて行く。その姿はさながら童話に出てくる悪い老婆のようであった。
「今回のルールは今までと違って非戦闘型の英雄でも勝てる可能性がある。いや、どちらかと言えば非戦闘型の方が有利だよね~」
連日開かれている女子会の最中で、ドンパチが起こっている対戦画面を見ながらディックのペアである妖精のチャッピーがそう言った。
その言葉を疑うようにりりあは流れている対戦画面を見る。
どれもこれも相手を殺さんとばかりに戦っている様子ばかり。戦っていないのは半分にも満たない。
「あはは、今までと比べてって話。戦うのが苦手でも強化なり弱体化が得意なわけで。自分の足を速くして、相手の足を遅くしてそれで逃げればアラミタマみたいな単身戦闘特化にだって勝てるんだよ。このルールわね~」
「分かるぅ。戦闘が得意で強化も出来るって奴もいるけどぉ、強化の質が違うものねぇ。私は状態異常が得意だから今回は厳しいけどぉ。これからは強化や弱体化、状態異常が得意な方が有利なルールが出てくるのかもしれないわねぇ」
あははと天真爛漫に笑うチャッピーにうふふと妖艶に微笑むパラビア。両者の言葉を聞いてりりあは感心する。
遠矢の言っていたこととはこれなんだな、と。
決闘以上に質素なルールはない、これからは戦闘が重視されていた今までのルールより楽になる。戦闘能力以外の部分が重要になって来ると。
チャッピーとパラビアは対戦画面を見てその結論を出したが、遠矢は四回戦のルールが発表される前からおおよそ察していた様子。
これなら第四回戦の攻略は遠矢に任せて置いて大丈夫だな、とりりあは安堵して目の前の菓子に手を伸ばす。
ただ女子会を来る前にりりあは遠矢に言われた変なことを思い出す。
「りりあ、お前確か飛べるよな?」
あの言葉の意味は何なのか。悩もうとしたがめんどくさいと思考を放棄する。どうせ遠矢が考えてくれるのだ。……本当に大丈夫だろうか。
チャッピーが持ってきた蜜菓子に伸ばしていた手を止め、今までのことを考える。
第一回戦は遠矢が頑張って、第二回戦はりりあが頑張って、第三回戦は遠矢が頑張った。
では第四回戦は誰が頑張るのか。遠矢の言葉の意味は何なのか。
嫌なことになりそうだと気付いたりりあは、現実から逃げるように目の前の菓子をむさぼることにした。
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