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第三十四話 変わるようで何も変わらない

 第三回戦最終日、だった。

 全ての対戦が終わり、何と今まで一度も勝てていなかった反イケメン同盟のメンバーの何人かがついに初勝利を得た。遠矢の作戦のおかげで。


 そのため遠矢を除く勝利したメンバーの奢りで少しだけ豪華な夕食を取り、りりあは幸せなまま眠りについた。

 ただ食べ過ぎた所為か、深夜に目を覚ましてしまう。そのまま目を瞑ればまた眠れるのだが、りりあは遠矢が起きていることに気付く。


「……?」


 狭い地下住居だ。僅かな光でも目立ち、小さな声も響く。

 遠矢がこんな深夜に起きて何をしているのか、気になったりりあはベッドから這い出て気付かれぬように静かに遠矢に忍び寄る。


「……じゃ駄目だ。もっと……しないと。だがそのためには……」


 何かの計画を立てているのか、遠矢は椅子に座ってペンを持ちノートと向き合い更に腕輪の機能を使って何かを見ている。

 何をしているのか、りりあは気になり更に近づき遠矢の背後から盗み見る。


 ノートには何かの地図。腕輪の機能で見ていたのはりりあでは理解できない機械の類。遠矢が口にしていた言葉は結局聞き取れず、ほとんど分からないままで終わったとりりあが肩を落として戻ろうとしたときに。

 見てしまった。遠矢が持っているポイントを。


「一千万超え! トーヤ! いつの間にこんなに!」


「うわっ! 痛って! びっくりした! りりあ、いつの間にいたんだお前!」


 驚愕のポイントについりりあは叫び、遠矢は驚きの余り椅子から転げ落ちた。

 何せ遠矢が持っているポイントが一千万を超えていたのだ。最初に貰えたのだ十万ポイント。その後、三勝しているので三百万ポイント。一千万を超えるポイントを得ていないはず。それにりりあに三十万ポイントを小遣いとして渡してもいた。


「な、何でそんなに! あ、……駄目だよ、詐欺は」


「そんな馬鹿みたいなことをするか。反イケメン同盟で対戦情報の売買をしているだろうが。それの分や、闘技場の賭けで増やした分だ。お前もポイントが欲しいのなら商売をするなり何なりすれば良いだろう」


 遠矢に言われてりりあは思い出す。

 反イケメン同盟による対戦情報の売買。想像以上に盛況で、りりあも駆り出されたほど。その代わりにちゃんとポイントを貰った。

 盛況な理由は対戦情報の豊富さと正確さなども関係あるだろうが、最大の要因は転売対策が出来ていることだろう。

 元々は地底人の記憶を映像化する鉱石を使う予定だったのだが、反イケメン同盟の中に情報そのものを相手の記憶に叩きこむことが出来る者が見つかり、鉱石の映像をその場で直接購入者の頭に叩き込むことで情報転売を防ぐことに成功した。


 対戦情報の売買が始まってしばらくして似たようなことを始めようとした者たちもいたが、何人もの英雄が集まった組織の力に比べれば個人の力などあまりに小さく、質と量ともに劣化品と扱われてほとんど相手にされていない。


 しばらくは独占市場で売り上げが凄まじいことになると聞いていた。その結果が今遠矢とりりあの目の前にあった。


「なるほど。遠矢は優勝を目指すよりも大商人を目指した方が良いのでは? あ、お小遣いください」


「ふざけんな、馬鹿。自分で稼げ。そしてさっさと寝ろ。明日からは面倒が続くぞ」


「うげっ、聞きたくなかった。何故か聞いても?」


「この間の一件だ。神々相手に喧嘩を売ったからな。直接手を出さない形に持って行けたが、間接的には手を出してくる可能性は大いにある。救いなのはルールがこれまでに比べればマシになるくらいか」


 ノートを閉じ、腕輪の機能も閉じて遠矢も今から寝るとばかりに支度を始める。

 ただここで寝られては夢見が悪い、とりりあが更に尋ねた。


「間接的に手を出す可能性は分かるけど、ルールについては何で分かるの?」


「簡単な話だ。決闘以上に質素なルールがないと言うのもあるが、似たようなルールをやるようでは見世物としての意味がない。それに決闘以上に俺たちに不利なルールがあるなら、それをやってから手を出すはずだ。あれ以上に俺に不利なルールがないから直接動くしかなかったんだよ、あの炎の塊は」


「だから、喧嘩を売る相手を選べって言ったでしょ! 聞いているかもしれなんだし、止めてよ。……つまり、これからは少し楽になるってこと?」


「いや? ルールは楽になっても、対戦相手に俺たちが苦手な相手を選んでくると思う。それについてはまるで予想も出来ないが」


 聞かなきゃ良かった、とりりあは後悔するもすぐに考えを改めた。


 苦手な対戦相手とか。そもそも得意な対戦相手がいないじゃん。


 輝天祭の参加者はどれも強敵で、誰もが格上。全てが苦手な対戦相手と言っても過言ではない。

 つまり今までと大して変わりない。それに気づいたりりあは下がりつつあった機嫌を元に戻して気持ちよく眠りについた。


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