第三十二話 雑魚VS??? 2
「で、その俺のやり方に抗議、と言えば良いのか。その神々とやらはどこにいるんだ? というか俺をどうしたいんだ?」
世界の神々に睨まれている事態。打つ手はないとばかりに遠矢は開き直って地面に座る。
その見事な開き直りっぷりにりりあは唖然とし、猫はため息を吐いた。
「はあ。そう言うしかないのは理解できるがニャ。意見を聞きたいなら後ろにいるのに聞けばいいニャ」
後ろ? と言われて首を傾げながら遠矢とりりあが振り返ればそこには。
「不滅の炎海である。人の子よ、何故正々堂々と戦わぬ」
真っ赤に燃える人並みの大きな炎があった。手を伸ばせば届く距離なのにその炎は不思議と熱くなく、炎の中におぼろげながら何かがいるように見える。
何とも物騒な姿をした神様だ、と遠矢は顔をひきつらせたがすぐに皮肉な笑みを浮かべて余裕の態度を取った。
「正々堂々? それはあれか。自分よりも圧倒的に強い相手に真正面から挑んで玉砕しろと言っているのか? それは申し訳ない。俺の世界だとそれは馬鹿って言うんだ」
「言葉が過ぎるぞ! 人の子風情が!」
突然の熱波。そして炎の塊がまるで手を伸ばすかのように一部が遠矢へと伸びた。
直後に遠矢は悟る。このままでは殺されると。
逃げるべき、と考えても身体が恐怖で動かない。先程までの余裕な態度も、皮肉な笑みも全てハッタリ。本当は不滅の炎海を名乗る神が現れた時点で身体を丸くしてガタガタと震えていたかった。
ただジッと遠矢は接近する炎を眺めることしか出来ず、ついに炎が遠矢の額に触れそうになった瞬間。
「それは駄目だよね。不滅の炎海」
「無限の一団!」
遠矢と炎の間に光る何かが現れて炎の進行を阻んだ。
優しい光に遠矢は目を奪われ観察すれば、それは鳥や象、イルカなど様々な動物が手のひらサイズの光になっていた。
その光は遠矢を守るように不滅の炎海を遠くへと押し出していく。
「それを許すわけにはいかないな」
更に上から重く響く声が聞こえ、遠矢が見上げればそこには。
「目!」
「……違うな。大きすぎるんだ。大きすぎて目しか見えていないだけだ」
空が巨大な目になっていた。りりあは驚き腰を抜かして倒れてしまう。
炎の塊に、小さな動物の光、そして空を目に変えてしまうほど大きな存在。
これが輝天祭を開催している神々。そう認識したと同時に遠矢は自らの勝ち筋を見出した。
「大いなる創造者。貴方まで……」
「不滅の。個々がどのように戦おうとも自由。どのように勝とうが、どのように負けようがそれも自由。勝った方が正しく、負けた方が弱い。その結果を良しとせず、手を出すようなことをしてしまえば輝天祭の意味がなくなる。分かるな」
ゆったりと、それでいて相手に有無を言わせぬ力のある言葉に不滅の炎海は何も言い返せず、身体である炎を揺らして逃げるように後退する。
「ふふふ、人の子。天城遠矢だったか。彼が良い言葉を思い付いている。私も同意だ。私が代弁しようか。観客ならば観客らしく遠くから眺めていろ」
グッと不滅の炎海は何かに堪えるように身を硬くし、スーッと遠矢たちの自エリアから姿を消した。
これで一件落着、なわけがない。
危機を脱したこの状況で誰よりも遠矢が危機感を抱いていた。
「大いなる何とか。俺の頭を覗いたのか?」
遠矢の唯一の勝ち筋。それは不滅の炎海とは異なる神々の意見を貰うこと。そうすれば不滅の炎海も勝手に手を出しにくくなると考えた。
しかし結果はその更に上。神々の間にも階級があるのか、不滅の炎海も途中で現れた大いなる創造主には何も言わず言葉に従うように黙って消えていった。
結果として見れば最上級の結果。しかし遠矢はそれ以上の問題を見つけてしまった。
「ん? ああ、そうだ。頭を覗く、というより考えを読んだだけだが。君は魔力がないからそういう魔法の影響は受けないと考えていたのか? 第三回戦で『魅了』が効かなかったように」
第三回戦で遠矢はパラビアの魅了を受けたにも関わらず、その影響を一切受けなかった。その理由は単純に遠矢が魔力を持っていないため。魔力がなければ相手の魔力に干渉して効果を表す全て無意味と化す。
魔力を持たない。それは魔法が使えないだけではなく、魔法による状態異常などを無効化することが出来ると言うこと。ただそれだけではなく、強化や弱体化の魔法の影響も受けない身体となっていた。
「考えを、読む? 表面上の考えだけってことか」
「勿論君の考えを全て読もうと思えば出来る。ただそれは、非常につまらない。君が何を企み、考えているのか非常に気になっているし、楽しみにもしている。君の頭を覗き込んで調べるなんて無粋なことはしないし、させないから安心してほしい」
遠矢が恐れたのは自分の考えを、計画を知られてしまうこと。それを知られてしまえば今までの全てが無意味になってしまう。
それはしないし、させないと言質を取ったことで遠矢は安堵する。
「それでは天城遠矢。君のこれからを楽しみにしているよ」
そう言って大いなる創造主、目は消えて空が戻った。
気が付けば光る小さな動物の群れも、運営の猫を消えていた。
りりあ以外に誰もいない、それを確信すると遠矢は限界とばかりに地面に寝転がる。
第三回戦に続き、神々との一件。遠矢の精神は疲労して今すぐ休憩を欲していたが、それをりりあが許さない。
「ぐえっ!」
「トーヤ! 何で隠し事をするの! どれだけ怖かったか分かる!」
遠慮なしにりりあが遠矢の腹にのしかかり、疲労が限界を迎えていた遠矢の肉体まで限界を迎えさせる。
心身ともに疲れ果てた遠矢はその場をさっさと収めたいがために本音が出す。
「言わなかったか? 俺は勝ち組が嫌いだと」
「それは聞いた気がするけど、それは他の世界の英雄に対する……。まさか世界の神々も含めて!」
世界の英雄が勝ち組ならば、世界の神など超勝ち組。遠矢にとって最大の獲物と言える。標的にしていないはずがなかった。
「馬鹿、馬鹿! 相手は選びなさいよ! あーもう!」
そんなことを初めて聞かされたりりあは怒りのままに遠矢を殴って攻撃していた。
心身ともに限界ギリギリだった遠矢がりりあの拳を受けて耐えられるはずもなく、あっさりと意識を手放した。
よろしければ評価、感想などお願いいたします。




