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第三十一話 雑魚VS???

 決闘場に勝ち戻った遠矢たちを最初に迎えてくれたのは、手を組んだディックだった。

 というか遠矢たちの目の前にディックがいた。


「おお! びっくりした。こちらに来たと言うことは遠矢さん勝ったんですね。おめでとうございます!」


「びっくりしたのはこっちだ。戻って最初に見たのが髑髏顔だぞ。それにディックは俺の対戦を見ていたんじゃないのか?」


「いや、ずっとは見ていられませんよ。ここは対戦映像が流れている真下ですよ? 途中までは見ていましたけど、最後の方はここからじゃ見えませんよ」


 遠矢が上を見ればそこにはいくつもの対戦映像があるが、そこからでは映像がほとんど見えない。映画のスクリーンを至近距離で見ているようなもの。

 これでは確かに仕方がないと遠矢は納得し、ディックと共にステージから降りる。


 反イケメン同盟の面々や女子会の参加者など遠矢とりりあの知り合いは勝利を祝って歓声を上げてくれるが、他の者たちは恐ろしいものを見たかのような視線を向ける。

 その程度の視線を遠矢が気にするわけもなく、りりあは若干気にしながら疲れを理由に早々にコロシアムを出て自エリアに戻る。


 自エリアに戻ればそこには誰かがいるはずもなく、存分に休める、はずだった。


「おミャ、やり過ぎだニャ」


 自エリアに何故か運営の猫がいた。


 やり過ぎ、その言葉に残念ながら遠矢は覚えがあった。

 第一回戦は攻城戦と防衛戦を目的としていたのだろうが、遠矢だけは罠と籠城戦で引き籠っているだけの内容だった。

第二回戦は相手を探しつつ見つからないようにするサバイバルだったが、遠矢たちの所為で荷物の有無が重要視され、サバイバルよりも食料が尽きるまでかくれんぼをする者が出てくるなど主旨が変わってしまった。


 そして第三回戦。一対一の決闘。それを遠矢は動物を召喚して多対一の状況にした。

 動物の召喚は第二回戦の相手グルガとラフラースが第一回戦で狼を率いて戦い、りりあは悪魔猫を購入しているなど決して禁じられてはいない。

 やり過ぎた点があるとすれば外部協力者、ディックの助力を得て動物を補充したことだろう。

 第三回戦の道具の持ち込みは第二回戦同様にステージに荷物を置き、そこから自由に取り出せる方法。当然取り出せば荷物はなくなり空間が空く。遠矢それを利用して事前にディックに猛獣を置いておくように頼んでいた。


 今まではルールの穴を突いたやり方だったが、今回ばかりは影響が大きい。何故ならこれから遠矢と同じように外部の協力を得る者が増える。


 反イケメン同盟のメンバーや、りりあを応援していた女子会の参加者たちは対戦が終わっていなければ確実に真似をする。手を組める相手が近くにいるのだから。

 偶然遠矢の対戦を見ていた者たちも真似をするだろうが、手を組める物を見つけられるかどうかは怪しい。同盟のように最初から手を組んでいない限り敵同士。相手を助けても自分を助けてくれない可能性は大いにある。


 そうなると遠矢の対戦前と対戦後で環境が大きく異なる。外部協力者を見つけた方が圧倒的有利となる。

 それでは一対一の決闘ではなくなってしまう。第三回戦の意味が途中で大きく変わってしまう。

 とはいえ、ルールを途中で変えることなど出来るはずもない。誰かが行ったことを禁止するわけにもいかない。


 遠矢は取り返しのつかないことをやったのだ。

 ただ運営がいずれ動くと考えていた遠矢はちゃんと言い訳を用意していた。


「やり過ぎた、と言われても。猫よ、俺は定められたルールの中で勝利条件を満たしただけだ。違法な行為は一切していないはずだが? 穴があったとすればそちらの不手際だと考える」


「何とでも言えばいいニャ。お前だって分かっているはずニャ。この輝天祭は誰に向けて開催されているのか。言い訳が通じる相手ではないことは分かっているはずニャ」


「え、え? ちょっと待って。確かに遠矢が考える作戦はどれもルールの穴を突く卑怯な奴だよ? でも今絶対にそれとは関係のない話をしたよね!」


「……ニャんと。遠矢、お前ペアにも話していないのニャ」


 遠矢と運営の猫の会話の中に不穏なものを感じたりりあが口を挟めば、猫はその反応に驚き遠矢はそっとりりあから視線を外す。

 確実に何かがある、りりあはそう確信して遠矢の胸倉を掴む。


「何隠してんの? 運営の猫と話す機会なんて……一回戦が始まる前? その時に何かを聞きに行ったよね! 何を聞いたの」


「大したことじゃない。この輝天祭に観客はいるのかと聞いただけだ」


「観客? そんなのコロシアムに」


「悪魔の娘、騙されるニャ。そいつの言う観客は輝天祭参加者以外を指しているのニャ」


「参加者以外? そんなの運営しかいないと思うんだけど。……でも観客と言うのはおかしいし、他にそれっぽいのは」


 遠矢と出会う時まで記憶を遡るも遠矢と猫の言う観客に心当たりはなかった。ただ、遠矢と出会う前まで思い出せば血の気が引いた。

 遠矢と出会う前に、りりあは悪魔が崇拝する邪神の像と話をしている。りりあはあれを邪神だと考えた。

 そして輝天祭の優勝賞品。どんな願いでも叶える力。そんな力を持っているのは……。


「……各世界の神?」


「神、管理者。その辺りの名称は自由ニャ。輝天祭とは各世界の英雄を集い競わせて最強を決める祭りニャが、その実態は神々への見世物ニャ。表向きの理由は一応あるのニャが」


 輝天祭の主催者であり、観客でもある各世界の神々。

 遠矢の行いはその神々に喧嘩を売る行いだった。


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